渋谷WWWにてアルバムレコ発ツアーを開催したDJ後藤まりこ(Photo by  朝岡英輔)

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DJ後藤まりこが2020年2月29日(土)、5年ぶりにリリースした新アルバム『ゲンズブールに愛されて』のレコ発ツアー〈Je taime, mon amour Tour 2020〉の東京公演を渋谷WWWにて開催した。本記事では、渋谷の地下で熱狂の渦を巻き起こしたライブの様子をレポートする。なお、本公演はYouTubeで生配信された。

鬱々とした空気が日本に広がっている。2020年2月29日(土)、日本ではコロナウイルスが漠然とした不安とともに蔓延。さらに追い討ちをかけるように、人に希望を見せるはずのライブやイベントが中止に追いやられている。そんな空気の中、開催された本公演。「不要不急の外出は避けろ」という政府からのお達しもあり、希望者を対象にチケットの払い戻しは受け付けられた。しかし、それでも来場の必要に駆られた多数の観客が渋谷WWWを埋めた。

DJ後藤まりこは、「生」を体現するアーティストである。時には、ステージのセットから飛び降り死にそうになりながら、生の限りを尽くし叫んできた。今日はその叫びがこの空気をどう揺らすのか、期待に胸を膨らませ開演を待った。

18時10分、待ちきれぬ観客から「DJ!」コールが巻き起こる中、客電が落ちると、新アルバムの1曲目「Loved by Gainsbourg.」を思わせるSEが流れ、後藤が登場。「DJ後藤まりこです。よろしくお願いします! 渋谷WWW遊びましょう!」と告げると「真冬の甲子園」へ。バイオレンスなビートの上で叫ぶ彼女。観客前の柵上に立つとそのままダイブでフロア中段へ。会場には風船や紙吹雪まで飛び交い、熱狂が轟々と渦巻き始めた。


Photo by 宇佐美亮

この日のライブは、彼女の中でも演出に特化したライブだったように感じた。常に、ステージを写した映像と様々なイメージが歪んだミックスで混ざり合うVJが流れ、ゲストのみてぃふぉとセイちゃんの2人が後藤の横でコールアンドレスポンスのフリップなどを持ちながら観客を煽る。後藤の破壊衝動を見せつけて進むだけではなく、様々な演出を組み合わせてメッセージを体現する素晴らしいステージだった。

そこから、「ONIGOROSHI」、「LSD」と進むに連れて観客の興奮度はさらにヒートアップ。「あなた方、そしてカメラの前のあなた方の全部、全部……」と言って始めたのは、アルバムの中では最初にできた原的な初期衝動による楽曲「Breeeeeak out!!!!!」。爆発的なエネルギーで会場が燃え上がる。そこから畳み掛けるように「畳 so good!!!!!」へと繋がるとフロアはもうぐちゃぐちゃだ。


Photo by RYUTARO SAITO

曲を終えると、ヒートアップした観客間で喧嘩が勃発。後藤は、それを収めながら「愛してるよ」と優しく告げ、笑ってMCをしていた。「いろんな大人が居ますね」とアコースティックギターを手に取り、「replay ATAMI」のコードで即興の弾き語りを始めると、ようやく平和なムードに落ち着く。後藤も「こんな時だからみなさま、助け合っていきましょう」と締めた。会場にたどり着いた1人1人を誰も置き去りにしない。この日は特に、そのような意識があったのではないだろうか。


Photo by RYUTARO SAITO

続く「四畳半箪笥ダンス」では、客の肩の上に立つ彼女。「愛の重さは心地いいですか。僕の重さは愛しいですか」と投げかける。生は愛しい重さを持っている。生と生のぶつかり合いを超えて、観客はさらに熱量を増していく。

フロアが狂乱する高速ビートの「heaven」から、後藤が「子供のままで聴いてください」と告げると「ねばーえんでぃんぐすとーり」へ。バックのVJでは、映像制作チーム「にんクリ」が作成したアニメーションMVも流れ、気がつけばライブも終盤。「僕は絶対誰にも殺されへんぞ」。そう言って始めた本編最後の曲は、アルバムのラスト曲「おばけ」だった。

ステージを去る彼女に贈られた拍手は、すぐにアンコールへと変わった。「DJ後藤まりこです。アンコールありがとうございます」と感謝の言葉を述べ、「春夏秋冬」を披露しMCへ。


Photo by  朝岡英輔

「僕は、平和なディストピアを作りたい。殺し合うとか、どーでもええねん。ほんまに、まじでどーでもいい。人を憎むとか、馬鹿じゃねえの? そりゃ、憎い奴おるよ。ムカつくもん、ムカつくっしょ。せやけどさ、そんなん言ってても何にもならんやん。コロナやなんや言ってるけどさ、(外に)出るやろそんなもん。もう、ええやん。みんな大人やん、ぶっちゃけ。あなた方は大人なんですよ、全部自分で選べるんですよ。だってさ、好きなもんあるんやろ? 好きなものあるってことは、それ自分で選んでるんやで。だから、ええやんそれで」

ぐちゃぐちゃのギターのチューニングを直し、「目の前にいるし、それで話早いやん。支え合って行こうよ!」と言うと、最後の楽曲は「ナイトスイマー」。アコースティックから、打ち込みのトラックへと展開する最新曲だ。電源コードが抜けたり、風船が機材の停止ボタンを押してしまったりと、結局3回この曲が披露された。3回目の頭には、「今の2回は予行練習!」と言って最後まで盛り上げていった彼女。これでもかと全力で叫ぶ彼女に、会場も今日1番の全力で応えた。全員の叫びがこの2020年2月29日の空気を大きく揺らした。


Photo by 宇佐美亮

また、本公演で5月10日(後藤の日)に東京・下北沢Flowers LoftにてDJ後藤まりこ×後藤まりこアコースティックviolence POPの公演が開催され、夏にはDJ後藤まりこ初のヨーロッパツアーが開催されること、そして後藤まりこアコースティックviolence POPが2020年冬にファーストアルバムの発売が発表された。

本記事は、ライブのエンディングに流れた映像のメッセージ(原文ママ)とともに締めようと思う。
なんだか、いろいろ大変なこといっぱいですが
大変って思い過ぎたら
余計に気持ちが大変になっちゃうから
楽しいことを考え
音楽のことを考え
日々をすこやかにおすごしください

今日この場所でこの瞬間、
5年間僕を苦しめ続けていた呪い
待ってくださっていたあなた方にかかっていた呪いは
全てキラキラになって
とけていきました

これからは
これからも
どうぞよろしくおねがいします

「呪いなど知ったこっちゃあるか」
「なんの話をしてるんすか?」「しらんがな」
って言う人はこんな僕と出会ってくれてありがとう。
僕には過去があります。
罪があります。
全てを背負うつもりです。
そのお話でした。

僕のことを昔から知ってくださってる人も、
DJ後藤まりこになってから知ってくださった方も、
できれば長い間、
あなたのそばで
僕を音楽として生かし続けてもらえたら嬉しいです。

とにかく今日この日があってよかった!
ありがとうまぢで!

本日はご来場いただきまして
誠にありがとうございました。

僕はあなた方が大好きです!!!
これからも夜露死苦!!! 歯跡!!

DJ後藤まりこ
1stアルバム『ゲンズブールに愛されて』レコ発ツアー〈Je taime, mon amour Tour 2020〉
2020年2月29日(土)東京・渋谷WWW
=セットリスト=
1. Loved by Gainsbourg.
2. 真冬の甲子園
3. ONIGOROSHI
4. LSD
5. Breeeeeak out!!!!!
6. 畳 so good!!!!!
7. replay ATAMI
8. 四畳半箪笥ダンス
9. heaven
10. ねばーえんでぃんぐすとーり
11. おばけ
EN1. 春夏秋冬
EN2. ナイトスイマー

写真:朝岡英輔、RYUTARO SAITO、宇佐美亮

<イベント情報>

DJ後藤まりこ‬‪「ゲンズブールに愛されて」リリースツアー‬
‪『Je taime, mon amour Tour 2020』‬
2020年‪3月8日(日)‬沖縄・OUT PUT
時間:open 17:00 / start 17:30
料金:料金 2,800円 未定(+1D別)
‪ゲスト:ワンチャイコネクション / HARAHELLS

U.F.O.CLUB presents "豊田道倫・後藤まりこ2マン!!!”
2020年3月15日(日)U.F.O.CLUB
時間:OPEN 18:30 / START 19:00
料金:前売 2,500円(D別) / 当日 3,000円(D別)
出演:
豊田道倫
後藤まりこアコースティックviolence POP
中川昌利 with Vaporband(OPENING ACT)
チケット予約:U.F.O.CLUB(03-5306-0240)にて前売りチケット予約受付け中

DJ後藤まりこ 公式HP:http://510mariko.com/
公式Twitter:https://twitter.com/510yavai