暑い日にジャケットを着る必要があるときはどうすればいいのか(写真:Ushico/ PIXTA)

残暑の厳しい日が続いていますが、営業や会議など場面によっては、ジャケットを着る必要に迫られることがあります。

ですが気温30度を超える日のビジネススーツは、本人のみならず相手から見て重苦しいもの。そこで、綿・麻とは異なる涼しい着心地の「超極薄ジャケット」を着る人が増えています。

しかしカジュアルな型紙も混在しているため、着こなしで失敗される方も少なくありません。特にコロナ禍に人気が出た「アクティブスーツ」と生地感が変わらないため、「ドレス感あるサマージャケットがわからない」というお悩みも、よく耳にします。

そこで今回は「夏に着るジャケットの最適解」について、のべ5134人のビジネスマンの買い物に同行してきた服のコンサルタントがお伝えします。

見た目が変わってきた高機能生地

この5年くらいで定着してきた超極薄ジャケットは、百貨店・セレクトショップのみならず、紳士服量販店においても見かけます。ポリエステル素材のジャケットに、安っぽい印象を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、ここ数年で、その見た目も激変してきました。

東レの「エバレット」や小松マテーレの「クールドッツ」など、超極薄ジャケットに使用される高機能なポリエステル生地は、化学繊維特有の人工的風合いを解消するさまざまな工夫が施されているのです。


ウール生地が転写プリントされた超極薄ジャケット(写真:筆者撮影)

たとえば、ウール生地を転写でプリントして、化学繊維をウールライクな見た目に仕上げたものや、シアサッカー地に見立てたもの。凹凸感の風合いが、こなれた印象に仕上がっています。もちろんサマーウールのジャケットとは、明らかに別物ですが、超極薄の軽快な着心地は、年々暑さが増している昨今のビジネスシーンの選択肢に挙がるはず。

そんな超極薄ジャケットにおける失敗は、同じく定番化してきた伸縮性のあるアクティブスーツと混同してしまうときに起こります。どちらも高機能という意味では同じものですが、「型紙のちがい」によって、印象や合わせ方が変わるからです。

目的と用途が異なる「アクティブスーツ」

AOKIから発売された「アクティブワークスーツ」を皮切りに、コロナ禍に人気が出たアクティブスーツは、高機能スーツとして紳士服量販店各社で見かけるもの。いわばカジュアルなセットアップスーツという位置づけで、クルーネックTシャツや通勤用スニーカーなど、オフィスカジュアルによく合うジャケットスタイルです。


リラックス感ある型紙で、オフィスカジュアルに合わせやすいアクティブスーツ(写真:筆者撮影)

一方、超極薄ジャケットは、パリッとしたワイシャツやネクタイ合わせも可能な「ジャストシルエットの型紙のもの」と私は定義しています。

カジュアルアイテムと合わせやすいアクティブスーツは、天然繊維のスーツに比べて、「リラックス感ある型紙」を採用しているため、ワイシャツやネクタイでは、だらしなく見えがち。各社ともワイシャツやネクタイ合わせOKをアピールしていますが、「身体に合っていないフォルムのジャケットに、ワイシャツ」という組み合わせに違和感をもつ方も多いはず。

というのも微細なフォルムや生地感が伝わりづらいオンライン会議においては、ワイシャツやネクタイ合わせも成立していました。ところがリアルな場面におけるアクティブスーツは、ピシッとしたVゾーンにゆとりあるジャケット姿が悪目立ちしてしまいます。つまり同じような生地感であっても、ドレス感ある超極薄ジャケットとは別物なのです。

超極薄ジャケットは「身幅」と「肩幅」にこだわる


細めのアームホールによって、胴まわりに空間がある型紙の超極薄ジャケット(写真:筆者撮影)

ハンガーにかかった状態では、両者を判別することは困難です。そこで、必ず試着をおすすめしています。超極薄ジャケットは背抜きというより、表地と裏地が一体のものが多いため、見た目のデザインでドレス感の判断が難しいのです。試着の際は、「身幅」と「肩幅」を意識してみてください。

スーツ同様、ボタンをとめたとき、こぶし1つ程度のゆとりを確認しましょう。このとき袖の細さ、いわゆるアームホールもチェックポイントになります。生地がペラッとした超極薄ジャケットは、腕まわりが細いことで、胴まわりに空間が生まれやすいのです。この空間こそジャケット姿をエレガントに見せてくれるメリハリになります。

一方、肩幅については「普段のジャケットより、肩幅が狭いもの」を試してみてください。肩パットがない超極薄ジャケットは、肩のラインが目立ちやすく、なで肩の場合、その落ち感が悪目立ちしやすいものです。

超極薄ジャケットのみならず、すべてのジャケットに共通しますが、パットがないジャケットは、狭めの肩幅を選ぶことで、肩幅の距離が縮まります。そして、その分だけ、肩の下がりが気になりません。ちょっとした工夫ですが、ストレッチがきいている生地だからこその視点です。

合わせるアイテムは「質感」にこだわる

では超極薄ジャケットには、どのようなアイテムが合うのでしょうか。合わせるスラックスとネクタイの質感にこだわりましょう。

化学繊維特有の風合いを消す工夫が施されているとはいえ、天然繊維のサマーウールスラックスでは、ジャケット生地の違和感が生じるリスクがあるのです。そこでスラックスについては、ウォッシャブルで洗えるタイプを選びましょう。センタープレスが消えないようにコーティングされているものがおすすめ。

同様にネクタイを合わせるならば、質感に気をつけてください。エレガントなスーツによく合う滑らかな光沢のネクタイは、超極薄ジャケットには水と油のように合いません。たとえ色が合っていたとしても、質感がマッチしないからです。そこでツヤが消してあるザラっとした手触りのネクタイを合わせてみてください。まだ暑い日なので、いわゆるニットネクタイのようなカジュアルネクタイも超極薄ジャケットによく合うのです。

まだまだ猛暑日が続く残暑は、超極薄であっても、ジャストシルエットの型紙を選ぶことで、サマージャケットをエレガントに着こなしましょう。ほぼ同一生地のアクティブスーツとの差は、「型紙のちがい」で決まるのです。

(森井 良行 : ビジネスマンのためのスタイリスト)