どんな26人になっても、議論は巻き起こるものだ。
 カタールW杯のメンバー発表が行なわれ、大迫勇也、原口元気、古橋亨梧らが落選した。古橋と同じようにセルティックで結果を残している旗手怜央も、メンバーに加わることができなかった。

 グループステージの対戦相手を考えると、カウンターが有効な手段になるのは間違いない。前田大然と浅野拓磨が選ばれたのは、彼らのスピードがカウンターで活用できるからだろう。

 もうひとつは、守備のタスクだ。

 グループステージで対戦するドイツもスペインも、DFラインからビルドアップをしてくる。スペインのCBパウ・トーレスは、ちょっとでも自由を与えたら縦パスを通してくる。それがまた、守備側からするとエグい。

 ドイツやスペインにボールを握られるとしても、前線から規制はかけたい。その必要性と効果を改めて感じさせたのが、9月のアメリカ戦だった。4−2−3−1の1トップに入った前田が、最前線から高強度のプレスを連続して仕掛けた。二度追い、三度追い、プレスバックを繰り返した。アメリカがテストマッチ仕様だったことを差し引いても、抜群の存在感だった。

 前田のスピードとハードワークは、もちろん攻撃でも生かされる。前線からハードにプレスをしかけながら、攻撃になると何度もスプリントできるのだ。彼のプレーは、攻撃でも守備でも連続性がある。大迫や古橋を外しても、彼を選びたい理由だろう。

 浅野にも同じ役割を託せる。大迫不在の3月のオーストラリア戦では、4−3−3のCFを任されて守備のスイッチを入れた。ドイツとスペインとの戦いをシミュレーションすると、FWの柱は前田か浅野が適任と考えられる。

 もちろん、ストライカータイプも手元に置きたい。そこでチョイスされたのが上田綺世だ。

 ストライカータイプなら大迫である。経験も実績も十分だ。2月から代表を離れているものの、彼のプレースタイルは誰もが理解している。ヴィッセル神戸では復調をはっきりとアピールしていたから、森保監督もかなり悩んだだろう。

 そのうえで落選の理由を想像すると、二つの要因が思い浮かぶ。

 W杯のグループステージは、中3日の3連戦だ。しかも、強度の高い試合の連続である。フィジカル的な負担は大きい。

 神戸で戦列に復帰している大迫だが、今シーズンはたびたびケガに悩まされてきた。W杯で彼を使うとしたら、プレータイムや試合間隔に配慮しなければならない。3試合連続でフル出場させるのは、リスクがありそうだ。ストライカータイプを3人しか招集されていないなかでは、残りふたりに負担がかかってしまう恐れがある。

 さらに言えば、浅野がケガからの回復過程にある。ボーフム所属の彼は、9月から戦列を離れている。森保一監督はヨーロッパにドクターとトレーナーを派遣し、けが人の状態は「じかに確認して発表につなげている」説明した。とはいえ、回復を慎重に見守っていくべきなのは間違いない。

 大迫はプレータイムに配慮し、浅野はコンディションを気にしながらとなると、前田の負担が大きくなりかねない。そうしたことも考えて、大迫ではなく上田という選択肢になったのではないだろうか。

 上田自身の状態も、もちろん評価されたはずだ。ベルギーリーグ中位のセルクル・ブルージュで、ここまで5ゴールを記録している。守備のタスクを背負いつつ、限られたチャンスで得点を狙うタスクは、日本代表のFWにも共通する。高強度のリーグ戦で揉まれていることも、彼の招集を後押しする材料になったと考える。

 GKも意見が分かれた。

 過去2度のW杯では、直近の五輪代表GKが選出された。12年のロンドン五輪に出場した権田が14年のブラジルW杯に、16年のリオ五輪に出場した中村航輔が18年のロシアW杯に、第3GKの位置づけでメンバー入りした。