公立高校入試の新制度 「自己表現」の課題とは 広島
今年の公立高校入試には自分をアピールをする「自己表現」という試験科目が増えました。初めての入試制度の課題について指導現場の声をききました。
先週、公立高校の合格発表で約1万4100人に春が訪れました。今年の受験生は「自己表現」の導入で新しい入試制度でのチャレンジでした。
受験した生徒「勉強ばっかりではないという面ではいいと思います」「3年間頑張ってきたけど(自己表現が)数分で決まってしまうことが切ない」
今年から新しく入試科目になった「自己表現」とは5分間の自己アピールです。将来の夢や好きなアイドルについてなど内容は自由で、タブレットや写真の持ち込みもOKです。
評価は「自己を認識する力」「自分の人生を選択する力」「表現する力」を基準にしていて、検査官一人につき3点から5点で採点されます。
中広中学校 新川 恵美校長「入試制度が変わるのはそれだけ学校には影響が大きいと思います」
急な新制度への変更をうけ去年、中広中学校は子どもたちの進路をかなえるための決断に踏み切ります。
中広中学校 新川 恵美校長「1科目増える。でも5教科の力はこれまで通りつけなくてはいけない。まずは学校の体制を変えるということで、3年生だけの取り組みではなくて学校全体をあげてということにしました」
中広中学校ではまず総合的な学習の時間を入試対策にあてました。教職員はみんな検査官となり、入試と同じシチュエーションで自己表現の試験を実施したということです。
ところがすぐに大きな指導の壁にぶつかりました。採点基準がどうしても主観的になってしまうのです。
中広中学校 重 秀雄研究主任「(同じ内容でも)3点を出す先生もいれば、同じ面接で5点を出す人もいるので。研修したんですけど全員バラバラになりました」
4点と5点の差はどこにあるのか?基準が分からないままでしたが、中学校では指導の方向性は見えてきたといいます。
新川 恵美校長「自己表現が総合的な学習のひとつのキャリア教育につながっていくということが教職員がみんなつかんだんですね。それを変えていって作った仕組みができ上がったのが10月、11月だったんですけど」
自分の良さを将来につなげられるような内容にしたり、面接マナーを崩さないようにといったことにポイントを置く「中広スタンダード」です。
入試の採点基準はわからないままですが、教員同士の目線合わせができたことで学校としての蓄積も大きくなっているようです。
重 秀雄研究主任「ぜひ後輩にも伝えてほしいと思うけど、結論をはじめに出して、エピソードを話していって結論で終わる。結論、エピソード、結論、っていうのは中広中学校に残していきたいと思います」
中広中学校では、3年生に1~2年生の前でも発表させるなどしてこの1年学校の体制やカリキュラム変えながら「自己表現」の指導を行いました。
受験した生徒「自己表現の練習が終わった後でも話すことがあったりとか、実際にそういうところで人間関係を築くという面でも自分の中でいい経験になりました」「後輩からも『先輩の自己表現よかったです』とか『大会で結果が残せなかった時はどうしていましたか』など積極的に質問してくれて、後輩との関わりの幅も広がったなと思っています」
とはいえ、試験です。入試会場では何が起きていたのか、中広中学校では全受験生に細かくアンケートをとりました。会場にタイマーはあるのか、雰囲気はどうだったのか、会場の設営や試験の進め方に差はないのか、学校によって特性はあるのか。これから検証することにしています。
中広中学校 新川 恵美校長「まだ正解がなくて、この子たちはどういう風に評価されたんだろうというのは本当に気になるところです」
記者「わかるすべはあるんですか?」
「開示請求しか。でもそれは保護者の方しかできないので」
初めての「自己表現」入試。県教育委員会は、採点基準や平均点などの公表は今のところ予定していません。