「ある瞬間」を見ると、その子の成績が伸びるか伸び悩むか、一瞬でわかるといいます(画像:mits / PIXTA)

覚えられない、続けられない、頑張ってもなぜか成績が上がらない――勉強が苦手で、「自分は頭が悪い」と思い込んでいる人も、実は「勉強以前の一手間」を知らないだけかもしれない。

そう話すのは、中高生に勉強法の指導をしている「チームドラゴン桜」代表の西岡壱誠さんです。

「僕も昔はこれらの工夫を知らなくて、いくら勉強しても成績が上がらない『勉強オンチ』でした。でも、『勉強以前』にある工夫をすることで、『自分に合った努力のしかた』を見つけられて、勉強が楽しくなったんです。効果は絶大で、偏差値35だった僕が東大模試で全国4位になり、東大に逆転合格できました」

西岡さんをはじめとする「逆転合格した東大生」たちがやっていた「勉強以前の一工夫」をまとめた書籍『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売すぐに3万部を突破するなど、いま話題になっています。ここでは、東大生が「勉強以前」に見抜く、「伸びる子」「伸びない子」の特徴を解説します。

「伸びる子」「伸びない子」を分けるポイント

僕は毎年、何百人もの中高生に勉強法を教えています。


その中には、今はまだまったく勉強していなくて、成績が悪い子もいます。本格的に勉強する以前の生徒たちに、勉強を教えているわけです。

でも、そんな生徒たちの中でも、「いまからでも、東大に合格できるくらい伸びる生徒」というのは、簡単に見分けることができます。生徒たちの「ある瞬間」を観察していると「あ、この生徒はきっと、これから成績が伸びるだろうな」と見分けがつくのです。

逆に、「この子は伸び悩むだろうな」という生徒も、簡単に見分けがつくのです。

それはどんなときだと思いますか?

答えは、問題を解いている瞬間です。それも、難しい問題を解いているときの反応を見ていると、その生徒がこれから成績が上がるタイプか、それともどんなに勉強しても伸び悩むタイプかがわかるのです。

もちろん、「その問題を解けているのかどうか」を確認しているわけではありません。別にたった1問の問題が解けたのかどうかで、成績が伸びるかどうかがわかるわけはありません。でも、問題を解くときに「あること」をしている人は、成績が上がりやすいのです。

それは、「手を動かすこと」です。

どんなに考えてもわからない問題を見たときでも、難しくて解けそうにない問題に出会ったときでも、成績が伸びるタイプや頭が良くなるタイプは、何かを書いている場合が多いのです。

解けない問題を前に、何をやるか

たとえば数学の問題を解いてもらうとしましょう。

「この問題、難しいけど、とりあえず2分間考えてみよう!」と言って時間を測った場合の反応は、生徒によって大きく異なります。

数学の成績が良いタイプや、これから伸びていく生徒は、必ず手を動かします。文章に線を引いたり、実際に数を当てはめてみたり、情報を整理したり、計算を始めてみたりして、何か文字を書いている場合が多いです。今は数学の成績が悪くても、わずかな知識の中でも何か懸命に文字を書いている生徒というのは、これから成績が伸びやすいのです。

それに対して、数学が苦手なタイプや、これから先伸び悩んでしまう生徒は、頭の中で考えようとします。手を動かさず、とにかく頭の中だけで組み立てて、「うーん」と考え込んでしまう場合が非常に多いのです。今の成績が良い生徒であっても、ただ頭の中だけで考える生徒は、その先で伸び悩んでしまうことが多いです。

もちろん、2分間では答えまで辿り着くことはできない問題がほとんどです。また、難しい問題であれば考え込んでしまうのもわかります。

でも、やっぱり東大に合格できる人は、どんなに難しい問題が出されても、頭の中だけで考えるということをしないんですよね。メモ用紙にちょっとしたことを書いてみたり、線を引いたり計算したりしている場合がほとんどなのです。

たとえば、「x+y+z^2=8をみたす0以上の整数x, y, zの組は全部で何通りあるか」という問題があったとして、ただ問題を眺めていても解けることはないでしょう。

でも、「じゃあ、xにとりあえず1を入れるとどうなるだろう?」「zにはどんな数が入るんだろう? 0は入るかな?」と、いろいろな数字を使って、与えられた情報をいじっているうちに、答えが出るという問題なのです。

そうやって計算していくと、いろんな気づきがあります。「zは二乗なので、zが3のときは9になるから、答えにはならないだろうな」「ってことは、zには3以上の数は入らないな」とか、そういうことがわかっていくのです。

そうすると、「じゃあzは0か1か2以外ないわけだから、順番にz=0、z=1、z=2、と場合分けしていくほうがいいな」とわかります。実際に場合分けすると、z=0のときは9通り、z=1のときは8通り、z=2のときは5通りです。これらを足すと、「22通り」が答えになります。

この問題は、最初から「zには3種類の数しか入らないな」ということがわかるわけではありません。でも、手を動かしている中で、「この解き方も使えるんじゃないか」ということが見えるようになるわけです。

逆にこれらの問題で、まったく手を動かさずにただ「どうやって解くのかな」と考えていても、うまくはいきません。どんな答えが出るのか、解き方はどうなのかなどがわからない状態でも、とりあえず数字を入れたり書いてみたりすることで、問題が解けるわけです。

どんなに勉強しても成績が上がりにくい生徒は、「わからない問題を見たときに硬直してしまう生徒」です。わからなくても、「わかる範囲」のことを懸命に書いている生徒は、その時の成績が悪かったとしても、そのあとで必ず成績が上がっていきます。

「手を動かす」はあらゆる科目に共通するコツ

今は数学の問題で説明をしましたが、それ以外の勉強全般に言えることだと思います。手を動かすことは、この数学の問題以外でも大きく活用できるものです。

文章を読んでいるときでも、人の話を聞いてちょっと整理したいときでも、メモを取って何かを書きながら聞いているのとそうでないのとでは、頭への入り方が全然違うのです。

ただ、「どういうことだろう?」と考え込んでしまうと、頭がごちゃごちゃしたり、身体的に動きがなくて身体全体が強張ってしまい、頭の中が凝り固まってしまうことがあります。

逆に手を動かすと、自分がそれまで何を考えていたのかという思考過程を視覚的に見ることができるようになって、「あれ? 何を考えていたんだっけ?」とならず、思考が整理されるようになります。また「手を動かす」という身体的な行為をすることで、身体の強張りを解きほぐすことができるようになります。

だからこそ東大生はみんな、何かを考えるときは手を動かします。人の話を聞くときにメモを取り、授業中にも自分の思考を整理するためにノートを取り、問題を解くときにもただ考えるのではなく手を動かすのです。

手を動かすことで身に付く「粘り強さ」

それに、「わからなくてもとにかく手を動かす」ということを続けていれば、粘り強く物事を考える習慣が身に付きます。

たとえば、東大の入試問題ってやはり、とても難しいです。問題文を理解するのも、情報を整理するのも、非常に高度に「頭を動かす」ことが求められます。ですから、99%以上の東大生が、問題をパッと見て、解答や解法が思い浮かばないのです。

しかしそれでも懸命に、「わからない問題の中の、わかる部分」を、手を動かして思考を整理しつつ、実験していくことで、新しいことが見えてくるように作られているのです。

逆に、「難しいから」と言って、簡単に諦めて「自分はこの問題、解けないだろうな」と考えてしまう人には解けないように作られているんです。諦めるのが早い人は東大に向いていません。とにかく粘り強く物事を考えられる人でないと、東大に合格できないのです。

「わからないからといって、諦めないこと」

勉強するうえで、この精神を持っているかどうかは、そのあとの勉強を左右します。逆に、「わからなかったらすぐ諦めてしまう人」というのは、どんなに勉強しても成績が上がりにくく、頭が良くなりにくいと思います。

みなさんもぜひ、わからないことがあったときには、「手を動かす」ということをやってみてください。

「何を書けばいいのかわからない」という人もいるでしょうが、正直なんでもいいです。文章を読んでいて「わからないな」と思ったら、わかった部分とわからない部分を箇条書きにしてもいいですし、重要だと思ったところに線を引いてもいいと思います。英語であればわかる英単語を日本語に直してもいいでしょう。

それ以外で、本当にわからない問題を見つけたときは、問題文を言い換えてみたり、問題文と同じ言葉を自分で書いてもいいです。とにかく「手を動かす」ことを意識していれば、頭は良くなりやすいです。ぜひ皆さん、実践してみてください!

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)