さまざまな人が利用する多目的トイレ

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 ビルや店舗にある「多目的トイレ」は車いすを使う障害者や高齢者を中心にさまざまな人が利用する施設ですが、国土交通省は「多目的」「多機能」といった名称を表示しないよう、ガイドラインを改正する予定です。なぜでしょうか。国交省住宅局建築指導課の担当者に聞きました。

多機能過ぎて、利用者が増え…

Q.「多目的トイレ」、あるいは「多機能トイレ」は本来、どのような「目的」「機能」を想定しているのでしょうか。

担当者「障害のある人や高齢者で車いすを使用している人に利用してもらうのが元々の想定ですが、現在の多機能トイレはオストメイト(人工の肛門やぼうこうを着けている人)や乳幼児連れの人など、さまざまな人が利用するための機能を備えたものが増えています。ただ、多機能過ぎて利用者が増え、混雑しているトイレもあるのが現状です」

Q.どのような法令に基づいて設置されているのでしょうか。

担当者「『高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律』、いわゆる『バリアフリー法』の施行令14条に『車椅子使用者用便房』として記載があり、建物の規模や用途によって、設置の義務や努力義務が定められています。

2003年に国交省が発行した、建築物のバリアフリー設計のガイドラインである『高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準』では『多機能便房』として、車いす使用者だけでなく、オストメイト、乳幼児連れの人も使うことを想定するよう求めています」

Q.なぜ、「多目的」「多機能」といった名称を表示しないようにするのでしょうか。

担当者「例えば、百貨店の多機能トイレは高齢者や障害のある車いす使用者もご利用になりますが、乳幼児連れの人を対象に、ベビーカーごと入れるようにしているケースもあります。施設によっては『みんなのトイレ』などとして、誰でも使えますということを強調しているケースもあります。いろいろな人が利用して非常に混雑し、そのトイレしか使えない車いすの人が長時間待つということが増えてきたのです。

2017年3月にガイドラインを改正した際、機能の分散化、具体的には車いす使用者用の設備、オストメイト用設備、乳幼児連れの人用の設備など、それぞれをトイレの中で分散化することを推奨しました。例えば、おむつ替え用のベビーベッドを一般用トイレの方に配置換えしてもらうといった方法です。

しかし、『多機能トイレ』『多目的トイレ』といった名称のために、一般のトイレを使える人が多機能トイレを長時間使用することが相次ぎ、車いすの人が長時間待たされることがあるという状態は解消できませんでした。

そのため、今回のガイドライン改正案では『多機能』『多目的』といった、誰でも使用できるようなネーミングを避けるよう明記しています。その上で、想定している利用者、車いす使用者やオストメイトなどをピクトグラム(絵文字)で表示することを例示しました。改正によって、車いす使用者など本当に必要とする人が使いやすいトイレになることを目指しています」

Q.ガイドラインはいつ改正されるのでしょうか。

担当者「パブリックコメント(意見公募)が3月1日に終わったので、反映すべきことを検討して、3月中には改正したガイドラインを公表する予定です」