「全米最高峰のインフルエンサー」ティム・フェリスが、肝心な場面で「ノー」と言えるようになるために使っている3つの質問とは?(写真:bino/PIXTA)

誰しも、人生で「このままこれを続けていいのか」という問いに向き合ったことがあるだろう。やめどきの判断は本当に難しい。「全米最高峰のインフルエンサー」ティム・フェリスは、儲かる投資家をやめるという重要判断を、どのように下したのか。

『「週4時間」だけ働く。』の著者として知られるティム・フェリスが、現代のパイオニア106人に成功の秘密を聞きまくってまとめた本『巨神のツール 俺の生存戦略』の『富編』の中から、紹介しよう。

決断のために自分に問いかける質問

ここでは、いちばん大事なときに「ノー」と言える方法を教えたいと思う。


僕がとりわけ難しい決定を下したときのこと―つまり、スタートアップへの投資に「ノー」を言うと決めたときのことについて、掘り下げていきたい。

皆さんは僕のことを「投資家」だとは思っていないかもしれないが、僕がノーと言えるようになったプロセスを知ることは、きっとお役に立つと思う。

スタートアップへの投資は、僕にとって、それまでの人生で、簡単かつ、もっとも利益を生んだ活動だった。

次に紹介する質問は、僕が投資に対してノーという大胆な決断にたどり着くために、自分に問いかけたものだ。

君がしていることは、君にしかできないことだろうか?
これをするために生まれてきたんだと思えることか?
誰かに取って代わられることはないだろうか?

よくこの質問に立ち返っているし、たいてい、毎月問いかけるようにもしている。君の人生から、雑音と内なる葛藤を取り除く助けになればと願っている。

カマル・ラヴィカント(ナヴァル・ラヴィカントの兄)と朝食をとったときのことを覚えている。

友人の家のキッチンに立って、卵をひっくり返しながら、鮭の切り身とコーヒーの朝食を用意して、2人で夢や恐れ、義務や人生について、じっくり話し合った。

このとき、投資はすっかり僕の収入の大部分を占めていて、アイデンティティと言ってもいいくらいだった。

次の大きな動きに備えて選択肢をリストアップしながら、僕は彼にこんなことを聞いてみた。

カマルからのアドバイス

資本金を増やして、フルタイムのVC(ベンチャーキャピタリスト)になるべきだろうか、と。

すでに仕事はしていて、他に抱えている5〜10件のプロジェクトとのバランスを取ろうとしていたところだった。

彼は僕の不安を感じ取ってくれた。今ならはっきりと言える。VCは僕の本当の夢ではなかった。

単に、鉄を熱いうちに打たない(絶好のチャンスを見逃す)なんてバカだ、と感じているだけだったんだ。

彼は黙って、ものすごく真剣に考えた後で、こう切り出した。

「君が紹介したダイエットで、45kg以上もの減量に成功した人たちが、感動のあまり泣きながら君のところにやってくるのを、イベントのときに見ていたよ。

君がVCになったところで、誰かにそこまでの影響を与えることはないだろうね。君がやめても、すぐに他のVCを見つければいいんだから。

あの世界では、君は簡単に他の人に取って代わられる存在でしかないんだ」

彼は、ここでひと呼吸おいて、こんな言葉で締めくくってくれた。

「頼むから、書くことをやめないでほしい」

それ以来、毎日、そのときのことを思い出す。

まるで神の思し召しであるかのように、VCの世界に足を踏み入れる人たちがいる。

そう、彼らは、バスケット界のマイケル・ジョーダンのように、その世界でMVPを取れる人たちだ。彼らはその才能を存分に発揮するべきだと思う。

だけど、僕が投資をやめたところでそれを惜しむ人はいないだろう。

2015年、それはさらに明確になった。

スタートアップ企業への投資家は、かつてないほど膨れ上がり―それと同時に、創業者の「評価」は高止まりとなるなど、前代未聞の事態が起こり始めた。

もちろん例外はあったけれど、どう見ても飽和状態に達していた。仮に僕が横手のドアからひょいと出ていったとしても、スタートアップ集団には、痛くもかゆくもなかっただろう。

取り替えのきくパーツでいることにはうんざりだ

もちろん今だって、僕は決して世界一の書き手じゃない。そんな幻想は間違っても抱いていない。


ジョン・マクフィー(ピューリッツァー賞受賞作家)や、マイケル・ルイス(ノンフィクション作家・金融ジャーナリスト)みたいな人たちの才能を目の当たりにすると、枕に顔をうずめて泣きたくなる。

だけど……もし書くことをやめてしまえば、もしかするとものすごいチャンスを無駄にしてしまうかもしれない。

大きな運を味方につけて、何かを生み出すというチャンスを。

多くの人に、永遠に続くインパクトを与えるというチャンスを。

この、いてもたってもいられない気持ちは、決定を下す2カ月前、何人かの近しい友人が事故で亡くなったとき、誰も会いに来てくれなかったことで、何百倍にも膨れ上がった。


人生は短い。

言い方を変えよう。長生きできる保証なんてどこにもない。ほぼすべての人が、心の準備をする前に亡くなっている。

取り替えのきくパーツでいることには、うんざりだった。たとえどんなにもうかるゲームに参戦してるとしても。

仮に、書くと決めた後で失敗に終わったとしても、やってみなければ、きっと自分をののしることになるだろう。

自分にしかない特別な才能を無駄遣いしていないだろうか?

そもそもそれを探すチャンスを見逃していないか?

(ティム・フェリス : 起業家、作家)