国民民主党の代表選は玉木雄一郎代表(左)と前原誠司代表代行(右)による一騎打ちだ

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国民民主党の代表選が2023年8月21日に告示され、玉木雄一郎代表と前原誠司代表代行による選挙戦がスタートした。

争点のひとつが、政権交代や野党連携への考え方だ。両者はそれぞれ「対決より解決」「非自民・非共産による野党結集」が持論だが、「それはむなしく響くだけ」「後ろ向きでネガティブなメッセージ」などとお互いに対する痛烈な批判も飛び出した。

安易な「大きな塊」論が「特に野党に対する政治不信を招いてきた」

記者会見で配布された両者のビラに掲げられた見出しは

「停滞する日本を動かすために。対決より解決」(玉木氏)
「日本の『大転換』のために、政策本位で野党結集を進め、政権交代への道筋を作ります」(前原氏)

というもので、これまでの両氏の持論を反映した。記者会見は、玉木氏→前原氏の順に政策を説明した。

玉木氏は

「過去を振り返ると、選挙のたびに政策や理念を脇において、いわゆる安易な『大きな塊』論に走って、そのことが、特に野党に対する政治不信を招いてきた」

と主張。二大政党制による政権交代は現実的ではないとして、「穏健な多党制による政権交代を目指すことが現実的」とも説明。「2025年の参議院選挙までには、大型選挙ごとに2割ずつ、党勢拡大」を掲げて、「新しい連立政権の一角を占めることができる」状況を目指す。

前原氏の持論には次のように批判した。

「長く永田町で言われてきた『反自民・非共産』、この言葉こそ、中身の見えない政治的キャッチコピーではないだろうか。『反何々』とか『非何々』とか、後ろ向きでネガティブなメッセージで、国民の心を動かすことはできない」

政策面では「再度、政府与党に対して協議を申し入れ、ガソリン値下げを実現させたい」。政府与党にすり寄ったり、野党分断に手を貸したりしているという批判は「心外」で、「我々は自民党に擦り寄っているのではなく、国民に、国民生活に寄り添っているだけだ」などと反論した。

「『国民民主党が実現した』と言っても、それはむなしく響くだけではないか」

一方の前原氏は「国民民主党のビジネスモデルを変えたい」。与党との政策協議は

「野党の国民民主党の申し入れに応じたように見せかけて、最終的には野党分断を図っているというのが私の認識」

だとみている。最終的に政策を実現するのは多数を握っている与党であって、

「『国民民主党が実現した』と言っても、それはむなしく響くだけではないか」

などと批判した。

次期衆院選への影響にも言及し、現状のビジネスモデルでは「我々衆議院議員は次の選挙を戦えるだろうか」とも。小選挙区では与党に軍配が上がるとして「私が有権者なら自民党に入れる」とも話した。

日本の競争力が落ちたのは自民党を中心とする政治が元凶だったとして、他の野党と組んだ上での政権交代を訴えた。

「そこに政策の一部で協力したって、日本の根本の問題は何も変わらない。変わるのは政権交代だ。思い切った政権交代を野党で協力をすることによって本当に日本は変わる。それをやるのが野党の使命であり、また、今、日本維新の会や立憲さんがいがみあっているのであれば、その橋渡し役となり、『政策本位で自民党を追い詰めようじゃないか』と言って呼びかけるのが、我々国民民主党だと私は考えている」

代表選後は「ノーサイドです」と口そろえる

野党結集をめぐる議論で記憶に新しいのが17年の「希望の党」騒動だ。前原氏が代表を務めていた民進党が、小池百合子氏率いる希望の党に合流を決めたものの、小池氏が民進の一部を「排除」すると発言したことに反発した枝野幸男氏らが立憲民主党を結党。その結果、17年の衆院選で希望の党が失速した騒動だ。

当時の経緯を念頭に、記者からは

「非自民・非共産による『大きな塊』を実現した場合は、リベラル系の立憲の一部は切り捨てないといけない。また『排除の理論』をやるのかどうかは分からないが、『夢をもう一度』と、私にはそういう風にしか見えない」

という指摘も出た。

玉木氏は、国民民主が立憲の一部と合流するとなると、一部は合流せずに「新生立憲民主党」「純粋立憲民主党」のような勢力が発生すると指摘。さらに、「反自民」と「反共産」の間には「半共産」のような勢力が残るとして、

「いつまでたっても野党の結集ができなくなる。だから、一つの党にまとめようとする努力は、どこかで必ず破綻してしまう。それであれば、やはりある程度考えの似通ったところで連立政権を目指した方が、党を一つにするよりは現実的ではないか」

などと、改めて「大きな塊」に否定的な見解を述べた。

対する前原氏は、

「同じことをしたいと思っている。野党をまとめたいと思っている。同じことをやり続けたいと思っている。あの失敗をしないために、もう一度、野党が固まるような取り組みをしたい。だから代表選に出ている」

と話した。

小政党で苛烈な選挙戦を展開した場合、選挙後に禍根が残り、片方が離党するなどして党が割れる可能性も指摘される。代表選後の対応について問われると、両者は「ノーサイドです」とのみ答えた。

代表選は「党員・サポーター」「地方自治体議員」「公認候補予定者」「国会議員」の4区分で計111ポイントを争う仕組みで、9月2日の臨時党大会で開票される。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)