中国自動車市場における新エネルギー車の存在感は高まる一方だ。写真はBYDが製造した500万台目の新エネルギー車のラインオフ式典(同社ウェブサイトより)

「中国の自動車市場では、2025年までに(新車販売台数に占める)新エネルギー車の比率が60%に達するだろう」

中国のEV(電気自動車)最大手、比亜迪(BYD)の創業トップの王伝福董事長(会長に相当)は8月9日、同社が製造した500万台目の新エネルギー車のラインオフ式典で、そんな予想を披露した。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

王氏はさらに、中国の新エネルギー車市場の主要プレーヤーが(外資系合弁メーカーではなく)中国メーカーであることから、中国の(エンジン車を含む)新車販売全体に占める中国メーカーの独自ブランド車の比率が70%に高まるとの見方も示した。

中国メーカーに大きな商機

業界団体の全国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)のデータによれば、2023年上半期(1〜6月)の新車販売台数に占める独自ブランド車の比率は約50%だった。中国自動車市場の規模を年間2000万台と仮定した場合、独自ブランド車の市場シェアが50%から70%に上がれば、年間400万台分の販売増のチャンスが生じる。

同じく乗聯会のデータによれば、上半期の新車販売台数に占める新エネルギー車の比率は32.4%。この数字は、通年では36%に高まる可能性があると、乗聯会は予想する。仮に(2025年の比率が60%に達するという)BYDの王氏の見方が正しければ、新エネルギー車の販売比率は、今後3年間にまだ24%前後の伸びしろがあることになる。

中国の新エネルギー車の市場規模拡大は確実な情勢だが、メーカー間の販売競争は今後ますます激しくなると見られている。

BYDの王氏は6月8日に開催された株主総会で、「(中国の)自動車業界はすでに(弱小メーカーの)淘汰の局面に入っており、生き残りを図るための時間的な猶予は3〜5年しか残されていない」と発言した。


BYD創業トップの王伝福氏は、新エネルギー車のキーパーツのほとんどを自社で内製できる体制を作り上げた(写真は同社ウェブサイトより)

同社は2年ほど前から、価格性能比で競合メーカーを圧倒する新エネルギー車を次々に投入し、販売台数を急速に伸ばした。2021年は55万5000台、2022年にはその3.2倍の178万2000台の新エネルギー車を販売し、スケールメリットを発揮している。

キーパーツの大部分を内製

BYDはもともと電池メーカーとして創業し、2003年に自動車事業に参入。車載電池はもちろん、モーター、制御システム、パワー半導体、センサーなど、新エネルギー車の開発・生産に必要なキーパーツのほとんどを自社で内製できる体制を作り上げた。


本記事は「財新」の提供記事です

このような「垂直統合型」の事業戦略が、BYD車の高い価格性能比を可能にした。同社の廉価モデルの価格は、いまや同じ車格のエンジン車の同等以下であり、エンジン車の市場シェアを奪う格好で販売を急伸させている。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は8月11日

(財新 Biz&Tech)