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 2016年に三鷹市下連雀の地にオープンし、素材が持つ等身大の魅力を活かした淡麗ラーメンを提供して着実に支持者を増やしてきた実力店『中華そば向日葵』。同店は、ラーメン激戦区である三鷹エリアにおいて、女性店主(大橋純子氏)がラーメンの味から店の経営までの全てを取り仕切る店舗としても有名です。

 そして今回、純子氏のご主人・大橋昭彦氏が、満を持して『麺屋YAMATO』をオープンさせました。これがラーメン好きの間で話題にならないはずがなく、2021年4月時点で、多くのラーメンマニアの方々がすでに足を運んでいる状況です。

店舗の場所は、京王井の頭線・三鷹台駅から徒歩3分弱の好立地

 まずは、『麺屋YAMATO』がオープンした経緯から。店主・昭彦氏は、板前のご出身。2011年から三鷹台で居酒屋『SAKABA YAMATO』を経営していましたが、新型コロナの影響により2020年4月に同店を休業。5~7月までその居酒屋を間借りして『中華そば向日葵beyond』を期間限定で営業した後、2021年1月、ラーメン専門店としてオープンさせたのが、『麺屋YAMATO』です。

「うちは『中華そば向日葵』の2号店ですが、自分が中心となって、妻と相談しながら提供するラーメンの味を決めています。厨房を仕切っているのも自分なので、屋号に『向日葵』の名は冠していません」と店主。

 つまり、『麺屋YAMATO』は、『向日葵』のラーメンのクオリティを確保しながらも、『向日葵』とは異なるタイプのラーメンを提供する新店だと認識できます。私もその情報を聞きつけ、さっそく同店へと足を運んできました。

オープン前から情報がラーメン好きの間で流れ、いち早く店へと足を運んだマニアによる好評価が世間一般へと流布。それに、地元の方々によるリピート訪問が加わり、現在へと至る

 店頭に到着すると、1月18日のオープンから、まだそれほどの月日が経過していないにもかかわらず、すでに店前には長蛇の列が連なる人気ぶり。訪問客の構成は、ラーメンマニアのみならず様々。中には小さなお子様連れのファミリー客も見受けられ、地元客からもあまねく認知されていることが分かります。

優しさの中にこだわりが垣間見える「醤油らぁ麺」

「醤油らぁ麺」800円

 現在、同店が提供するラーメンは、3種のレギュラーメニュー(「醤油らぁ麺」「塩らぁ麺」「担々麺」)と、曜日(現在は木曜)限定メニューの計4種類。今回いただいたのは、「醤油らぁ麺」です。

 スープの根幹を形成する出汁は、各種素材の持ち味を最大限まで引き出したもの。寸胴の状態を絶え間なくチェックし、煮込み時間、炊き込む温度をきめ細やかに調整しながら、鳥取産の大山鶏を主体とした動物系出汁と、羅臼昆布と4種類(鮭・鮪・鯖・鰹)の節を用いた魚介出汁の両者を、バランス良く掛け合わせて作ります。

 目指すは、「老若男女の区別なく舌鼓を打つことができる、毎日食べても飽きない優しい味」(店主談)。実際にいただいてみると、その言葉が誇張ではないことが実感できます。卓上に丼が供された瞬間から、各種素材から放たれる芳醇な風味が鼻腔を心地良くくすぐる会心の出来映え。

醤油ダレの深いコクと、出汁の旨みのバランスが最高

 宙を舞う艶やかな香りに酔いしれながらレンゲでスープをひと口啜ると、醤油ダレの深いコクと、出汁を構成する各種素材のうま味とが手を握り、せめぎ合いながら味蕾を伝い、味覚中枢にじわりと浸透していきます。

 出汁と合わせるカエシにも手抜かりはありません。「食感が重くなり過ぎないように細心の注意を払いつつも、素材の味を極限まで引き出す」と店主が言うように、醤油ダレは、3種類の醤油をそれぞれの特性を見極めた上で折り重ねてあり、柔和な口当たりと複層的なうま味を兼ね備えた味わいです。

 すすればすするほどに、節系素材の和風味が明確に像を結び始め、輻輳(ふくそう)する味わい。鶏と節の両者が、昆布から放散されるグルタミン酸を媒介として、確固たるうま味のトライアングルを形成する構成は、まさに盤石のひと言。作り手の研鑽の跡が目に見えるような完成度の高さに、思わず感嘆のため息がこぼれます。

 麺もまた、店主の試行錯誤のたまもの。注文を受けるたびに丹念に手揉みを施した上で提供される自家製麺は、「このスープにしてこの麺あり」の傑作です。

「手揉みはひと手間かかりますが、それによって、麺とスープとの相性が格段に向上しました。どこか懐かしさが感じられるような雰囲気も、上手く演出できたような気がします」と店主。

 箸で持ち上げるたびに国産小麦の華やかな香りがそよぎ、多幸感に包まれます。無我夢中で食べ進める内に、いつの間にか丼が空っぽになっていました。

あまりの美味しさに2杯目をオーダー。こちらは「特製醤油らぁ麺」1100円

 少し奮発して「特製醤油らぁ麺」をオーダーすれば、それぞれ全く異なる仕込み方で作った4種類のチャーシューが堪能できます。味玉も、黄身の色が濃く味わい豊潤なものを厳選。トッピングの1つひとつにも、店主のこだわりが光ります。

 店内は、席の間隔も空けて、コロナ対策も万全。ぜひ時間を見繕って足を運ぶことをお勧めします。

店主(大橋昭彦氏)のプロフィール

・都内のビッグネーム『中華そば向日葵』を切り盛りする大橋純子氏は、店主の妻。板前修業を経て、2011年に三鷹台に居酒屋『SAKABA YAMATO』をオープン。9年間かけて地元の人気店へと育て上げた。
・コロナ禍を契機に、2020年5~7月まで、居酒屋の間借り営業(『中華そば向日葵beyond』)でラーメンの提供を開始。その時に提供していた1杯をブラッシュアップしたのが、『麺屋YAMATO』のラーメン。
・1杯の満足度を上げてくれるラーメンの重要な構成要素として、トッピングにも、スープや麺と同等の手間ひまを掛けるのが、同店の特長。「トッピングは、ラーメンという食べ物を素晴らしいご馳走に変えてくれる」というのが、店主の信条。
・「10年先も20年先も、数多くのお客様に足を運んでいただけるようなお店にしていきたいですね」と、抱負を語る。

●SHOP INFO

店名:麺屋YAMATO (めんややまと)

住:東京都三鷹市井の頭2-15-8
TEL:0422-47-1155
営:11:30~14:30、18:00~21:00、水曜11:30~14:30
休:日曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。