2024年より対中輸出ができなくなる露光システム「TWINSCAN NXT:2000i」(ASMLのウェブサイトより)

オランダの先端半導体製造装置の対中輸出規制が始動した。同国政府の新規制が9月1日(現地時間)に発効したのを受け、オランダに本社を置く世界有数の半導体製造装置メーカー、ASMLは、2024年以降、DUV(深紫外線)を使った先端的な一部露光システムの対中輸出ができなくなるとの見通しを明らかにした。

半導体露光装置に使う光源は波長の長いものから順にUV(紫外線)、DUV、EUV(極端紫外線)に分けられ、波長が短いほど解像度が高く線幅の狭い半導体回路を焼き付けられる。回路線幅7nm(ナノメートル)以下の高微細度半導体の量産プロセスはEUVでしか実現できない。今回、ASMLはDUVを使った露光システムに関しても、同社製の「TWINSCAN NXT:2000i」とその後継基幹システムの中国への輸出許可を2024年以降は原則取得できなくなると発表した。

ASML、業績への影響否定

新規制の下でも、2023年末までに限ればASMLは、顧客と契約済みの上記露光システムの出荷が可能だ。顧客側も2024年1月1日以降、同社が、これら設備の対中輸出許可を原則取得できなくなることを認識しているという。ASMLは今回の輸出規制が同社の2023年の業績予想及び長期見通しに及ぼす影響は実質的にないとかねて表明してきた。

6月30日、オランダ政府は先端半導体製造装置に対する追加の輸出管理規制を定め、9月1日から施行すると発表した。これにより特定の半導体製造設備の輸出に際しては、同国の外国貿易・開発協力大臣の許可を取得した場合にのみ輸出できることになった。

オランダ政府は、先端的な半導体は特定の先進軍事技術において重要であり、製品や関連技術の輸出を無制限に行った場合、国家安全保障上のリスクをもたらす可能性があると指摘し、「オランダはこの分野で独自の先進的立場にあり特別な責任を負っている」と表明している。

14nm量産狙う中国勢に痛手


本記事は「財新」の提供記事です

ASMLにとって最先端のEUV露光システムの対中輸出は、以前よりワッセナー・アレンジメント(訳注:西側諸国を中心とする42カ国の通常兵器及び関連技術の輸出管理の申し合わせ)によって事実上不可能となっていた。

ただ、2018年頃は中国の半導体メーカーが回路線幅14nmの比較的高微細度の半導体量産プロセス確立を目指していた時期で、DUVを使った露光システムの一つ、液浸リソグラフィー装置に強い期待を寄せていた。


液浸リソグラフィー技術を紹介するASMLのウェブページ(ASMLのウェブサイトより)

ASMLはDUV製品で独占的な強みを発揮しており、2021年には液浸リソグラフィー装置を81台出荷。わずか3台(2021年3月期)にとどまった日本のニコンなどに大きな差をつけている。

(財新記者:杜知航)
※原文の配信は9月1日

(財新 Biz&Tech)