「1階が飲食店・コンビニ」の賃貸物件、ゴキブリが多いのは本当? 不動産鑑定士に聞く
賃貸マンションや賃貸アパートの中には、1階に飲食店やコンビニエンスストアが出店しているケースがあります。こうしたタイプの物件は、「ゴキブリが多い」といわれていますが、本当なのでしょうか。もし住んだ場合、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の竹内英二さんに聞きました。
ネズミに注意
Q.そもそも、1階に飲食店やコンビニがある賃貸物件は、どのような場所に多いのでしょうか。幹線道路沿いに多いのでしょうか。
竹内さん「一般的に、立地が良い物件が多いです。基本的に、店舗は来店客が見込めるような場所でなければ出店されません。来店客が見込める場所は『人通りが多い』『駅に近い』などの条件が挙げられます。つまり、商売に適した場所は便利な場所が多いため、1階に店舗がある物件の中には、結果的に立地が良い物件も多いです。
また、必ずしも幹線道路沿いとは限らず、細い道沿いでも商売に適していれば1階に店舗がある物件は存在します」
Q.1階に飲食店やコンビニがある賃貸物件に住むメリット、デメリットについて、教えてください。一般的な住宅に比べて、家賃は安いのでしょうか。
竹内さん「飲食店とコンビニとでは、メリットとデメリットが若干異なると思います。飲食店の場合、好きな店が出店されていれば、気軽に食事が可能なのがメリットですが、店舗からにおいが上がってくる点がデメリットです。1階部分が飲食店だからといって、家賃が安くなるわけではありません。
コンビニの場合、1階に大きな冷蔵庫があるようなものなので便利ですが、夜間や早朝に客の来店で騒がしくなる点がデメリットです。1階部分にコンビニが出店している物件は、1階が付加価値となることから、家賃はむしろ一般的な賃貸住宅よりも高くなっているケースもあります」
Q.1階に飲食店やコンビニがある賃貸物件は、ゴキブリが多いといわれていますが、本当なのでしょうか。
竹内さん「一般的な物件よりもゴキブリが多いとは言い切れません。1階に飲食店やコンビニがない物件でも、ゴキブリが出てくることは珍しくないからです。
1階に飲食店やコンビニがある物件で気にしなければならないのは、ネズミです。なぜなら、残飯の周辺にネズミがうろつく可能性があるからです。物件の築年数が古く、併設の店舗の営業年数も長い場合、ネズミが出てくるかもしれません。
ネズミが室内に入るケースはそれほど多くありませんが、もし入ってきた場合、『食品を食べられる』『衣類や家具、電気コードなどをかじられる』といった被害を受ける可能性があります」
Q.ところで、アパートやマンションといった集合住宅に飲食店やコンビニを出店するのは、法律上問題ないのでしょうか。
竹内さん「用途地域や条令などの規制の中で出店可能なエリアであれば、集合住宅に飲食店やコンビニを出店させるのは、法律上問題ありません。用途地域とは、一定のエリアごとに建築可能な用途を定めた土地利用の規制のことです。
ただし、合法的に店舗を建てようとしても、店舗側の出店ニーズがないと1階にテナント(賃借人)を誘致することはできないといえます。出店の条件としては、店舗が建築可能であることと、出店ニーズがあることの2つが合致する必要があります。
1階に店舗がある物件は、必ずしも広い集合住宅とは限りませんが、来客用の駐車場のニーズなどもあるので、敷地にゆとりがある大きな物件が多い傾向にあります」
Q.アパートやマンションといった集合住宅に飲食店やコンビニを出店させることで、建物の持ち主側には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
竹内さん「一般的に、1階の店舗部分は、住宅部分よりも賃料単価が高いです。1階に店舗が誘致できる物件であれば、1階を店舗にした方が所有者側の収益性が上がります。1階部分が住宅の場合、店舗よりもセキュリティーが劣り入居者が決めにくいことから、1階に店舗が誘致できるようであれば、住宅ではなく店舗を選択する建物所有者は多いです」