東京五輪が無観客で開催されることになった。東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県の会場は、すべて無観客となる。

　東京都の感染者が増加傾向にあることで、７月12日から緊急事態宣言が発出されることになった。それに伴っての無観客である。

　宮城県、福島県、茨城県、静岡県での競技は有観客の方針（※）で、北海道は調整中となっている。これらに地域についても、サッカーならキックオフ時間の前倒しや無観客での開催が、試合によっては検討されていくだろう。
※宮城、福島、静岡は「収容人数の50％以内で最大１万人」。茨城は一般の観客は入れず、学校から集団で観戦させる児童・生徒のみ（準々決勝以降は無観客）

　男子サッカーの日本代表は、グループリーグの舞台が東京スタジアム、埼玉スタジアム、横浜国際競技場となる。南アフリカ、メキシコ、フランスとの対戦は、お客さんのいないスタジアムで戦うわけだ。

　決勝トーナメントへ進出した場合はどうか。

　グループ１位なら茨城県のカシマスタジアム、同２位なら横浜国際競技場だ。準決勝は埼玉スタジアムとカシマスタジアム、決勝戦は横浜国際競技場が舞台となる。３位決定戦は埼玉スタジアムで行なわれる。１都３県以外での日本戦は、グループリーグを突破した場合のカシマスタジアムのみということだ。

　お客さんが入るとやっぱり違います、という声をＪリーガーから聞く。ひとりやふたりではなく、かなりの人数から聞く。

　収容人数の50パーセント以下とか５千人以下の観衆でも、声を出しての応援ができなくても、「やっぱりお客さんがいるのはありがたい」との声は大きい。声での後押しはなくとも、「拍手」は励みになり支えになり、気持ちを奮い立たせてくれるというのだ。

　東京五輪のスタジアムには、声による声援も、拍手も響かない。ホームのアドバンテージは薄い。ただ、それによって勝算が下がるということはないだろう。ベースとなる実力があってこそ、勝利は近づいてくる。

　観客のいないスタジアムは、コロナ禍でお馴染みとなった。とりわけヨーロッパでプレーする選手たちは、無観客でのリーグ戦が日常となっている。彼らにとってはむしろ、見慣れた光景と言うことができる。

　声援や拍手という外的要素がないなかでも、モチベーションを高く保つ。苦しい時間帯を耐え抜いて勝利を引き寄せることは、国内でプレーする選手にとっても例外的なことではない。無観客は勝敗を決定づける絶対的な要件ではないのだ。

　有観客か無観客かを問う以前に、東京五輪は開催そのものが問われてきた。開催へ向かっている現在も、開幕が待ち遠しいといった雰囲気には遠い。

　Ｕ―24日本代表と日本代表を指揮する森保一監督は、コロナ禍で活動を開始した昨秋から、自分たちの立場にたびたび触れてきた。「たくさんの人たちの尽力のもとでサッカーをやらせてもらっている」ことに感謝し、「大変な思いをしている方々に、少しでも勇気や元気を届けたい」というのが、どちらのチームでも合言葉となっている。

　無観客に決定したからこそ、「結果を残さなければ」という気持ちは太く強くなったはずである。チームが大切にしてきた思いをピッチ上で表現し、表彰台に立つとの目標を引き寄せてほしいのだ。