文筆家の大平一枝さんが、グリーンフィンガーとの出会いを求めて、植物専門店「mokuhon」を訪ねました。場所はおしゃれな大人の街、東京都の銀座。ペントハウスつきの3階建ての店は、まるで小さな森のよう。心強い相談相手にもなってくれる、店主の大和田てるみさんが集めた、確かな植物が所狭しと並んでいました。

深呼吸をしたくなる、清々しい店内

銀座で14年、植物の店を営んでいる。

3階はギャラリースペースで、植物とともに器や洋服が並ぶ。どのフロアも、深呼吸をしたくなるような清々しさだ。

「銀座は遠いところからもお客さまがいらっしゃいます。小さなビルですが、外から見ても目が癒やされ、中に入ったら自然に包まれてほっと安らげるような空間にしたいなと思っています」

店主の大和田てるみさんは福島県出身。川や野山を駆け回って育った。それまでアパレルや空間デザインの仕事をしてきたが、どこかしっくりこない。30代で植物の生業に出合い、これだ! と思った。

「たとえば洋服は、そのときすすめなければならないものがどうしてもあります。植物は、嘘を言わなくていい。自分でいいと思ったものだけを置いていますので。それがうれしいです」

 

1階には、木のチップが敷き詰められている。「森の中にいるような雰囲気にしたくて」と大和田さん。店名は、木と本が好きなので、そのまま音読みに。

 

ペントハウスつきの3階建て。路面にある植物は庭木中心。店内には観葉植物、シダ、多肉、塊根、着生植物などが並ぶ幅の狭い階段も、植物のディスプレイが目に楽しい。

心強い相談相手がいる銀座の小さな森

全体に、商品の価格は安くはない。数年から十余年かけ産地で育てられたもの、樹形を整えられた植物をセレクトしているためだ。

銀座にはその価値がわかる個人客、店、レストランが多い。また、売って終わりではない。育て方、水やりなどについてのメールにも丁寧に対応する。この日も朝から「こんなに育ちました」という報告を含め約60件あったそう。毎日スタッフで手分けして回答している。

寝室に置くことを提案した客からはその後、「ほっと安らぐ。なくなったら暮らせません」と言われた。家のどこに置くのが最適かも細かく助言する。心強い相談相手がいる銀座の小さな森に、ぜひ。

 

人気のコウモリラン。5年、10年かけて育った状態で仕入れるので、他店では見られないサイズと完成された樹形が多数。

 

海外でオーダーしたオリジナルの鉢。在庫はこれのみ。大和田さんが好きな昆虫がモチーフ。

 

溶岩にガジュマルを植えつけ育てている希少な生産者の作。

 

店主の大和田さんが好きな植物

オーストラリア原産の常緑低木、タマモクマオウ(玉木麻黄)。和名は、玉のように美しいという意から。「清々しいグリーンで、ふわっとやさしくて大好きなんです」。