モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。8月2日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「Twitter(ツイッター) を『X(エックス)』に変更 イーロン・マスクの狙いは?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



アメリカのソーシャルメディア大手・Twitterは7月24日、ブランド名を「X」に変更しました。Twitterを買収したイーロン・マスク氏は、投稿を表す「ツイート」という言葉も変更すると発表しています。

◆「X」に変更した理由は?

吉田:塚越さん、このタイミングでTwitterを「X」に変更した理由は何なのでしょうか?

塚越:イーロン・マスクは、書き込み(メッセージ)を投稿することを意味する「ツイート」の名称を「x's(エクスズ)」にすると発表していましたが、現時点では(8月2日)は「ポスト・リポスト」と名前を変更しているため、今後も変更があるかもしれません。ブランド名は「X」になりましたが、今回は、まだ多くの人にとってなじみのある「Twitter」の名前で説明します。

Twitterから「X」に名称変更した理由はいくつかあります。まずイーロン・マスクが去年10月にTwitterを440億ドル(約6兆4,000億円)で買収した後、Twitterは業績が悪化しています。買収前より評判も悪くなり、広告収入も落ちています。

次にMeta(旧Facebook)がTwitterと競合するSNS「Threads(スレッズ)」を発表しました。Threadsはリリース後、すぐに1億ユーザーを突破したこともあり、ブランドの刷新で対抗したいという狙いがあるという分析もあります。

ちなみに日本はアメリカに次いでユーザー数が多いほど、Twitterは大人気ですが、世界的に見るとユーザー数は3億3,000万くらいから、多くても5億程度です(※データの取り方によって異なります)。

Facebookは30億くらいもあって、TikTokは2021年の段階で10億を超えており、アメリカと日本を除くと、Twitterはそこまで大きなSNSではありません。いずれにせよ、Twitterのイメージも買収以前より悪くなったので、「心機一転でブランド刷新」という意味もあるのですが、これによって少しずつTwitterのロゴマーク“青い鳥”がネットから消えつつあり、こうした変更をユーザーの多くは望んでいません。

◆名称「X」への執着

吉田:「X」という名前にも、こだわりがあるようですね?

塚越:ユーザーからは人気のない「X」という名前ですが、これはイーロン・マスクがこだわりを持ってつけています。1999年、イーロン・マスクは後に、オンライン決済代行サービス「PayPal(ペイパル)」と合併して富を築くことになるオンライン決済会社を設立しているのですが、その会社の名前が「X.com(エックスドットコム)」です。このときからすでに「X」に執着しているのですが、当時からすでに周りからの評判も良くありませんでした。

さらにイーロン・マスクが設立した衛星打ち上げ企業の名前も「SpaceX(スペースX)」です。この企業は民間人のみで初めての宇宙旅行をおこないました。また、イーロン・マスクは電気自動車の「Tesla(テスラ)」も設立していますが、車の名前は「Model X(モデルX)」です。他にも、子どもの名前や他のベンチャー企業にも「X」をつけることが多く、彼の好みが出ています。

◆イーロン・マスクが考える今後の展開は?

ユージ:Twitterを「X」に変更することによって、イーロン・マスク氏は、今後、どのような展開を考えているのでしょうか?

塚越:イーロン・マスクは以前から、「スーパーアプリを作りたい」と述べています。例えば、SNSだけでなく、音楽やビデオを楽しめたり、「○○ペイ」のような決済もできたりするアプリを作りたいと。

国内で普及しているアプリで言えばLINEに近く、中国で普及している「WeChat(ウィーチャット)」などがより近いです。「X」は最終的にはSNSだけでなく、YouTubeやPayPay、さらに銀行やAmazonのような通販機能も全て備わったアプリを目指しています。

ただでさえ業績は悪化して、お金がないと言われているなかで、そのようなことがどこまでできるかと問われれば、一般的には「無理」と言わざるを得ません。ネットでほとんどのことができる場所の名前を「X」にしたいとマスクは考えていますが、ブランドは名前から何から綿密に設計される必要があり、その面から見ても微妙かなと思います。

◆旧Twitter…今後の課題は?

ユージ:Twitterを「X」に変えたことについて、塚越さんはどのようにご覧になっていますか?

塚越:評判の悪い「X」とイーロン・マスクですが、イーロン・マスクは実際にテスラやスペースXで業界地図を書き換えて、世界に影響を及ぼしてきた経営者です。経営者としては本当にすごい人だということは忘れてはいけません。

スペースXは、それまで宇宙ロケットなど民間が入れなかった業界に参入しています。他にも電子決済のPayPalに関わったり、テスラなどの規制当局ともやりとりをしていたりするので、経験や実力もあるのは間違いないです。

とはいえ、SNSは消費者=ユーザーの気持ちがとても大切であり、ユーザーフレンドリーな設計にどこまで配慮できるかというと、難しい点があります。一般ユーザーをどこまで大事にするのか。電気自動車のテスラでも、交通事故などに対応するマスクの姿勢がこれまでも問題視されてきました。

そして、もっと大切なのは「データ保護」です。Facebookはこれまで散々、セキュリティや個人情報保護について規制当局から批判されてきました。Twitterもイーロン・マスクの買収後からヘイトスピーチの投稿が増えたと言われています。規制当局からすると非常に目をつけられるので、こういうところをどこまで変えていけるかがイーロン・マスクの課題でもあります。

ユージ:もともとあったもので、しかも支持されていたコンテンツを革新的な新しいものにしようとしているから、Twitterからの名称変更が受け入れられないアレルギーが(ユーザー側に)出ている可能性があります。イーロン・マスクが1から始めたプラットホームだったら、これを1つの違うものとして受け入れられたのかなとも思います。今後に注目です。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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8月2日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
https://www.tfm.co.jp/link.php?id=7713
聴取期限 2023年8月10日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/