※この記事は2011年09月13日にBLOGOSで公開されたものです

マイタケを中心にきのこの栽培、及びそれらを材料とした加工食品や健康食品の製造・販を手がける株式会社雪国まいたけが12日に記者発表を行った。同社では、従来から農薬、重金属に関する安全検査を実施。今回の記者発表では、これらの検査に加えて、独自に放射性物質の有無を検査し、顧客が店頭やHPで自らチェックすることができる「雪国まいたけ安全システム」を9月15日から本格稼動させることが明らかにされた。

新CMのイメージキャラクターである郷ひろみ氏も登場した記者発表の様子をレポートする。【取材・文：永田 正行（BLOGOS編集部）】

「自分が口にしたくないものは、つくらない、出荷しない」



記者発表の冒頭では、株式会社雪国まいたけの代表取締役である大平喜信より、今回の「安全システム導入」に関する経緯が語られた。大平氏は「自分が口にしたくないものは、つくらない、出荷しない」というポリシーに基づき、1997年には農薬、重金属などの検査体制を自社内に確立。

当初は、こうした検査に掛かるコストに対し、社内やバイヤーから批判も多かったというが、「食の安全」に対する消費者の注目が高まっている現状を鑑みると、先見性があったといえるだろう。

2008年からは、製品に記載された製造番号を使って、店頭に並んでいる商品と同じサンプルの検査結果をホームページから確認することができるシステムを導入。情報開示についても積極的に行っている。

福島第1原発事故以来、放射性物質が食品に与える影響を不安視する声が挙がっている。放射性物質の影響を受けやすいきのこを主力商品としていることもあり、雪国まいたけへの消費者からの問い合わせも増加。その数は１カ月で60件にもなるという。

同社では、4月から放射性物質の自主検査を実施していたが、今回新たに設備投資を行い、より精密な検査の実施と結果を顧客に公開するシステムを導入するというのである。


今回、雪国まいたけが導入したのは米国キャンベラ社のゲルマニウム半導体検出器・波高分析装置。この装置は、各地の研究機関などでも導入されており従来よりも厳密な放射性物質の検査を行うことが出来る。価格1500万前後の同機器を新たに２台購入し、検査体制の充実を図るという。

今回新たに導入される「安全システム」においても従来の同社の検査体制の特徴である以下の４点は受け継がれる。

１．短時間で検査結果がわかる
２．毎日、検査を行っている
３．検査結果を店頭で消費者が確認できる
４．非常に多くの項目についての検査を行っている

現在までの検査で、国の暫定基準値を上回る商品は出ていない。今後も雪国まいたけでは、国の暫定基準値を全面的に良しとせず、可能な限り放射性物質が検出されない生産体制を構築する努力をしていくという。

郷ひろみ氏が消費者に真摯に語り掛ける



続いて、新たなCMイメージキャラクターである郷ひろみ氏が登場し、新CMが報道陣にお披露目された。郷氏は、司会者からの「実際に普段、雪国まいたけを召し上がるんですか」という質問に対し、「愚問ですね」と即答。会場に和やかな空気が広がった。

郷氏が同社のCMに登場するのは2005年以来6年ぶりで、通算4回目。雪国まいたけのCMというと、比較的コミカルな印象のものが多い。しかし、今回の「雪国まいたけ安全システム」の導入をPRするCMでは、郷氏が同社の取り組みを真摯に消費者に語り掛ける異色の内容であった。


今後、企業が問われる「食の安全」に掛ける姿勢



放射性物質が、食品に与える影響については、現在も様々な議論が出ている。最近では、福島県産品の専門店が、「福島の汚染した農産物を持ち込むな」という抗議を受け、出展中止に追い込まれるなど風評被害の問題も深刻だ。

こうした状況の中、食品を扱う企業にとって最も重要なのは「消費者からの信頼」を獲得することだろう。そのために、検査体制や検査項目はもちろん、そこで得られた結果を公表していくという姿勢が必要になる。

今まで、外国産農作物の安全性が話題になることはあっても、国産品に対する信頼度は高かった。しかし、現在は「安全」であることの根拠も積極的に示さなければ消費者は納得しなくなってきている。今回の記者発表では、そのことが改めて浮き彫りになったと言えるだろう。

会見の模様






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