安井南 撮影/松山勇樹

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空手、剣道、テコンドー、ヌンチャク、古武術……と多種多様な特技を持つ”武道美女”安井南。TikTokで元剣道部の経験をもとにした「剣道部あるある」などのを披露し、人気を博している現役大学生だ。今回はこれまでの軌跡とTikTokへのこだわりを聞いた。(前中後編の中編)

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【写真】安井南の撮りおろしカット【10点】

──小学生の頃から武道少女だった安井さんですが、一方で芸能活動も小さい頃からスタートさせていたのだとか。



安井 きっかけは本当にひょんなことだったんですよ。習い事としていろんなスポーツをやっているうちに、同じところでスポーツもパフォーマンスも演技もアクションもダンスも全部できるというスクールをお母さんが見つけてきたんです。

──当時、安井さん自身は芸能人志向があったわけではないということですか。



安井 単純に、お母さんとしてはそっちの方が都合よかったんだと思います。送り迎えも1か所だから楽だし、たぶん金銭的にもお得だろうし。私は単品で考えていたんだけど、お母さん的には「この芸能スクールに入ったら、アソートパックになる!」みたいな感覚。その頃から武道だけじゃなくテニスとかダンスも習い始めたんですけど、全部、同じところで済ませていたんですよね。

──習い事感覚でレッスンを受け始めたということですが、当時からCMや映画に出演していたそうですね。



安井 やっぱり子役のオーディションって元気な子が受かりやすいんですよ。私はテコンドーや空手をやっていたから、とにかく声の大きさだけは自信がありまして(笑)。「押忍!」の精神で恥ずかしがらずに挨拶もできますしね。だけどこの最初の芸能活動は、あっさりやめちゃったんですよ。

──どうしてでしょうか?



安井 当時は私も小1とかだったから、オーディションや撮影があると親の送り迎えが絶対に必要じゃないですか。お兄ちゃんは2歳上だから、その頃は小3くらいかな。お母さんと私が家に帰ると、まだお米が炊けないお兄ちゃんは、お腹が空いて炊飯器に残っていた冷たいご飯を食べていたんですよ。「さすがに可哀想なことをした」とみんなで反省して。かといって、お兄ちゃんを現場に連れていくわけにもいかなかったんです。お兄ちゃんは鉄道オタクでポケモンが大好きな人だから、芸能なんて絶対に勘弁してくれっていうタイプで。

──学校での安井さんは、どんな児童・生徒だったんですか?



安井 習い事が多かったから、放課後に友達と一緒に遊ぶことが少なかったんですよね。覚えているのは『news every.』(日本テレビ系)の天気予報。いまだにテレビ画面にそらジローが出て音楽が流れていると、「空手に行く時間だ!」という感覚が蘇ってくるんですよ。

──でも思春期に入ると、周りの女子はカラオケやアニメなどで盛り上がるのでは?



安井 そっちは完全に疎かったです。友達と遊ぶこともあったけど、お金の使い道がまったく違っていましたし。みんなはパフェとかスイーツが大好きだったけど、私はとにかく食費を抑えたかった。友達と出かけても、私はかけうどんしか食べないんです。かけうどんなら200円くらいで済みますから。その節約したお金をどうするかというと、それで武器とか道着を買っていたんですね。わりと硬派な女子中学生だったかもしれない(笑)。

──芸能活動を再開した流れは?



安井 復活させたのは高1のとき、スカウトでした。そのあと富士急ハイランドのオフィシャルアイドルにも選んでいただいたんですけど、ちょうどその頃、コロナ禍になってしまいまして……。曲も決まり、メンバーで練習もして、そこから1年間やる予定だったのですが、実際はほとんど活動できないまま終わってしまったんですよね。TikTokは、この頃に始めました。コロナのせいで芸能活動もままならないし、高校も通うことができなかったので、やることがなかったんですよ。

──そうか、大学だけでなく高校通学もできない時期があったんですね。



安井 プリントが家に送られてきて、「これ、やっておいて!」みたいな感じでしたから。時間があり余って仕方なかったです。だったらTikTokで世の中を少しでも元気にできればなと思ったんですよね。とりあえず道着姿になって、「剣道あるある」を始めたんです。そうしたら剣道関係者や剣道ファンの方が徐々に注目してくれるようになりまして。

──気づいたら剣道アイドルになっていたわけですか(笑)。



安井 私もそれに気をよくして、途中からはヌンチャクなども持ち出して撮るようになりました。ドラマに出るにしても、モデルに選ばれるにしても、やっぱり芸能界って知名度が必要になってくると思うんです。オーディションで落ちると悔しいのは当然ですけど、そこで受かった人を見ると案外肩書を持っているパターンが多いんですよね。何もない私がそこと張り合うためには、自分で戦略的に知名度を上げていくしかないなと考えまして。チャンスは自分で広げていくしかないなって。

──素晴らしいセルフブランディングです。



安井 難しいのは「TikTokの人」になってはダメということなんです。あくまでも私がやりたいのは女優であって、TikTokはそのための手段。女優になったときに「ああ、TikTokから来た人ね」というイメージばかりが先行しちゃうと、仕事の幅が狭まりますから。TikTokはすごく力を入れていますけど、そのへんの見極めは慎重にやっているつもりです。

──現在の事務所・浅井企画に所属したのも同時期ですか?



安井 ご縁があってご一緒させていただくことになったんですけど、話が出たのは2020年の暮れぐらいだったと思います。ここからタレントあるいは女優として、第2の人生が始まることになりました。SNSでの発信も自由に続けさせてくれていますし、いろんなことにもチャレンジできるので、今はすごくやりがいを感じています。

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(取材・文/小野田衛)

▽安井南(やすい・みなみ)


2004年3月13日生まれ、神奈川県出身。インフルエンサー、女優、タレントなどさまざまなフィールドで活躍している。
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