脳をうまく使えない人の3大間違いと、「脳の性質」を利用する"超効率的"な学習法を紹介します(写真:yosan/PIXTA)

耳馴染みのない専門用語、難解な公式、膨大な英単語、数分間のスピーチ原稿やプレゼンの台本、複雑な歌詞やセリフ、何人もの顔と名前……。

大量に覚えなければいけない課題やテキストを前に圧倒され、絶望した経験が皆様にもあるかもしれません。そんな方にオススメしたいのが「A4・1枚記憶法」

A4・1枚の「魔法のシート」に書くだけで、覚えにくいものも大量に記憶できる画期的なメソッドです。

考案したのは、記憶力日本一を六度獲り、日本人初の「世界記憶力グランドマスター」の称号を得た池田義博氏。

池田氏は、40代半ば「ド素人」の状態からたった1年で記憶力日本一になりました。
その体験から生まれた「超効率的なシート学習法」をまとめたのが新刊『まるごと覚えて 頭も良くなる A4・1枚記憶法』で、同書は発売後たちまち重版がかかるなど、大きな話題を呼んでいます。

以下では、その池田氏が「脳をうまく使えない人の3大間違い」について解説します。

まじめな人ほど、つまずく脳の3大間違い

最近は、学び直しなどで、久々にテキストを開いた方々も多いのではないでしょうか。そんな方の多くが「なかなか勉強の成果が上がらない」「記憶力が衰えてしまって」などの悩みを抱えています。


そういう悩みを持たれている人に共通するのが「脳をうまく使えていない」ということです。

私は40代半ばまで学習塾を運営し、多くの生徒たちの勉強に伴走してきました。

また今も、入試や資格試験などに挑む人たちを対象に個別コンサルティングを行っています。

そんな経験から気づいた脳をうまく使えない人の3大間違いについて、お話しします。

脳をうまく使えない人に共通するのは、ご本人が「まじめで忍耐強い」という点です。

脳をうまく使えない人は、自分自身の欲求を抑え込んでしまうという傾向が見られるのです。

つまり「まじめなのに覚えられない」という事態になってしまうわけですから、なんとも皮肉な話です。

「まじめで忍耐強い人」を好意的に言い換えると「我慢できる能力が高い人」ということになるかもしれません。

しかし、記憶という分野で目覚ましい結果を出したい場合。

心身の欲求を優先的に満たし、自分自身を快の状態に導くことで、脳をフル回転させることが何より大事です。

「結果を出すためには、無意味な我慢はしないで」と声を大にしてお伝えしたいと思います。

ではどのような我慢が無意味なのか。3大間違いについて1つずつ説明していきましょう。

「姿勢を変えるだけ」でも脳に負荷がかかる

間違い➀「集中しにくい環境」に耐えながら、勉強をしている

ここで言う「集中しにくい環境」とは、まずテレビや動画などの音が流れているような状況を指します。

音楽を聴きながらの学習(作業)は、推奨できません。

歌詞のないメロディーのみの音楽も、集中力を削いでしまいます。

脳を学習だけに集中させることが大切です。

また当然の話ですが、よい姿勢を保てるデスク環境を整えることも必須です。

「椅子の高さが、テーブルに合っていない」と感じながら勉強を続けたり、「どうせ短時間だから」などとソファに寝転んで勉強に取り組み続けたりするのはおすすめできません。

なぜなら、脳はその間ずっと違和感や不快感を覚えることになるからです。

とくに横向きに寝転んで学習をする際は、「視覚を正常に補正する」というタスクが脳に加わるため、余計な負荷をかけることになります。

よく指摘される事実ですが、モチベーションやエネルギーなど、脳のリソースは有限です。

学習以外の負荷は、可能な限り取り除きましょう。わかりやすく言うと脳にマルチタスクをさせてはいけないのです。

それでは脳をうまく使えない人の2つ目の間違いはなんでしょうか。

最初の90分が睡眠の質を決める

間違い➁眠気に耐えながら、勉強をしている

また眠さを我慢しながらの学習も、結果につながりにくいものです。

もちろん「明日までに急に覚えなければならなくなった」など、よほどの事情がある場合は仕方がありません。

しかし多くの場合、試験やプレゼン、会議などの「アウトプットが試されるとき」は、かなり前からわかっているはず。

一夜漬けに頼らないで済むような長期の学習計画、もしくは突貫工事にならないような長期の準備計画を立てたいものです。

一方「睡眠時間も削って勉強したい」というまじめな方もいるかもしれません。

確かに昭和の昔は「四当五落」という言葉がまことしやかに囁かれていたこともありました。この言葉は「4時間睡眠で受験勉強する者は合格し、5時間睡眠すると落第する」という意味です。

もちろん、科学的な根拠は何もありません。

むしろ「睡眠が学習効果を高めてくれる」という事実をお伝えしておきましょう。

脳は、睡眠中に多くの修復作業や維持活動を行ってくれています。

たとえば新しい脳細胞を生み出したり、細胞構造をよい方向に変化させたり、成長ホルモンを分泌したり。

とくにノンレム睡眠中は脳内液体の循環スピードを数倍に高めることで、脳の廃棄物、なかでも「アミロイドβ」というアルツハイマー病の原因となるタンパク質を洗い流してくれています。

良質の睡眠をしっかりとることは記憶の定着につながるうえに、認知症まで遠ざけられるというわけです。

「眠さをこらえながらの学習なんてナンセンス」と見方を変えてください。

そして眠さを我慢する方向の努力を、睡眠の質を高める方向の努力に切り替えてみませんか。

睡眠時間の理想は6時間以上、それも最初の90分の質を上げることが大事というのが定説です。

そのため、眠る90分前に入浴し、体内部の「深部体温」を効率よく下げるのがよいといわれています。

また睡眠1時間前から、パソコンやスマートフォンの使用を控えられれば理想的です。電子機器の画面から発せられるブルーライトが、体内時計のリズムを乱し、入眠を妨げてしまうからです。

つまり「まぶたが落ちてこないよう頑張る」より、「睡眠前に緊急連絡が入らないよう頑張る」ことをおすすめします。

「勉強がつまらない」と思ったら注意

間違い➂退屈さに耐えながら、勉強をしている

脳をうまく使えない人の3大間違いのうち、最も厄介なのがこれでしょう。

「やらなければいけないから、作業している」「◎時間勉強すると決めたから、やっている」「面白くはないけれども、叱られたくないから作業に耐えている」、このような姿勢で座り続けている人は決して珍しくないはずです。

このような義務感で何かに取り組んでも、結果は出にくいもの。

なぜなら脳が行う仕事とは、感情が伴ったときに効率が上がりやすいものだからです。

たとえば記憶でいうと、脳は何らかの感情が発生したときに、「これは重要だ」と反応して記憶に残そうとします。

「面白い」「楽しい」「ワクワクする」、こんな感情を味方につければ、最短距離で覚えることができます。そのような心が躍動するような状態に自分自身を導いていきましょう。

たとえば面白い語呂合わせを取り入れて覚え方を工夫したり、文字をイラスト化してみたり、表を作ってみたりなどです。

「面白くないけれども、気合いで何度も繰り返し暗唱して覚える」というような修行のような勉強の仕方は、非効率です。またあなた自身のメンタルをむしばみ、勉強嫌いにしてしまうリスクすらあります。

つまり「退屈だ」と感じた時点で勉強方法を変えるなり、休憩を挟むなり、まったく違う作業に取り組むなり、退屈さから逃げましょう

脳は飽きると途端に集中力を欠いてしまいます。

平たく言うと、飽きっぽい脳の機嫌をとりながら、勉強や作業を進めること。退屈さに耐え続けようとするのは本人がしんどいうえ、やがては思考停止につながりかねません。

このように、一般的に美徳とされるまじめさや忍耐強さは、脳を働かせようとする際に大敵となることもあります。

勉強、仕事、あらゆる作業、その他創作活動まで。

脳を頼りに「アウトプットの質」を追求している方は、「退屈」を感じたら、ちょっと立ち止まってみるのもいいかもしれません。

(池田 義博 : 記憶力日本選手権大会最多優勝者、世界記憶力グランドマスター)