「筋トレさえやれば本当に体脂肪は減るのか」についてを中野氏が指南

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連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」

 忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソン向けの健康増進や体作りのアドバイスを送る。今回は「筋トレさえやれば本当に体脂肪は減るのか」について。

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筋トレを続けているのに筋肉量が増えない」「効果を感じられない」。これらは、講習会やイベントで質問を募集すると、多く寄せられる悩みの一つです。特に女性から聞かれることが多く、「そもそも筋トレさえやれば、本当に体脂肪は減っていくの?」と、皆、不安を口にされます。

 筋トレで得られる最大の効果は、筋肉量が増えることです。その点から言うと、答えは「イエス」。筋トレを続けて筋肉量が増えれば、体脂肪は本当に減っていきます。

 筋肉量が1kg増えると、もれなく基礎代謝量が50kcal程度増えます。2kg増えれば約100kcal。これは茶碗約半分のご飯の量に相当します。つまり、食事の量を減らさなくても筋肉量が2kg増えるだけで、1日100kcalのエネルギーが、勝手に使われる。つまり、立っているだけ、座っているだけ、寝ているだけでも、筋肉量が少なかった頃より、体脂肪がつきにくくなります。

 反対に、今より筋肉量が2kg減ったとしたら、自ら筋肉を動かし、有酸素運動などで消費しないと、日々、余った100kcal分のエネルギーは、体脂肪として蓄積されます。ですから体脂肪を減らしたいと思うのであれば、筋トレをして筋肉量を増やすことが、最も効率的です。
 
 ただし、すでに体に蓄積した体脂肪は、筋トレ中にどんどん減っていくわけではありません。次に大事なのは、筋肉を増やすだけでなく「動かす」ことです。

 この際も、筋肉量の少ないままウォーキングなどの有酸素運動をするより、筋トレで筋肉をつけて運動するほうが、体はエネルギーをたくさん使い、体脂肪の燃焼率は高くなります。ですから、筋トレをやるほうが間違いなく「お得」なのです。

 また、一つ覚えておいてほしいのは、「筋トレだけでは筋肉は作られない」点です。

 筋肉を作るためには、筋トレによる刺激だけでなく、筋肉の素となるエネルギーや栄養素が必要です。ここで迷宮入りしやすいのが、「痩せたいから筋トレをしたい」人。

筋トレはしているのに、筋肉がつかない」という方の話をよくよく聞くと「ダイエットのための筋トレだから」と、厳しい食事制限を行っていたり、摂取カロリーをかなり抑えていたりする傾向があります。すると、筋肉の「材料」が体に入ってこないため、トレーニングをしても筋肉量が増えない、となるのです。

筋肉量を増やすためには「タンパク質と糖質」の両方が必要

 特に、制限しがちなのが炭水化物。

 今や「筋肉量を増やすにはタンパク質を摂らないとダメ」ということは、多くの方が知っています。一方、炭水化物は「体脂肪になるから」と敬遠されがち。この記事を読んでいる方のなかにも「タンパク質は摂るけれど炭水化物は抜く」食事を、実践されている方は多いのではないでしょうか。

 しかし、筋肉量を増やすためには、「タンパク質と糖質」の両方が必要です。

 炭水化物をちゃんと摂らないと、体内で「糖新生」という現象が起きます。これは、糖質が足りないとタンパク質を分解することでエネルギーを生み出す、というシステム。糖新生が起こると、せっかく筋トレをしても、筋肉が作られないどころか筋肉量が減ってしまいます。

 これを言うと「耳にタコができる」と言われそうですが、筋肉を作るにも結局は、「バランスのよい食事」を摂ることが大切です。

 バランスのよい食事は、ポイントさえ押さえれば簡単に実践できます。ご飯は茶碗1杯分(糖質)、メインのおかずは手のひらと同じぐらいの大きさと厚みの魚か肉(タンパク質)。これに1品、野菜のおかずを添えればOK。野菜はおひたしでもサラダでも、具沢山の味噌汁でもいい。この3品を揃えるだけで、勝手に「筋トレの成果が出る、そしてダイエットにもなるバランスのよい食事」の完成です。

 さらに、間食やデザートに1日1回、果物とヨーグルトを加えれば完璧。ちなみにこの「ご飯+一汁一菜」は私自身も実践しています。以前、この連載でも詳しく紹介していますので、興味のある方はぜひ、そちらも参考にしてください。

 逆にNGの食事は、摂取カロリー量ばかりを気にして、野菜と果物ばかり食べ、たんぱく質はプロテインで摂る、というパターン。プロテインは基本、補助食品として考えてください。肉や魚を食べるからこそ、たんぱく質以外の栄養素も摂ることができ、バランスが整うのです。

 厳密に言えば、「筋トレだけ」では体脂肪は減りませんが、体脂肪を減らすためには筋トレは欠かせません。最初の3か月はしっかり筋トレを行い、同時にバランスのよい食事を摂る。そして、筋肉量が上がったところで、さらに有酸素運動をすれば、確実に体脂肪は減っていきますよ。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

中野ジェームズ修一
1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。