(写真:kai/PIXTA)

慢性的な人手不足の昨今、多種多様な採用方法が認められるようになり、たとえば新卒入社した会社を短期で退職しても早々に次が決まるといったことが起きています。この機会をとらえ、転職を成功させるにはどのように準備すればよいのでしょうか。『20代〜30代前半のための 転職「書類」受かる書き方』より一部抜粋・再構成のうえ、ノウハウをご紹介します。

「輝かしい実績」がなくても大丈夫!

たとえば「第2新卒」に毛が生えたような「新卒入社して4年目の人」。

「トップセールスを25カ月連続、現在も継続中」という売りでもあれば書くでしょうが、そんな売り、皆が持っているわけではありません。そのため、「テンプレート」を提供されても入力が進まない、というケースがよくあります。

書けたとしても「自分なんて、ただ会社に言われたことをやってるだけだから」と「謙虚」すぎて、うまくPRできていないケースも多いです。

しかし企業側は、先にも触れたように、ポテンシャルの期待度が高いこの年代に、輝かしい実績は求めていないことが多いのです。

したがって、虚偽を書くのは絶対にNGです。仮に「社長賞を受賞」と書いて、「では賞状とか証拠を見せてください」となったら秒殺です。平均以下の営業成績だったのに、上位をキープしていたかのように、証明しにくい「盛った」内容を書く人も一定数います。書類選考は通過するかもしれませんが、面接で海千山千の採用人事に詰問されたら、しどろもどろになり撃沈すること必至です。何度も繰り返しますが、絶対にやめておきましょう。

「会社の指示通りにやっていただけ」というのは、なんら恥ずかしいことでも、「ショボい」ことでも、問題があることでもありません。むしろこの先、後輩の面倒を見たり、管理職に就いていくうえで、必要不可欠なプロセスです。

今、あなたが「すごい」と感じている先輩や上司も、そうしたプロセスを経て今があるのです。「全然売りがない」、「書くことがない」と悲観したり、「謙虚すぎる」必要はありません。

「言われたことしかやっていない」とは、言いかえれば「会社から与えられた任務を着実に遂行できる」ということです。実はこれは若手にとっては大いなる売りで、その安定感、安心感は採用人事も大いに評価します。

数字で表現しよう。「未達」でも!

自分の職歴をできるだけ定量的、つまり数字を用いて表現してください。たとえば営業なら「1日100件の電話、30件の飛び込み訪問、見積書提案30件/月」といった感じです。同じように、実績も「2020年度:売上目標5000万円に対し4000万円(達成率80%)」と定量的に表します。

「未達なのにわざわざ書くの?」と、疑問を抱く人も多いでしょうが、同じ業界の会社でも営業方法や担当、テリトリー、裁量などがそれぞれ違うのは採用人事も理解しています。そもそも今の会社の目標数字の設定が厳しく、未達者がほとんどかもしれません。そうした要素があることはきちんとわかっていますから、事実をありのままに書いていきましょう。

繰り返しになりますが、ミドル世代と違って、若手にはポテンシャル重視で採用活動をする面があるので、誇るべき実績がなくてもそう問題にはなりません。もちろんあれば前面に出すべきです。しかしそんな輝かしい実績などない人が多数でしょう。虚偽や盛りは不要。ありのまま書くのが原則です。一つのテクニックとして、たとえば、

■主な実績

2017年下期:売上順位48位/約200名

と、キャリアハイの数字だけ切り取るのも「あり」です。

なお、応募先の会社が超エース級を求めているなら、実績のない人がありのままに書いても無理ですから、気持ちを切り替えて他を当たりましょう。

年齢のわりに昇進が遅い場合

30歳を過ぎていると、年相応の職位に就いていない点を厳しくチェックされる可能性は高いです。とはいえ、「前職では主任でしたが、実際には部長クラスの仕事をしていました」では、採用人事にとってはそれが事実なのか皆目わかりません。

ベンチャー企業なら昇進のスピードが速く20代でも役員級というのは珍しくないが、老舗企業ではそうはいかないという実情を、採用人事はちゃんと理解しています。

ということで、職歴の項目では、肩書があれば、

<配属>関東支社 第一営業部 浦和営業所 <職位>主任

というように書く。なければ、

<配属>本社 総務経理部 経理課 <職位>一般社員

と、隠さずポジションを明記しておくことをお勧めします。

つまり、ここでは「自分なりに頑張っていたつもりですが、前職では昇進のスピードは周りよりも遅かったです。ただ、貴社に転職が決まったら、前職の悔しい思いを糧に、より一層頑張るつもりです」といったフォローは不要ということです。面接で指摘を受けたら回答すればOKです。

夫(妻)の退職に伴い、転職したい人

たとえば「一旦、キャリアライフを離れて子育てに専念するつもりだったが、配偶者の不慮の事情等により家計を支える必要が生じた」といったケースが該当します。ポジティブな転職(再就職)理由ではないため、こういった件に触れておくかどうか、書くとしたらどう書くべきか、困惑する人が多いようです。

この辺りの事情は書かないとわからないので、フォローを入れておくと採用人事に対して親切で丁寧です。書く場所は、職務経歴に関する補足事項や備考欄、自由記入欄です。

ここも小細工は不要です。たとえば、

「先月、夫が疾病により退職となり、しばらく治療に専念することになりました。家計のために私も働くことを決めました」といった具合です。

もちろん、ここもこれだけで終わってはもったいない。たとえば、

「事情がどうあれ、働く以上、生半可な気持ちで仕事をするつもりはありません。私には家族の生活がかかっていますので、貴社で働くチャンスをいただけたら、全力で頑張ります」と必死さ、本気度をPRしておきましょう。

夫(妻)の転勤に合わせ転職したい人


コロナ禍でフルリモート勤務が認められるようになってから、こうした背景を持つ転職希望者も増えてきています。ただ、ポジティブな理由ではないこともあって、応募書類にどう表現すべきか頭を悩ます人も多いです。ここも前項と同じく、書いておかないと事情がわかりませんから、フォローを入れておきましょう。書くべき場所は前項と同じです。たとえば、

「妻がフルリモート勤務になったことがきっかけで、家族でよく話し合ってこの地での生活を選びました。せっかくだから私もこの地で働こうと思い転職先を探しています」と、背景や本音をそのまま伝えます。

高等テクニックとして、このままでは終わらず、この地域の中でなぜ、貴社を志望しているのかに話題を移しましょう。

家庭の事情によって住所も変わり新天地を探しているというプロセスをきちんと理解してもらったうえで、そうした中でも私は御社でぜひ働きたいんだ、という志望理由をアピールする絶好の機会だと捉えてください。

(中谷 充宏 : キャリアカウンセラー)