恵比寿200平米超の豪邸を訪問!リノベでまるでホテルのような内装に…
恵比寿駅から広尾方面に向かったところにあるヴィンテージマンション。
エレベーターを降りた先にある扉を開くと…。
そこには海外のラグジュアリーホテル?と思うような世界が広がっていた。
今回は、200平米超えのマンションを“スケルトンリノベーション”したご夫妻を訪ねた。
新築物件ではなく、中古マンションを購入してリノベーションするに至った経緯や、実際に住んでみてわかったリノベーションのメリット・デメリットまで詳しくお話を聞いてみた。
〈DATA〉
名前:桑野克己さん(実業家)・真理さん夫妻
家族:夫妻+子ども2人(小2と中2)
住宅:恵比寿にある202平米の分譲マンション
(築40年のマンションを2019年に購入し、スケルトンリノベーション)
別荘:富津と山中湖にそれぞれ。長崎にホテルも所有
家に対するこだわりとは?
部屋に入って、まず驚かされるのは、その広さだ。
恵比寿駅から徒歩圏内で、202平米。
ピンとこない方はぜひ、手元のスマホで「200平米 都内 マンション」とでも入れて検索してみてほしい。わずか数件しか表示されないはずだ。
もともと希少価値が高い200平米超のマンション。
しかも、人気が高い恵比寿エリアで物件を見つけることは至難の業だが、桑野さんはどのようにして現在の住まいを手に入れたのだろうか。
「ここに引っ越す前は、港区の高輪に住んでいました。資産価値は高いエリアなのですが、住むには少し不便だったんですよね。
以前、恵比寿に住んでいたこともあり、美味しいレストランがたくさんあり、買い物にも便利なところが好きで…。恵比寿への引っ越しを検討するようになりました。
恵比寿南の、2億くらいの物件を見に行ったこともあるのですが、ピンとこなくて。そうこうするうちに、たまたま手にしたチラシで、この部屋が売られていることを知りました。
築年数は古いですが、200平米超の広さがあるのに価格が1億ちょっとと手ごろだったので、その日のうちに物件を見学し、すぐさま手付を打ちました」(克己さん)
「私はとくに恵比寿にこだわっていたわけではないのですが、このマンションは、当時長男が通っていた小学校に近かったこと。そして、マンションのすぐ目の前にバス停があり、利便性が高かったため反対しませんでした。
古いマンションでしたが、リノベーションするということで、すべて自分たちで決められるのがいいと思ったんです」(真理さん)
そうして、まさに「あっという間」に手に入れたマンションを、約8,000万円かけてスケルトンリノベーションする。
『SUPPOSE DESIGN OFFICE』のCEOである谷尻誠氏に依頼し、設計に8ヶ月、施工に5ヶ月かけ、この邸宅が完成したのだ。
「谷尻さんには、所有している長崎県五島市にあるホテルの内装をお願いしたことがあります。
彼の作る世界観がとても気に入っているので、ぜひ自宅もお願いしたいと思いました。
おかげで、思った以上にすばらしい家が完成しました」(克己さん)
ちなみに、桑野さんは、基本的に住むための家は、購入する派だ。とはいっても、永住するのではなく、住み替え前提で購入するという。
「ある程度は『投資』を兼ねていますね。
例えば、前に住んでいた高輪の100平米程度のマンションは、購入時の価格から40%程度高値で売れました。
この恵比寿の家も長く住む気持ちはなく、ある程度のところで売りに出す予定です。とりあえずまだ住んで2年なので、5年くらいを目処に売却してもいいかなと思っています。
賃貸では、部屋の中に手を入れることができないのが難点です。与えられた間取りと与えられた設備で暮らす必要があります。
中古を購入してリノベーションを行えば、自分たちが好きな空間が手に入るだけでなく、部屋の価値を高めて売却することができるのが魅力です。
購入する際、僕がまず考えるのは『損をしないかどうか』なんですよ。
中古マンションなので、一生住むのは無理じゃないですか。
でも、すべてを『投資』と考えてしまうと、リノベーションしてお金をかけるのは無駄では?という思いも出てきてしまう。
なので、『損をしなければいい』くらいの気持ちを持って、部屋を探している、というのが正直なところかもしれません」(克己さん)
家を「投資」としての側面と「住まい」としての機能を考えると、中古を安く購入し、リノベーションして住み、売却というパターンは理想的なのだろう。
次ページでは、谷尻誠氏のデザインでリノベーションしたお部屋を見てみよう。
アイデア満載のスケルトンリノベーションに刮目せよ
リノベーションのポイント拝見
『ホテルのように暮らせる部屋』
それが、桑野さんが求める部屋のテーマだ。
無機質でありながら、不思議と居心地の良さを感じさせる空間づくりは、谷尻誠氏の真骨頂。
よくある居室のように、玄関、リビング、廊下、部屋…というように空間を分断することをせず、すべての場所をつなげることで、ホテルライクでありながら家族の一体感を感じさせる、血の通った家が完成した。
では、拝見させていただこう。
◆リビング・ダイニング・キッチン
50畳を超える広さのLDKが、この部屋の顔となる。
来客が多くても十分に対応が可能な広さを持ち、ベランダからは恵比寿の街を一望できる。
「あえて窓には網戸をつけず、できるだけ視界を遮らない工夫をしています。網戸があると見た目も悪くなるので、部屋の美しさを損なうものは省きました」(克己さん)
ヴィンテージマンションがゆえ天井がそこまで高くなかったため、すべての家具をロータイプに。テレビより高いものを置かないことで、天井を高く見せる配慮がされている。
その配慮の1つが、壁際に低く作られた収納スペース。TV台として、来客時には椅子として、子どもたちの遊び場として、様々な形で活用されている。
リビングのローテーブルの中央には「EcoSmart Fire」の暖炉が。
バイオエタノールを用い、煙や煤を排出しないこの暖炉は、暖房能力の高さも魅力だ。
「普段はあまり点けることはありませんが、お客様が来たときなど、話題づくりの一環として活用しています」(克己さん)
暖炉が埋め込まれたローテーブルとダイニングテーブルはともに、この部屋の雰囲気に合わせて作り上げられたオンリーワンの特注品だ。
さりげない贅沢を施し、日々の暮らしを高める。
これが、アッパー層だからこその「こだわり」なのだろう。
コの字型のオープンキッチンは、リビング・ダイニング全体を見渡せる位置にあり開放感があるうえに、機能性に優れている。
冷蔵庫や洗濯機など他者に見せなくないものはすべて、キッチン後ろのオーク材の壁で囲んだストックルーム内に収められている。
「全部オープンにしてしまうと、見せたくない部分をお客様に見せることになってしまいます。隠したい部分はしっかり隠せるように、それでいて機能性を落とさないようにしてもらいました。
部屋のエアコンの調節スイッチなども、このストックルームの中にまとめています。生活感のあるものはすべて隠せるので、重宝しています」(真理さん)
LDKに限ったことではないが、照明のスイッチ類はすべて、生活感のないデザインになっている。これは設計者である谷尻氏のこだわりとのこと。
◆浴室・洗面所
仕事や家事の疲れを癒す浴室にも、桑野さんご夫婦のこだわりがつまっている。
デザインはまさに、海外のハイクラスなホテルそのもの。
「シャワーは海外のホテルにあるような、上から滝のように出てくるオーバーヘッドシャワーに。浴室テレビ、浴室乾燥機を付け、家族が快適に過ごせるよう配慮しました。
1番のポイントは、窓からの景色です。恵比寿の街並みを見ながら入浴する贅沢は、他ではなかなか味わえないと思います」(克己さん)
家族4人が忙しい朝でも快適に過ごせるよう、洗面ボウルを2つ用意。広く大きな鏡が窓の外の景色を映し、開放感を与えている。
シンク下の収納は収納力が高く、浴室・洗面まわりで使うものがすべて収められている。
◆勉強部屋
家事をしながらでも子どもたちに目を生き届かせることができるよう、勉強部屋をキッチンの横に設置。これは、真理さんのこだわりだ。
「上の息子は小4から、下の息子は年中の冬から、進学のための勉強を始めました。
子どもたちの部屋は別にあるのですが、個室に入ってしまうと目が行き届かないもの。
キッチンやリビングから声掛けができるように、ガラス張りの勉強スペースを作ってもらいました」(真理さん)
◆ウォーク イン クローゼット
今回の設計で1番こだわったところだというWIC(ウォーク イン クローゼット)。
家族が増えると必然的に、服や鞄などが増えていく。
そうしたアイテムを十分に収納するためになされた工夫。それが、廊下と一体化した広いWICだ。
「服が多いので、クローゼットをたくさん作ってほしいとお願いしたら、このスタイルになりました。
部屋から出て、WICに行って服を選んで……という動線がスムーズですし、他にはない作りなのが魅力ですね」
◆シューズ クローゼット
スニーカー好きの克己さん専用のシューズ クローゼット
克己さんの靴を収納する戸棚も、すべて作り付けでキッチンのパントリーからつながる壁面収納にIN。
こことは別に4.4平米の広さのシューズ イン クローゼットもあるというから驚きだ。
このように、生活感を感じさせるものを備え付けの収納にすべて収めることができる工夫が、随所になされている。
見ているだけで、ため息がこぼれるほど美しくラグジュアリーな桑野邸だが、実は「盲点」だったこともあるという。
実は浴槽が〇〇〇だった!?そしてセレブの暮らしの一端とは…
実際住んでみて良かったこと、ここは盲点だったと思うこと
「まず、この家に住んでから、よく人を呼ぶようになりましたね」と真理さん。
外食のあと、“2軒目”は家で…となることが多いという。真理さんは友達と、大画面のテレビでBTSのライブをみて盛り上がることも。
子どもはと言えば、やはり大画面のTVでYouTubeを見たり、Switchに興じたりと広々としたリビングで遊ぶそうだ。
「平置き駐車場があることも、このマンションを選んだ理由の1つです。車で出かけることが多いので、すぐに車が出せる利便性は、手放せないですね。大きい車が置けるのも、平置きならではです」(克己さん)
真理さんも「子どもの通学のために渋谷駅まで毎朝送っているのですが、タワー式の駐車場だと時間がかかることもあるので、平置きで助かっています」と笑顔を見せてくれた。
駐車場を実際見てみると、高級車がずらり。
「アッパー層は電車に乗らない」というウワサは、本当のようだ。
こだわり抜いてリノベーションした物件だが、実際住んでみて、こうすればよかったという箇所はあるのだろうか。
「1番困ったのは、浴槽が大きすぎたことですね。水圧の関係もあるかもしれませんが、お湯を溜めるのに1時間くらいかかってしまうんです。
しかも、石でできているのでお湯が冷めやすく、ホテルライクなデザインにするために、フタや追い炊き機能を付けていないので、慣れるまでは大変でした」(克己さん)
また、開放感をもたらすため、窓に網戸を付けなかったという点に関し、真理さんは、最初は不安だったという。
「今でも、網戸が欲しいと思うときがたまにあります(笑)。でも、上層階に住んでいるので、虫などの侵入はほとんどないので不便はないですね。
一応、スクリーンカーテンを付けているのですが、下ろしたことは、ほぼありません」(真理さん)
アッパー層は別荘もすごかった…
桑野さんご夫婦の暮らしぶりの素晴らしさは、お部屋の紹介だけに留まるものではなかった。
週末は、オンオフの切り替えのため別荘へ。
別荘は現在、山梨県の山中湖畔と、千葉県富津市の2ヶ所に所有している。
山中湖にある別荘
山中湖は、夏は涼しく快適に過ごせる。また、冬はスキー場に出掛けてスノボを楽しむそうだ。
富津の別荘
「千葉の富津は逆に冬温かく過ごしやすいです。夏は、海水浴をしたり、ボートを所有しているので、クルージングに出掛けることもあります」(克己さん)
「旅行もいいですが、別荘があると便利です。
別荘は管理が大変と言いますが、お掃除などはすべて現地の家政婦さんにお願いしています。とてもきれいにしてくれるので逆に申し訳なくなるくらいです」(真理さん)
そして今、富津の住み替え先として、新たな別荘を南房総市に建築中とのこと。そちらは恵比寿の自宅の設計を担当した『SUPPOSE DESIGN OFFICE』が手掛けている。
建設中の南房総にある別荘。250坪ほどの敷地で、目の前が海という好立地にある。
「南房総市は、湘南エリアの1/4程度の値段で購入できるので、穴場だと思います。人生を豊かにしてくれる別荘暮らしは、やめられませんね」(克己さん)
実業家として知られる桑野さんにとって、住まいを整えること、別荘を持つことは、すべて、自分自身を磨く糧になっているという。
良い物件を見極めるために、必要なことは何なのだろうか?
「僕はもともと不動産投資もやっていて、マンションを4棟持っています。
不動産情報をいつも見ているので、相場観もわかりますし、掘り出し物を見つけることができるのだと思います。
常に広範囲にアンテナを張っておくこと。これが1番のコツかもしれないですね」(克己さん)
◆
「頭の良い人は、目が良い人」――このように、頭脳レベルを視力に例えることがある。
もちろん実際に視力が良いわけではなく、広い視野を持ち、広範囲にわたって俯瞰できるような能力を持っているという意味だ。
桑野さんの言うアンテナが、まさにこの「目の良さ」につながる。
アンテナの感度の良さが、良い物件を引き寄せる要素なのだ。
物を見る目を鍛え、「得」のみにこだわらず、かけるべきところにお金をかけ、経済を回す。
我々もそうした視野の広さを、身に付けたいものだ。
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Text/和栗恵