赤べこ。写真はイメージです(Wdqhさん撮影、Wikimedia Commonsより)

2021年1月、福島物産展に赤べこを買いに行ったというツイッターユーザーによるつぶやきが話題となっている。

投稿によると、21年は丑年ということもあって赤べこが大人気になっており、「全国的な赤べこ不足」に陥っているというのだ。

「赤べこ」といえば、福島県を代表する民芸品だ。首がヒョコヒョコ動く、かわいらしい張り子の人形である。たしかに今年の干支は丑年だが、それほど人気があるのだろうか。

Jタウンネット記者は、東京・日本橋にある福島県アンテナショップに電話で問い合わせてみた。「赤べこが品切れというのは、いつ頃からですか?」と聞くと、

「昨年12月からずっとです。入荷するたびに、即完売といった状況が続いています」

と担当者は苦笑しながら答えた。そもそも手作りなので、入荷する数が限られている。入荷した数少ない商品を店に並べると、飛ぶように売れてしまうそうだ。

「もちろん例年、人気商品の一つなのですが、今年はちょっと別格です。丑年ということもあるでしょうが、実は他にも理由があります」

アンテナショップ担当者は次のように話した。それは......?

赤べこ伝説発祥の地・柳津町に電話で聞いてみた


赤べこ(画像はイメージ)

「赤べこは、疫病終息祈願に効果がある、と伝えられています」

福島県アンテナショップ担当者の話によると、福島県西部に位置する柳津(やないづ)町にある円蔵寺という臨済宗の寺院に、赤べこの伝説が残っているという。柳津町は新潟県との県境に近い只見川沿いの町である。

Jタウンネット記者は、柳津町の観光協会に電話で取材した。

「赤べこ伝説の発祥は、柳津町が発祥とされています。今から400年ほど前、会津地方を大地震が襲い、多くの被害があったそうです。その後、再建に当たって、赤毛の牛の大群が現れ、材木運びを手伝ってくれたという伝説が残されています」

赤べこ伝説発祥は柳津町の円蔵寺であることは間違いないようだが、張り子人形の赤べこは、会津若松の城主・蒲生氏が関西から職人を呼び寄せ、奨励したことがきっかけではないかという説があるようだ。

ところで、「赤べこには厄除けのご利益があるって、本当でしょうか?」 Jタウンネット記者の問いに、柳津観光協会の担当者はこう答えた。

「古来より、赤い色は病魔を払うと考えられてきました。江戸時代になると、病気を引き起こす『疱神』は赤を好むことから、赤で『疱神』をもてなし、病気を軽く済ませてもらう、俗に『赤もの』と呼ばれ、病人の病を背負うと信じられてきました。
赤べこ張子には 黒い模様が描かれています。これは『疱瘡』(天然痘)を表したものです。その当時、疱瘡は死に至る危険な病気でした。特に幼い子がかかると死亡率が高かったと言われています。この疱瘡に子供たちがかからないように願いを込めて、赤べこが作られてきたようですね」

天然痘という疫病退散を祈願して作り続けられたのが、赤べこだったのだ。こんな背景から、新型コロナウイルス終息にも、あるいはご利益があるかもしれない、と人気が出たようだ。

ちなみに現在は、柳津町でも、会津若松市でも、「赤べこの入手は困難でしょう」とのこと。

円蔵寺では、21年1月1日から22年12月31日まで「丑寅まつり」が開催されている。丑年と寅年に開かれる、12年に1度の一大イベントだという。春になったら、赤べこのルーツを訪ねる旅もいいかもしれない。そのころになったら、赤べこ入手も可能になっているに違いない。

(1月14日16時20分追記)記事初出時、一部表記に誤りがあったため修正しました。