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日本価格が判明 来夏発売

執筆:Masayuki Moriguchi(森口将之)編集:Tetsu Tokunaga(徳永徹)

ホンダのスーパーカー、NSXが2022年いっぱいで生産終了することになった。デビューは2016年だから6年間のモデルライフになる。

【画像】NSXタイプS、標準車、初代タイプS【比べる】 全106枚

1990年から2005年まで作られた初代に比べると短いうえに、2世代続けて後継車を迎えないままの終焉になってしまいそうだ。


NSXタイプS(カーボンマットグレーメタリック)    前田恵介

ホンダは今年3月、S660も2022年で生産終了とアナウンスしたばかり。昨年はF1からの撤退を発表している。商売にしても趣味にしても、1つのことを長い間続けることが尊ばれる日本では、いい評価はなかなか聞かない。

ただ「本田宗一郎さんが泣いているぞ」というのは勘違いだ。

宗一郎氏が社長だった時代、S500〜S600〜S800が生産されていたのは7年間で、1964年から参戦を始めた第1期F1も4年後に活動に終止符を打った。そういう社風なのだ。

とはいえNSXが重要な車種であったことは間違いなく、ホンダは集大成としてタイプSをリリースした。世界限定350台で、日本には30台が割り当てられ、9月2日から国内での受注を開始し、来年7月に発売予定。価格は2794万円だ。

現行NSXは、3.5L V6ツインターボエンジンと9速DCTの間にモーターを内蔵し、縦置きミドシップマウントしたうえに、フロントにも左右1対のモーターを追加した、3モーターハイブリッドAWDのスーパーカーである。

デビューした頃は、まだ電動化などほとんど話題にならなかったこともあり、モーターやバッテリーの搭載で重くなるハイブリッド化には異論も多かった。

しかし近年、フェラーリ296 GTBやマクラーレン・アルトゥーラなど、多くのスーパーカーが電動化にトライしている。NSXは時代の一歩先を行っていたと言える。

他社スーパーカーの先導役

聞くところによれば、現行NSXはスーパーカーを手がけるいくつかの自動車メーカーが研究開発用に購入したそうで、影響力の大きさが伺える。たしかに296 GTBもアルトゥーラも、エンジンはV6ツインターボになっている。

そういえば初代も、「こんなに乗りやすいスーパーカーはスーパーカーではない」という否定的な意見があった。しかしその後、欧州のスーパーカーがおしなべて乗りやすくなったことを考えれば、これもまたNSX効果と考えられる。


タイプSのボディサイズは、全長4535×全幅1940×全高1215mm。標準のNSXに比べて全長が長くなっている。    前田恵介

そんなNSXの集大成であるタイプSを、発表前の説明会で見ることができた。

会場に置かれていた初代タイプSより、標準車との違いは大きかった。開発責任者の水上聡氏、設計開発責任者の井上雅文氏の言葉を交えてお伝えしよう。

ちなみに現行NSXは米国で開発されたが、2019年のマイナーチェンジから開発の拠点が日本に移っており、タイプSも我が国でプロジェクトが進んだ。初期型はクオリティへの不満が多かったので、熟成を得意とする日本側の担当になったのかもしれない。

コンセプトは「スーパーカーを極める」。トータルパワー、ライトウェイト、エアロダイナミクスの3点にこだわって仕上げられた。

3.5L V6ツインターボエンジンは、ターボチャージャーの過給圧、インジェクターの燃料噴射流量、インタークーラーの放熱量をアップすることで、最高出力はプラス22psの529ps、最大トルクは5.1kg-m向上して61.2kg-mとなった。

フロントのツインモーターユニットも、バッテリー出力と使用可能容量を拡大することで7psのアップを実現。システム最高出力は581psから610ps、システム最大トルクは65.9kg-mから68.0kg-mに引き上げられている。

タイプS どこが変わったか

DCTはパドルホールドダウンシフト機構を搭載。減速時に左側のパドルを0.6秒引き続けると、瞬時にもっとも低い適切なギアまで落とす。適切なギアを素早く選べるので、次の加速がスピーディに行えるという説明だ。

加えてサウンドも操作や挙動との一体感を目指してチューニングしたという。


NSXタイプS(内装色:オーキッド、OPのセミアニリンフルレザー/アルカンターラなどを選択)    前田恵介

サスペンションはアクティブ・ダンパー・システムの減衰領域を拡大した。クワイエット/スポーツ/スポーツ+/トラックの4つの走行モードが選べるインテグレーテッド・ダイナミクス・システムは、タイプS専用にこのダンパーや電動パワーステアリング、AWDの駆動配分制御の見直しを行っている。

タイヤサイズはフロント245/35ZR19、リア305/30ZR20で変わらないが、銘柄はピレリPゼロをチョイス。専用の鍛造アルミホイールはオフセットを変えることで、前後ともにワイドトレッド化した。

ボディは全長のみ45mm伸ばされている。大きく変わったのはフロントで、ノーズが低く長くなり、エンブレムは小型化されて先端に移った。

バンパーは開口部が広がるとともに、エッジを強調した造形になり、下端にはリップスポイラーを追加。ブラックがグロスからマットになったこともあって、かなり精悍になった。

リアは大型化されたカーボンファイバー製大型ディフューザーが目立つ。これに合わせてバンパーのデザインも変わっている。サイドはリアタイヤ直前のタイプSのロゴ、前述した専用の鍛造アルミホイールが特徴。タイプSのロゴはエンジンルーム内のシリアルナンバーを刻んだプレートにも入る。

次世代スポーツカーの行方

ボディカラーは10色で、撮影車両のカーボンマットグレーメタリックとロングビーチブルーパールが新色になる。日本で販売するホンダ車にマットカラーが採用されるのは初めてとのことだ。

ピラーやセンターコンソールなどにアルカンターラをおごったインテリアも精悍になった。シートカラーは新色になったレッドのほかエボニー、撮影車両のオーキッドを用意。ヘッドレストにNSXのロゴが入ることも独自になる。


NSXタイプS(カーボンマットグレーメタリック)    前田恵介

カスタムオーダーの内容は標準車と共通で、4色のキャリパーが選べるカーボンセラミックブレーキローター、カーボンファイバーエンジンカバー、ブラックアルカンターラのルーフライニングなどがある。

これがNSXタイプSの概要だが、もうNSXはこれで終わりなのか、が気になる人もいるだろう。

筆者も同じ気持ちだったので井上氏に尋ねると、NSXという車名になるかは不明であり、内容についてもわからないが、スポーツカーは続けていきたいという返事が返ってきた。

言葉を濁したりしなかったのは、社内での方針がある程度定まっているからではないだろうか。

ホンダの現在の方針からすれば、エンジンは搭載されない可能性が高いが、現行型の電動化技術は役立つはず。ともあれホンダがスポーツカーを諦めたわけではないことはわかった。