「おしりにできもの」ができる原因をご存知ですか?医師が徹底解説!

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私たちのおしりは想像しているよりもデリケートなため、様々な要因からできものが出来たり荒れたりしてしまいます。ここでは、できものができる原因や対処法などをMedicalDOC監修医が紹介します。

監修医師:
梅村 将成 医師(市中総合病院)

自治医科大学医学部卒業。その後市中病院で臨床経験をつみ、現在は市中の総合病院で外科専門医・腹部救急認定医として勤務。日本外科学会、日本消化器病学会、日本腹部救急医学会などに所属。
消化器外科・総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患を診療。小児から高齢者まで、健康に悩みを抱えるすべての患者さんが納得した医療を受けられるよう、専門医と総合医の視点をもって日夜診療に努めている。

「おしりのできもの」で考えられる病気と対処法

おしりは自分で見ることはできませんが、違和感や痛みが出て気になることがあるでしょう。できものが出来ているのか、何か悪い病気の前兆なのかと心配になると思います。
ここでは、おしりのできものとして考えられる病気とその対処法を紹介していきます。

おしりにぶよぶよした痛みのないできものがある場合の原因と治し方

肛門周囲にぷよぷよとした、痛みのない、皮膚のようなものが垂れさがることがあります。
このような症状の場合、肛門皮垂(スキンタグ)と呼ばれるものが考えられます。
肛門皮垂そのものは悪性のできものではなく、肛門周囲の皮膚が余ってしまい、垂れ下がった状態です。触ると、ぶよぶよとしたできものと感じ、気になると思います。
皮膚のあまったものと考えれば安心できるかもしれませんが、とても大きくなったり、便で汚染され不潔の原因になったりする場合もあります。
経過観察で良い状態ですが、大きいものは切除することもできます。肛門科や外科を受診して相談しましょう。悪性ではないため受診を急ぐ必要はありません。

おしりに痛みを伴うしこりのようなできものがある場合の原因と治し方

お尻に触るとやや硬めのしこりのようなものがあり、座ると押されるために痛むことがあります。
このような症状の場合、粉瘤(アテローム)が考えられます。

粉瘤(ふんりゅう)

粉瘤は、皮下に袋ができ、その中に本来外に落ちていくはずであった垢(角質)や皮脂がたまってしまうものです。その袋に細菌感染をきたすと、赤く腫れて痛みが出現します。感染しなければしこりや軽い痛み程度ですみます。
治療は、局所麻酔下での手術で袋ごと取り除くことが一般的です。ただし、良性腫瘍のため手術は必須ではありません。粉瘤は自然消失しないためサイズが大きいものは治療をお勧めします。
緊急性はありませんが、気になる場合には皮膚科を受診しましょう。

おしりに赤いできものがあり痛みや痒みを伴う場合の原因と治し方

おしりに小さい発疹がかゆみや痛みを伴ってできる症状のことを指します。
このような症状の場合、毛包炎尋常性ざ瘡(にきび)汗疹(あせも)などが考えられます。これらの病気はすべて毛穴が関係するという類似点がありますが、原因はそれぞれ違います。
毛包炎は毛包への細菌感染が原因になり、ニキビは皮脂が毛穴に詰まることで発症します。あせもは汗を出す汗腺が大量の汗で詰まることが原因です。
市販のクリームなどで改善する場合もありますが、原因によって対処法も異なります。皮膚科で相談して、適切な治療をうけることをお勧めします。

おしりに膿のあるできものができる場合の原因と治し方

おしりに膿を出すできものができ、痛みを伴う場合を指します。
このような症状の場合、化膿性汗腺炎の可能性があります。また、粉瘤が細菌感染した場合や、毛包炎が増悪した場合も考えられます。

化膿性汗腺炎(かのうせいかんせんえん)

化膿性汗腺炎は、毛包の慢性・炎症性・再発性を特徴とした病気で、思春期以降に腋窩や臀部に好発します。
近年提唱されてきた病気ではっきりとした原因は不明ですが、重症化すると瘻孔(皮下にトンネルをつくる)など複雑な皮膚病変をつくるため注意が必要です。
膿がでる場合は治療が必要な場合が多く、早めの皮膚科受診をお勧めします。

すぐに病院へ行くべき「おしりのできもの」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

痛みが強く、発熱がある、膿がある場合は、皮膚・外科へ

局所の痛みがつよく、発熱している場合は、細菌感染症などが疑われます。発熱する場合、早めに膿を排出する処置や抗生剤投与が必要になる場合もあります。また、処置が遅れるとさらに重篤な感染症になる場合もあります。早めに皮膚科や外科を受診しましょう。

「おしりのできもの」が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「おしりのできもの」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

化膿性汗腺炎(かのうせいかんせんえん)

化膿性汗腺炎は、皮膚にニキビのような隆起ができて、痛みや膿の排泄を伴います。また皮下に瘻孔を形成するなど、複雑な皮膚病変がでる可能性もあります。
原因は不明ですが、腋窩や臀部などのアポクリン腺の多い場所にできやすいことが知られています。衣類のこすれなど機械的刺激も原因に関与している可能性が考えられています。
病状の程度によって治療は異なり、外用剤塗布、抗生剤内服から、免疫抑制剤の注射までさまざまな治療方法があります。
繰り返すことを特徴とし、悪臭が出るなど生活に支障をきたすこともあります。この病気かどうかの自信がなくても、できものによる痛みや悪臭などで悩むようなら早めに皮膚科に受診しましょう。

「おしりのできもの」を予防する方法を紹介!

おしりにできものができる要因としては、食事やスキンケアなどの生活習慣によるものや座り方の問題などが考えられます。予防方法を紹介していきます。

おしりのできものを防ぐ日々の生活・インナーケア編

ニキビの原因として皮脂分泌が多いことが知られています。脂っこい食事が多いと皮脂の量も増えるため、食生活を見直すことも予防の一つです。
締めつけが強い下着は血行不良になる可能性があり、乾燥しにくい素材は蒸れやすくなります。どちらも皮膚がいたむ原因になりますので、下着にも気をつかいましょう。
お風呂でシャンプーやリンスなどの洗剤を流すときで、最後にお尻に付着したままにすると毛穴が詰まってしまいます。忘れずにおしりもよく洗い流しましょう。
デスクワークで長時間同じ姿勢で座っていると、おしりに刺激がかかり皮膚がいたむ原因になります。適宜姿勢を変えたりするのも予防の一つになります。

おしり・デリケートゾーンの日々のアウターケア編

お尻は外的刺激を受けやすく、乾燥しやすい部位でもあります。刺激や乾燥で皮膚角質がいたむと毛穴つまりの原因やできものが出来やすい状況を作ってしまいます。
日頃からボディローションなどで保湿、ワセリンで保護するなど皮膚ケアを心がけましょう。

おしりにできものがあるときに使っても良い市販薬やクリームは?

ちょっとしたできものならば市販のクリームなどで改善する可能性があります。ただし、長引く場合は抗生剤入りの軟膏や、内服抗生剤の処方などが必要になるときもあります。
市販のワセリンやボディークリームなどは皮膚保護には有用ですが、人によっては皮膚にあわない場合もあります。市販薬をぬっても改善しないとき、その市販薬自体が原因になっている可能性もあることを知っておいてください。
サイズの大きいもの、しこりを伴うできものが多発する、痛みや炎症がある場合は、市販薬では対応が難しいと思います。早めに皮膚科を受診してください。

「おしりのできもの」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「おしりのできもの」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

粉瘤(ふんりゅう)とニキビの違いは?

梅村 将成 医師

粉瘤とニキビは、炎症のできる部位が毛穴か袋かという点で異なります。
粉瘤は、皮下にできた袋の中に、本来外に落ちていくはずであった垢(角質)や皮脂がたまることでできるものです。ニキビは毛穴から分泌される皮脂がつまることが原因です。
ニキビは毛穴が原因のためサイズに大きな差はありませんが、粉瘤は袋のサイズによってはとても大きなものもあり得ます。
粉瘤やニキビは全身どこにできてもおかしくなく、おしりにできることもあります。
医師ならば見た目で判断がつきますが、対応はそれぞれことなります。皮膚科を受診し適切な治療を受けることをお勧めします。

粉瘤は放置しても大丈夫?

梅村 将成 医師

放置しても命に関わることはほとんどありませんが、細菌感染をともなうと痛みが強く生活に支障がでます。
粉瘤は緊急性のある病気ではなく、また悪性の病気でもありません。
放置しても命に関わることはほとんどありませんが、細菌感染をともなうと痛みが強く生活に支障がでます。また袋は自然に消失しないため再発する可能性もあります。
気になる場合には治療することをお勧めしますので、皮膚科や外科を受診してください。

おしりのできものは潰しても良い?

梅村 将成 医師

できものを潰したところで命にはかかわりませんが、潰さずに適切に処置することが望ましいでしょう。
ニキビなどを不用意につぶすと、瘢痕化して皮膚に跡が残ってしまう可能性あります。
粉瘤も同じように、内容物を排出することで一時的に改善しますが、再発する可能性があります。

まとめ

おしりにできものができても人に相談しにくく悩んでしまうこともあると思います。皮膚のトラブルからできることが多いため、まずは皮膚を清潔にして保湿するなど、セルフケアを心がけてください。
専門的な治療が必要な場合もありますので、痛みや膿などで悩む場合は早めに皮膚科を受診してください。

「おしりのできもの」に関連する病気や症状

「おしりのできもの」で考えられる病気

「おしりのできもの」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

皮膚科系の病気

化膿性汗腺炎

せつ

よう

粉瘤

にきび

毛包炎

毛嚢炎

外科系の病気

内痔核、外痔核

肛門周囲膿瘍

クローン病

多くは皮膚疾患ですが、肛門ちかくに病変がある場合は外科系の疾患が原因であることもあります。

「おしりのできもの」に似ている症状・関連する症状

「おしりのできもの」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

ぶよぶよした痛みのないできもの

痛みを伴うしこり

赤いできものがあり痛みや痒みを伴う

膿のあるできもの

陰部のできもの・しこりいぼ肛門がかゆい

「おしりのできもの」症状の他に、これらの症状がある場合も「粉瘤」「尋常性ざ瘡」「毛包炎」「化膿性汗腺炎」などの疾患の可能性が考えられます。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。

【参考文献】

■公益社団法人日本皮膚科学会
・皮膚科Q&A アテローム
・皮膚科Q&A にきび

■公益財団法人日本皮膚科学会化膿性汗腺炎診療の手引き 2020