5歳の主人公「みー」のふとした疑問をきっかけに、自分のからだとこころを知り、肯定する大切さを学ぶ、NHK Eテレの人気番組『アイラブみー』。

6月21日には、『アイラブみー』から生まれた絵本『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』(新潮社刊)が発売し、子どもと一緒に楽しみながら自分を知り、自己肯定感を育めると話題です。

子どもが性加害者・被害者にならないために親が教えるべきこと

家庭ではどう性教育すべき? 子どもが被害者や加害者になったら? 子どもをもつ保護者からのリアルな疑問や不安について、番組と本の監修者である北山ひと美先生に教えてもらいました。

●大切なのは、「境界線」「同意」「尊重」の3つ

──子ども同士での性被害もあると聞きます。自分の子どもが加害者にも被害者にもならないために、なにを教えればいいでしょうか?

北山ひと美先生(以下北山先生):私はよく『からだのきもち』(子どもの未来社刊)という書籍を使って授業をしています。私たちのからだは見えない境界線があって、その境界線は“だれと過ごしているのか”によって広くなったり狭まったりする。もしも自分の境界線が広くなっていても、相手の境界線が狭かったらむやみに入ってはいけない。そんなイメージを持とうと教えています。

一昔前は“遊び”と片づけられていたスカートめくりやかんちょうなども、まさしく相手のからだの権利を侵害する行為です。家庭でもぜひ
(1) からだには境界線があること
(2) 触れるときは同意を得ること
(3) 相手の気持ちを尊重すること
の3つを教えてあげてください。

──もし、自分の子どもがスカートめくりや他人のからだを触っているなど、加害者として連絡を受けた場合はどのように対応すべきでしょうか?

北山先生:第三者の話を聞いて即座に怒るのではなく、まずは認識や状況を本人から聞いて事実を確認するところからはじめましょう。先生の捉えている事実と本人の認識にズレがある可能性もありますから。そのうえで、なぜその行動をしてはいけなかったのかを一緒に考えましょう。

一方的に叱るのではなく、「プライベートパーツに触れてしまったよね」「相手は同意していなかったよね」など、子どもが理解できるように伝えることが大切です。

──つい感情的に叱ってしまいそうです…。

北山先生:大人と子どもには力関係があるので、大きな声で怒られるとその場では「悪かった。ごめんなさい」って言うんですよね。でもそれで本当に理解できているのでしょうか。子どもが心の底から納得できるか否かで、次からの行動も大きく変わってきます。

きちんと性教育を受けていない場合、「なんで急に? 知らないけど?」となるかもしれませんし、叱られてもピンとこないでしょう。だからこそ、小さな頃からの積み重ねが大切なんです。

こころもからだも達途中の子どもたちは、失敗や間違いを繰り返しながら成長しています。頭ごなしに叱るのではなく、「〇〇だからダメだよね」と納得できるように伝えてあげましょう。

●親以外の大人にも相談できる環境をつくる

──反対に、子どもが被害者になった場合はどのように対応すべきでしょう?

北山先生:被害を打ち明けてくれた場合は、なによりもまず信じてあげてください。悲しいことに家族や近い存在からの性被害って意外と多いんです…。相手(加害者)を信頼するあまり「そんなことあるはずない」と反応してしまうケースも見られますが、信じてもらえないと傷ついたこころとからだは一生救われません。まずは信じてあげる、そのうえで次の行動を一緒に考えてあげましょう。

本人が隠している場合は、事実を知る人に確認しながらこちらから問いかけるべきなのか、今は子どもの気持ちを尊重すべきなのかをケースバイケースで判断していきましょう。なにかあったときに大人に相談できる環境「安全ネットワーク」を整えることも大切です。

──安全ネットワークとは?

北山先生:自分のからだや思いを侵害されたときに相談できるネットワークのことで、親や親族、先生などの信頼できる大人3〜5名で構成されます。先ほどお話ししたとおり家族からの性被害も多いので、そのうちの1人は家族以外の人から選ぼうね、と子どもに呼びかけます。
性被害が起きたとき、当たり前ですが悪いのは“やった側”です。「悪いのは加害者で、あなたはまったく悪くないんだよ」と寄り添ってあげてくださいね。

●スマホ世代だからこそ、正しい性知識を教えていくことが大切

──インターネット上で性的な情報を気軽に得られるいま、どこまでを許し、どこから制限すべきでしょう?

北山先生:インターネット上には暴力的なコンテンツや刺激の強い表現も多いので、フィルター機能を使ってある程度制限する必要はありますね。とはいえ、性的コンテンツを絶対に目に触れないようにするのは不可能です。どんなに家庭で対策していても、興味を持って知りたいと思ったらいくらでも情報を得る方法はありますから。

だからこそ、正しい知識を小さいうちから教えてあげてください。二次性徴はどう起こり、男女のからだがどう変化し、自分はどのようにして生まれてきたのか。そんな正しい性知識を親子で一緒に学んでいくことが大切だと思います。

ときには、学校で性的な言葉を学んでくることもあるでしょう。頭ごなしに否定するのではなく、「どこで聞いたの?」と聞いたうえで、その性知識が誤ったものであれば大人としての意見をしっかり出していきましょう。

──パートナーが性教育に協力的ではない場合の対応は?

北山先生:現在の子育て世代の多くは、幼いころに性教育=隠すこととして教えられてきたはず。きっとカーテンを閉めて女子だけで月経について学ぶ、みたいな授業でしたよね。自分たちがきちんと習っていないからこそ、「性教育ってなにすればいいかわからない」「別にしなくてもいいでしょ」って思ってしまうんですよね。

そんな方にこそ絵本がおすすめです。監修をしている『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』は「なんでパンツをはいてるんだろう?」という疑問から、たのしいストーリーとかわいいイラストで「じぶんを大切にすること」について学んでいけます。ぜひ絵本をきっかけに、おうちでの性教育をはじめてみてくださいね。