カタールW杯に臨む日本代表の最終メンバーの発表を前に、欧州組はどのような状態にあるのか。チャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)などでどんなプレーを見せたのか。活躍した選手、イマイチだった選手を探ってみた。

 活躍した選手の筆頭格は鎌田大地(フランクフルト)だ。CL第5節の対マルセイユ戦。同じグループCを戦うトッテナム・ホットスパー対スポルティングの結果次第では、フランクフルトは勝利を収めないとグループリーグ敗退が決まる可能性があった。そうしたなかで鎌田は開始3分、先制ゴールを決めた。


マルセイユ戦で先制ゴールを決めた鎌田大地(フランクフルト)

 これまで3−4−2−1(5−2−3)のシャドーでの出場が多かった鎌田だが、この日は守備的MFとして出場。低い位置で構えたにもかかわらず、左サイドでチャンスが構築されたのを確認すると、ゴール前に進出した。DFエバン・ヌディカ(元フランスU‐21代表)がアーリークロスを送ると、鎌田の先を行くイエスパー・リンドストローム(デンマーク代表)がこれをスルー。おあつらえ向きのボールが鎌田のもとに巡ってきた。出足鋭くボールもろとも直進した鎌田は、正面からグサリと相手ゴールに右足シュートを突き刺した。

 この後、マルセイユに追いつかれたフランクフルトだが、前半27分、ランダル・コロ・ムアニ(フランス代表)のゴールで逆転。2−1で勝利を収め、ベスト16入りに可能性をつないだ。その一番の立役者は鎌田だと言える。両軍の中で最もよく見えた選手でもあった。日本代表ではアタッカーとして通るが、この試合ではピッチのド真ん中で大将然と構える大黒柱という感じで、守備的MFがハマり役に見えた。この位置で1度もテストしたことがない森保采配を恨む結果となった。

 守田英正が所属するスポルティングは、プレミアリーグで現在3位を行くスパーズにアウェーで1−1の引き分けを演じた。グループDは4チームが勝ち点2差の間にひしめく、8グループ中一番の激戦区となっている。

動きに鋭さを欠いた久保建英、堂安律

 守田にはつらい試合になった。後半16分、左足のふくらはぎを故障。詳細は報じられていないが、そのままピッチを後にする姿は、W杯の最終メンバー発表を間近に控えたこの時期、見たくない光景だった。故障の程度が心配される。

 ケガで途中交代した日本代表候補はもうひとりいた。ELオモニア・ニコシア戦に4−4−2のサイドハーフとして先発した久保建英だ。こちらは左肩で、足ではないので守田より楽観的になれるが、深刻なのは肝心のプレーで、ウインガー、アタッカーとしての推進力に欠けた。全体的に動きが不必要にせわしなく、わちゃわちゃした感じで、技巧派に不可欠とされる逆を取る動きに鋭さを欠いた。

 相手ボール時のプレッシングも迫力不足だった。久保は選手としての方向性が見えにくくなっている印象だ。中盤選手なのかウインガーなのか、アタッカーなのか。中盤に下がるならば、チームの中心選手であるダビド・シルバのような逆を取るアクションに、いまの何倍も磨きをかけなければならない。

 同じポジションでプレーしたフライブルクの堂安律もいまひとつだった。ELオリンピアコス戦。なにより元気がなかった。ウイングとして対峙する選手に挑んでいく意気地に欠けた。かわそうという意識が強いのか、縦に勝負を挑まない。見せ場を作ることができぬまま後半18分、ベンチに退いた。

 久保、堂安と一線を画したのがスタッド・ランスの伊東純也だった。比較対象が欧州のカップ戦ではなく、フランスの国内リーグで、しかも第12節の相手は成績の上がらないオセールという点を差し引いても、それぞれの違いについて言及したくなる。レッドカードによる2試合の出場停止処分明けで、休養十分だったこともあるかもしれないが、とにかく伊東は圧倒的に元気だった。

 久保、堂安とは異なり、伊東はボールを受けると8割近い確率で縦を突いた。走力、馬力を活かしながらゴリゴリと前進。パンチ力溢れるシュートでGKを泳がす場面もあった。そして押し詰まった後半42分、1−1の均衡を動かす決勝ゴールをマークした。左ウイング、ミチェル・ファン・ベルゲン(元オランダU‐21代表)のシュート気味のクロスにGKが反応したこぼれ球をプッシュ。決勝点としたのだ。

指揮官の評価が高い旗手怜央

 4−2−3−1の前4人の中で、唯一のフルタイム出場選手でもあった。活きのよさ、ノリのよさを90分間発揮し続けた。鎌田とともに頼もしい存在に見える。

 CLシャフタール・ドネツク戦に臨んだセルティックは、古橋亨梧と旗手怜央がスタメンを飾った。4−4−2の2トップをギオルゴス・ギアクマキス(ギリシャ代表)と一緒に張った古橋は、右サイドに流れてプレーする機会が目立った。右サイドのほうが左より好きなのだろう。ポジション的な適性は真ん中から右にあるはずだ。

 日本代表では1トップで使われることもあれば、ウイングで使われることもある古橋だが、これまで述べてきたように右には候補選手が多数いる。右と左を比べたとき層が厚いのは右だ。左で使われることがしばしばある久保にしても、得意なのは右。古橋は1トップの立ち位置を守ったほうが最終メンバーに残りやすいのかもしれない。

 ただし、代表では1トップでハマったことがない。それは、このシャフタール戦の後半20分、古橋と交代で投入された前田大然にもあてはまる。彼も日本代表でうまくハマったことはない。だが、古橋同様、速い。アンジェ・ポッステコグルー監督率いるセルティックはハイプレスが自慢のチームで、前田、古橋のスピードはその概念と最適な関係にある。彼らはシャフタールのDF陣を実際、かなり慌てさせていた。

 プレッシングの要素を日本代表にどの程度盛り込むか。プレーに不調はあってもプレッシングに不調はない。26人の最終メンバーの顔ぶれは、それによって少なからず左右される。

 セルティックでは旗手も見る者を触発させるプレーをした。相手に捕まりにくい動きをする。中間的なポジションでボールを受ける独得のセンスがある。この試合では後半39分までプレーした。9月に行なわれたアメリカ戦、エクアドル戦で出番を与えなかった森保監督より、ポステコグルーの旗手への評価は高い。筆者もポステコグルーに賛同する。とりわけガタイの大きなドイツ人選手には嫌らしい存在に見えるはずだ。

 アタッカー陣で出場機会に恵まれなかった選手は、ELをブラガと戦ったウニオン・ベルリンの原口元気(後半アディショナルタイムに約1分間出場)と、同じくELをフェネルバフチェと戦ったモナコの南野拓実(出場なし)になる。

 コンディションが不安視された冨安健洋は、後半29分までプレーした。ELのPSV戦である。アーセナルのミケル・アルテタ監督は、PSVに先制を許すと、布陣を4−3−3から3−3−2−2に移行した。冨安のポジションもそれに伴い右サイドバック(SB)から、3バックの右に変化した。

 右SBとしてはまずまずのプレーを見せていた冨安だが、3バックに布陣が変わるとプレーを混乱させた。冨安の個人的な問題なのか。3バックへの変更に問題があったのかは定かではない。

 しかし、冨安を日本代表のどこで使うべきなのか、考えさせられる試合になったことは確かである。CBなのかSBなのか。ちなみに、守備的MFのほうが面白いというのは、筆者の見解である。