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試乗で確かめたいハイドロの調子

シトロエンBXの中古車選びでは、可能な限り試乗をしてハイドロニューマチックの仕事ぶりを確かめたい。車高を一番高く設定し、上昇中によろめく場合はフロント・ストラットの劣化が疑われる。新品部品は出てきにくい。

【画像】ガンディーニ・デザインのシトロエンBX 個性的なのは不変 最新モデルのC4とC5 Xも 全65枚

LHMと呼ばれる化学合成の専用フルードは、外から見て漏れがなくても、内部で漏れている可能性はある。カチカチと不自然な機械音が数秒毎に聞こえるなら、ハイドロポンプや、窒素ガスで満たされた緑の球体、スフェアが劣化している証拠といえる。


シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)

エンジンを切ると、ハイドロニューマチックの圧力が抜けて車高がゆっくり落ちる。最初にリアが徐々に沈んでいくが、フロントは丸1日くらい高いままの例もある。これで正常だ。

エンジンをアイドリングさせた状態でブレーキペダルを踏んでみて、リアの車高が沈むなら、ブレーキバルブの劣化が疑われる。車高が高くなる場合は、ハイドロ・システム内にエアが混入している可能性がある。

乗り心地が固いのは、スフェアの不調だろう。ふわふわと落ち着かない場合は、正しくないスフェアが取り付けられたことが原因かもしれない。ブッシュやボールジョイントが劣化すると、滑らかな質感に影響が出る。

パワーステアリングが装備されているBXでは、ステアリングアーム部分のジョイントブーツの状態を確かめる。交換作業は、悪夢のように大変だという。

スタイリングは巨匠、ガンディーニ

シトロエンBXでは、マニュアル・トランスミッションが弱点の1つ。2速と3速のシンクロメッシュが傷みやすく、走行中にギアが抜けることもあるようだ。シフトフィールが悪い場合は、リンケージの交換で解決することが多い。

シトロエンは、多彩なエンジンへ理想的なギア比を与えるため、それぞれ異なるセットをBXに用意していた。異なるグレード用のトランスミッションへ交換されると、ギア比が不自然にロングだったりショートに感じられることがある。


シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)

1.4LエンジンのBXでは、デフギアが弱点。四輪駆動版も極少数存在するものの、肝心のトランスファーが弱い。台数が少ないため部品を探すことも極めて困難で、錆びやすいエグゾーストも出てこない。

初期のBXにはインチではなく、ミリ単位のタイヤとホイールが組まれていた。交換用タイヤは驚くほど高い一方で希少性は高く、マニアにとってはそそられるポイントになっている。

メカニズムにはシトロエン特有の難解さがあるBXだが、ベルトーネ社に在籍していた巨匠、マルチェロ・ガンディーニ氏によるスタイリングは、時代を超越する美しさがある。シャープで特徴的で、ブランドらしい個性に溢れたモダン・クラシックだといえる。

購入時に気をつけたいポイント

エンジンとラジエター

ほどんどのBXには、PSAグループによる新しいXUエンジンが搭載されていた。比較的軽量で力強く、燃費も優れており、動力性能と経済性でライバルに勝っていた。キャブレターの場合は、調子を専門家に見てもらいたい。

ディーゼルエンジンは堅牢だが、オーバーヒートやヘッドガスケットの不具合が珍しいわけではない。タイミングベルト交換の履歴と、エンジンオイルやクーラントの漏れがないか、事前によく観察したい。

ハイドロニューマチックとサスペンション


シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)

滑らかな乗り心地と強力なブレーキは、LHMフルードと高圧のポンプ、窒素が満たされたスフェアと呼ばれる球体が担っている。エンジンを始動して、車高が上昇する際に異音が出ないか確かめる。

システムの圧力は2200psiから2600psiと高い。フードの漏れや詰まりがないか、ホースやパイプ類の劣化がないか確かめる。ハイドロ・ポンプが傷んでくると、パワーステアリングが断続的に効かなくなる。

ボールジョイントやブッシュ、ベアリング、ストラットトップなどの状態を確かめる。ストラット部分のサビもチェックポイント。過度にネガティブキャンバーが付いている場合は、アームベアリングの劣化を疑う。

ボディとシャシー

フェンダーの内側とサイドシル、各ピラーの付け根、ドアヒンジ、荷室のフロア、サンルーフとフロントガラスの周囲、ドアの底面、スカットルやバンパー裏の前後のパネル、燃料の給油口などは錆びやすい。

フロントのサブフレームやリアアクスルのマウント、荷室の内装の裏側なども確認しにくいものの要注意。

インテリアと電気系統

内装は堅牢とはいえず、バリエーションも多く、見つけにくい部品が多い。特にGTなどレアなグレードのBXの部品を探すのは難しい。年式や仕様に一致したモノが付いているか、丁寧に確かめたいところ。

Mk1のダッシュボードにはPRNと呼ばれる特殊なメーターパネルが採用されていた。後期モデルでは従来的なメーターに置き換わっている。すべての電装系が正常に動くか、確認はお忘れなく。

トランスミッション

マニュアルでは、変速しやすくするシンクロメッシュ機構が壊れやすい。1.4Lエンジンはデフ、四輪駆動の場合はトランスファーも弱点。ドライブシャフトブーツは裂けやすい。

シトロエンBXのまとめ

個性的で実用的で、運転が楽しいシトロエンBX。モダンクラシックとして魅力的なモデルだが、維持やレストアが簡単というわけではない。これから探すなら、グレードや年式にはとらわれず、可能な限り状態の良い個体を選ぶ方が良いだろう。

ボディやシャシーの錆のほか、部品が年式やグレードに合っているか時間を掛けて確かめる。オーバーヒートした過去がないかも調べたい。

良いトコロ


シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)

燃費が良く荷物も積めて、同年代のファミリーカーのなかでは群を抜いた個性を持つ。宙に浮いたような滑らかな乗り心地は、1度体験する価値はある。今のところ、中古車価格も過度に高騰はしていない。

良くないトコロ

中古車として取引価格が低かった期間が長く、錆や劣化が進んでいるBXは多い。レストアしても、車両価格で取り戻せない可能性は高い。GTiは人気で、価格は張るものの修理部品は探しにくい。

シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)のスペック

英国価格:6436〜1万3244ポンド(新車時)
生産台数:231万5739台
全長:4230-4400mm
全幅:1660mm
全高:1365-1430mm
最高速度:154-214km/h
0-97km/h加速:7.8〜14.4秒
燃費:9.6-17.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:902-1150kg
パワートレイン:直列4気筒1360cc・1580cc・1905cc自然吸気/1769ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン/軽油
最高出力:63ps/5500rpm-162ps/6500rpm
最大トルク:11.0kg-m/2500rpm-18.4kg-m/2100rpm
ギアボックス:4速・5速マニュアル/4速オートマティック