移籍状況で見るJ1上位進出期待クラブ

後編「戦力ダウン必至クラブ」>>

Jリーグは2月中旬の開幕に向けて、各チーム始動しているが、気になるのは移籍状況による今年の戦力だろう。ここでは3人の識者に、移籍状況から今季の上位進出が期待できるクラブを挙げてもらった。(※移籍情報は1月20日時点)


鈴木優磨ら現有戦力に補強組が加わると、かなり強力な鹿島アントラーズ

【C大阪は外国人助っ人コンビ補強で得点力アップ】

上位進出期待のクラブ/セレッソ大阪、鹿島アントラーズ、名古屋グランパス

中山 淳(サッカージャーナリスト)

 昨季も上位争いに食い込んでいたという意味では「進出」ではないが、新戦力補強によって、現有戦力にプラスアルファが見込めそうなのが、セレッソ大阪と鹿島アントラーズだろう。

 C大阪の目玉は、王者横浜F・マリノスから加入したFWレオ・セアラと、アビスパ福岡から加わったMFジョルディ・クルークスの助っ人コンビだ。特に昨季のレオ・セアラは、ローテーション制のなかでも11ゴールを記録しただけに、常時出場すればさらにゴール数を上積みするはず。少なくとも、チームとして不足気味だった得点力アップの起爆剤となるだろう。

 また、ヴィッセル神戸に移籍したFWジェアン・パトリッキの代役として、新たにブラジルのジュベントゥージからレフティのFWカピシャーバを補強するなど、フロントの今季にかける姿勢も見て取れる。昨季の5位という成績が偶然ではないことを証明できかるか、要注目だ。

 昨季4位の鹿島も、近年アキレス腱だったセンターバック(CB)に昌子源と植田直通という2人の即戦力OBをダブル補強するなど、タイトル獲得に対する意欲を示した補強を見せている。2年目の岩政大樹監督にとっても、チームのフィロソフィーを知り尽くす2人の加入は、チーム作りを進めるうえでも心強いはずだ。

 その他、サンフレッチェ広島から加入したMF藤井智也、J2町田から獲得したMF佐野海舟も、派手さはないが確実に選手層に厚みをもたせてくれそうで、FW知念慶も計算できる戦力。FWエヴェラウドなど流出した戦力以上の補強が実現できただけに、優勝争いに加わる可能性は高い。

 もうひとつ効果的な補強を見せているのが、浦和からFWキャスパー・ユンカーを獲得した名古屋グランパスだ。昨季は8位に低迷した名古屋のウィークポイントは決定力だったことを考えると、ユンカーにかかる期待は大きい。

 さらにJ2の人気銘柄のひとりだったヴァンフォーレ甲府のMF山田陸の獲得、鹿島のMF和泉竜司とMF米本拓司の復帰と、中盤も層が厚くなった。昨季の守備力を維持しながら攻撃力をアップできれば、上位進出が期待できそうだ。

【主力の引き留め+化けそうな選手を加えた鳥栖】

上位進出期待のクラブ/サガン鳥栖、コンサドーレ札幌、サンフレッチェ広島

小宮良之(スポーツライター)

 移籍状況にかかわらず、上位へ進出してきそうなのは、昨シーズン優勝の横浜F・マリノス、一昨シーズン優勝の川崎フロンターレの二強だろう。どちらもチーム力が安定的に高い。横浜FMは岩田智輝、川崎は谷口彰悟という主力が抜けたが、大崩れしない強さはある。また、鹿島アントラーズもセンターバックの補強で強固な戦いができそうだ。

 しかしここでは「移籍状況を考察」しつつ、サガン鳥栖、コンサドーレ札幌、サンフレッチェ広島の3チームに注目したい。

 鳥栖は、現状ではほぼ満点の「補強」だった。期限付き移籍だったFW宮代大聖の川崎への復帰、左サイドで攻守を回していたジエゴの柏レイソル移籍はやや痛いが、GK朴一圭など主力を引き留められたことが大きい。セレッソからの期限付き移籍で残留したMF西川潤は、今シーズンの主役になってもおかしくないだろう。

 昨シーズンの躍進で草刈り場になってもおかしくなかったが、川井健太監督の求心力がものを言った。選手獲得にも、その一面は出た。

 昨シーズン、ロアッソ熊本のJ1参入プレーオフ進出に貢献した河原創はインテリジェンスを感じさせるMFで、巧みな展開力には「サッカー」が満ちている。また、ベガルタ仙台で二ケタ得点したFW富樫敬真も台頭著しく、周りと調和できるストライカーで「和製ベンゼマ」のような活躍が望まれる。

 そしてJ3松本山雅FCから移籍のFW横山歩夢は、チーム戦術と無関係に豪快な一発を決めており、攻撃シーンを多く作れる鳥栖で大化けする可能性もある。

 札幌は6年目になるミハイロ・ペトロヴィッチ監督の指導の積み重ねで、選手が確実に成長している。昨シーズンも、MF駒井善成、DF岡村大八、DF田中駿汰、GK菅野孝憲などのパフォーマンスはハイレベルだった。

 とりわけ、MF青木亮太は名古屋グランパス時代から天才性を感じさせていが、ケガもあって苦しんだあと、札幌で覚醒しつつある。派手な補強はないが、主力が残ったことで十分だ。

 そして、名将は、神戸から獲得したMF小林祐希をどう使うのか。

 広島も、札幌と同じような理由で名前を挙げた。昨シーズン3位の主力を残し、ミヒャエル・スキッベ監督がいよいよ思う存分に采配を振る。それだけで「補強」と言える。

 J1からの補強は現時点で福岡のDF志知孝明だけだが、左ウイングバックでのプレーが予想され、ポジション的に穴がなくなった。優勝も狙える陣容だ。

【新加入選手の名前で目を引く鹿島】

上位進出期待のクラブ/鹿島アントラーズ、柏レイソル、セレッソ大阪

浅田真樹(スポーツライター)

 今季開幕前の補強において、まずは単純に"名前"で目を引くのが、鹿島アントラーズである。

 日本代表経験も豊富なCBコンビの昌子源、植田直通に加え、優勝争いのライバル・川崎フロンターレで貴重な得点源だったFW知念慶を獲得。日本人選手の移籍補強としては、なかなかに豪華な顔ぶれだ。

 そのほかにもMF藤井智也、MF佐野海舟、FW垣田裕暉と、冒頭の3人には実績では及ばないながらも、面白い人材を加えている。MF三竿健斗が海外移籍で抜けた穴は小さくないが、プラスがマイナスを大きく上回り、当然、昨季の4位を上回る成績が期待される。

 また、名前では鹿島に見劣るものの、実力者を的確にピックアップした印象を受けるのが、柏レイソルだ。MF高嶺朋樹、MF山田康太、DF片山瑛一、MF仙頭啓矢ら、優れた技術に加えてクレバーさを感じさせる選手が集まった。

 昨季はシーズン終盤に失速し、戦術的にも迷いが見られたが、まだまだ成長途上の若手が多く、新戦力とうまくかみ合えば、柔軟に複数の戦術をこなせるチームになるのではないだろうか。最終ラインを中心に昨季のレギュラークラスが複数抜けたが、むしろ昨季以上に面白いサッカーをピッチ上で繰り広げてくれそうな気配を感じさせる。

 個人的には、以上の2クラブが今季開幕前補強で好印象を受けた"2強"だが、あえてこれに続くクラブを挙げるとすれば、セレッソ大阪だろうか。

 FWレオ・セアラ、MFジョルディ・クルークスと、すでにJ1で実績を残している外国人選手を獲得し、新戦力にある程度の計算が立つ。

 特にレオ・セアラは、昨季横浜F・マリノスでFWアンデルソン・ロペスの控えという立ち場に置かれることが多かったにもかかわらず、チーム最多の11ゴールを記録。得点力アップが必須であるC大阪にとっては、理にかなった補強だ。

 小菊昭雄体制3季目と成熟期に入るC大阪にあって、このブラジル人ストライカーがラストピースになれるようなら、チームは確実に優勝争いに加わってくるはずだ。