連覇がかかるジャックドール(撮影:高橋正和)

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 21年の日本ダービー馬シャフリヤール、今年の大阪杯優勝馬で昨年覇者のジャックドール、昨年の香港ヴァーズ覇者ウインマリリンをはじめ、海外G1で2着のプログノーシス・ダノンベルーガなど豪華メンバーとなった今年の札幌記念(3歳上・GII・札幌芝2000m)。

 ここでは競馬書籍界のレジェンド文士・本島修司氏による、この一戦の有力馬診断をお届けする。

◆シャフリヤールはここが分岐点に

 例年、GIと見間違うほどの好メンバーが揃う札幌記念。今年は特に、このレース自体がGIでないことが不思議なほどの、秋にGI戦線を賑わす馬たちが揃った。

 有力各馬に、ひと言ずつ見解を付けていこう。

■イズジョーノキセキ
 爆発力を秘めており、格上相手でも常に一発を秘める牝馬。さすがにここは相手が強いかもしれないが、鞍上・岩田康誠の立ち回り方次第では十分に恐さがある。

■ウインマイティー
 ゴールドシップ産駒で、毎年マーメイドSの時期あたりから調子を上げてくるタイプ。血統面からも洋芝適性はあるはず。相手は強いが、好調さを生かしてどこまで食い下がれるか。

■ウインマリリン
 昨年の当レース3着馬。洋芝とも上手くフィットしそうだ。牡馬の強豪が相手になること、そして6歳シーズンに入る牝馬で、衰えとの戦いになること。このあたりがポイントになりそう。ただ、高齢になってもしぶとく走る馬も多い「グラスワンダー系」。今回も侮れない。

■ジャックドール
 強い、昨年の覇者。今年も当然有力な1頭になる。マイルもこなせるモーリス産駒の中距離馬で、切れ味より、やはり逃げ~前々での競馬が合うだろう。単騎逃げの形がベストも、昨年のように2~3番手から早めに先頭へ並びかけるような競馬のスタイルもこのレースに合いそうだ。

■シャフリヤール
 競走馬の型としては『王道型』(3歳春にGIを勝ち負けしてピークに入る)に属するタイプ。数を使っていないので、大きな衰えはなさそうだが、5歳の秋くらいには緩やかにアスリートとして晩年の時節に入っていく。その点が「秋GI」になるとどのように成績に出てくるか。今回はGIIクラスのレースなので、本来なら圧倒できる格上の存在。ここが、競走生活の分岐点となりそうだ。

■ソーヴァリアント
 秘める素質が噛み合うレースと、そうではないレースの差が激しい1頭。爆発力を出せれば、当然、GIIあたりなら上位に進出してくる。このレースに限らず、気性的にスムーズに運べるかどうかがカギになるタイプ。

■ダノンベルーガ
 国内GIでは苦戦した3歳シーズン。しかし、4歳初戦のドバイターフでの競馬を見る限り、切れ味に磨きがかかってきた。久しぶりにモレイラが札幌に降臨する。騎乗を含めて期待が高まる1戦。

■トップナイフ
 デクラレーションオブウォー産駒で、持続するスピードが持ち味。2歳時から2000mのレースを連続して使われ、好走を繰り返してきた。札幌のコース実績もある。3歳馬の伏兵だがレースが上手な馬。上位進出もありそう。

■ヒシイグアス
 中山記念勝ちの実力馬。7歳になるが『晩成型』で大きな衰えはなさそう。平坦コースも問題なく、GIIなら当然主役級だ。脚質的に後方から競馬をすることもあるが、そこを「どう乗るか」がポイントになる。レースでの立ち回りにも注目したい。

■プログノーシス
 有力な1頭になる。素質の高い馬が、この1年でさらに力を付けた印象。小回りの札幌コースで、脚質的な取りこぼしの可能性はあるが、極端な追い込みになったのは金鯱賞あたりだけ。あくまで差し馬ではあるが、追い込み一辺倒ではなく、本質的にはある程度なら乗り方に融通は効くタイプ。秋の大きな飛躍に向けて期待が膨らむレース。

■マテンロウレオ
 ハーツクライ産駒らしい一瞬の決め手がある馬。この春はしっかりと軌道に乗ってきた印象。GI戦線に再び参戦して、強豪が集まる天皇賞(春)でも5着に健闘。中距離のGIIに戻れば十分に戦える存在だろう。

■ラーグルフ
 年明けのは中山金杯勝ちで浮上。勢いがついたシーズンで、大阪杯で再びGIへ参戦できた。強くなっている4歳馬。GIIなら勝負になりそうな気配。粘り強いモーリス産駒という点も、洋芝適性を感じさせる1頭。

(文=本島修司)