転職希望者を悩ませるテーマのひとつが“志望動機”。

履歴書に書くのはもちろん、面接でも必ず「なぜ弊社を志望したのですか?」という質問が飛んできます。

単に給与条件がいいからです…なんてことは言えないし、せっかくなら面接官にいい印象を与える志望動機を披露したいものですよね。

そこで今回は、志望動機の正解を探るべく、“転職のプロ”である小林毅さんのもとを直撃!

面接官の心をつかむ志望動機の伝え方から、よくある質問の受け答えの例まで、詳しく教えてもらいました。

〈聞き手=篠原舞〉


【小林毅(こばやし・たけし)】人材コンサルタント。外資系ヘッドハント会社を経て、2010年にホライズン・コンサルティング株式会社を設立。法務系人材を中心に約15年、のべ5000人のサポートをおこない、日系大手企業、ベンチャー企業、外資系企業の採用支援にも従事。2013年より厚労省認定「職業紹介責任者講習」講師として、人材紹介事業者に対する法定講習をのべ2500社に対しおこない、不健全と言われる人材業界全体のボトムアップに尽力している。著書に『転職大全』(朝日新聞出版)、『成功する転職「5%」の法則』(自由国民社)がある

面接で伝える志望動機に欠かせないのは“2つの想い”

篠原:
どんな企業の面接でも、必ず志望動機を聞かれますよね。でも、何を話すべきかいまいちわからない人が多いと思うんです。

そういう転職希望者に向けて、面接で伝えるべきことを教えてください!

小林さん:
伝えるべき大きな要素は2つあります。

まずは「自分の想い」。「私は今までこういうことをしてきて、これからはこう成長したい」ということですね。

この内容がフワっとしていると「自分の将来をあまり真剣に考えていないんだな」と思われてしまいます。

篠原:
ふむふむ。

小林さん:
そしてもうひとつは「その企業に対する想い」。これが合否を左右すると言ってもいいくらい重要です。

篠原:
「御社にどうしても入りたいんです!」というアピールのことですか?

小林さん:
簡単に言うとそうです。ただし、「入りたい」と表面的に伝えるだけでは、その想いは伝わりきらないので注意しましょう。

“企業への想い“を伝えるヒントは「IR情報」と「求人票」にあり

篠原:
では、どのように「企業への想い」を伝えるべきなんでしょうか?

小林さん:
そもそも企業が中途採用をするのは、なんらかの課題を解決する手段を求めているから。

逆にいうと、「この人なら課題を解決してくれるだろう」と思わせた人に内定が与えられるのが面接なんです。

想いを伝えるときも、そう思ってもらえるようなアピールができるといいですね。

篠原:
なるほど…! 企業が抱えている課題を察知することが大事なんですね。 肝心の課題は、どうやって見つければいいんですか?

小林さん:
1つは、その企業の「IR情報(企業が投資家に向けて発表する情報)」を見ることです。

IR情報には業績や今後の見通し、注力する事業などが事細かに書かれています。

たとえば営業職を募集している企業のIR情報に「来期は新規広告主を増やす」と書かれていたら、特に新規開拓が得意な営業が求められているとわかります。

加えて、その企業が取材されている記事なども合わせてチェックするといいでしょう。

篠原:
仕事内容もリアルにイメージできて一石二鳥ですね!

小林さん:
さらに重要なのが「求人票」。

求人票に書かれた内容は、企業が求める“理想の人物像”そのものです。書かれている内容を読み解けば、その企業の課題を察することができます。

篠原:
さらっと読み流しがちですが、求人票にはヒントが詰まっているんですね。

小林さん:
そうなんです。求人票は穴が開くくらいしっかり読みこんで、企業が抱えている課題を把握しましょう。

面接官の心をつかむ“キラーフレーズ”と、悪印象になる“NGフレーズ”

小林さん:
ここまでの話をもとに、志望動機を伝えるときに最初に使いたい“キラーフレーズ”をお教えします。

篠原:
キラーフレーズ…!

小林さん:
「求人票を拝見し、まさに私のことだと思って応募しました」

これを言えば、面接官の心を一瞬で捉えられるでしょう。



篠原:
う、うまい! 逆に「これを言うと逆効果」というNGフレーズはありますか?

小林さん:
受け身で積極性に欠けることは言わないほうがいいですね。

「言われたことは何でもやります」「御社で勉強させてください」などは、やる気がありそうに聞こえますが、面接官からすると「主体性がないんだな」「即戦力としては難しいな」と捉えられてしまうので印象はよくありません。

篠原:
あー、つい言ってしまいそう。

小林さん:
あと、使われがちなのは「御社のビジョンに共感しました」という当たり障りのないフレーズ。これも避けたほうがいいですね。面接官は聞き飽きてますから(笑)。

篠原:
就活のときに言いがちなやつですね。

小林さん:
また、今までの職歴をネガティブに語るのもダメです。

「やりたいことができなかった」とネガティブに語るよりも「ずっと興味があった分野にチャレンジしてみたい」とポジティブに変換したほうが、よっぽど好印象ですよね。

同じ内容でも言い方ひとつで印象が変わるので、なるべく前向きな言葉を使うように意識しましょう。

面接の受け答えは“ディスカッション”を意識しよう

篠原:
キラーフレーズで面接官の心をつかんだところで、次はどんな話をすればいいのでしょうか?

小林さん:
基本的に面接官はその場で採用の判断をします。

ですから短い時間で、入社後に活躍しているイメージを抱いてもらえるような話をしましょう。

篠原:
具体的には…?

小林さん:
先ほど説明した「企業の課題」についてディスカッションできるといいですね。

自分が考えた課題はあくまで仮説として、その検証を面接でするんです。やりとりが的を射ていたら、面接官も「おっ、鋭いな」と思うはず。

面接官は未来の上司になることも多いので、「この人と一緒に働きたいな」と思ってもらえる積極性のある受け答えを意識しましょう。

採用確率が高いときに聞かれる「3つの質問」

小林さん:
一緒に働く姿をリアルに想像させることに成功したら、面接官から「3つの質問」を投げかけられることがよくあります。

これらを聞かれたら、採用される確率が高いと思っていいでしょう。最後にしくじらないためにも、適切な回答例とともにお教えしますね。

篠原:
なんと! 詳しく教えてください!

小林さん:
1つ目は「いくら欲しいですか?」という、希望年収に関する質問。

これを聞かれたら、返答は「今は●●万円程度ですが、あとは御社の基準におまかせします」くらいがちょうどいいですね。

内定をもらう前にがっつくのは印象が悪いし、年収で足切りされるのも避けたい。

かといって謙遜しすぎても損をするだけなので、ここではあくまで現状だけを伝えるのがベター。もし年収を上げる交渉をしたいなら、内定獲得後に相談したほうが得策です。



篠原:
なるほど。2つ目の質問はどんな内容ですか?

小林さん:
入社時期、つまり「いつから来れますか?」ですね。

これに対する返答は「内定から1カ月〜1カ月半」が妥当。これよりも遅いと、採用が難しいと判断されてしまうこともあります。

そして最後は「ほかにどんな企業を受けていますか」です。

篠原:
それを聞かれたら、一途な姿勢を伝えるために「御社だけです」と言っておいたほうがいいんですかね?

小林さん:
いや、むしろ「同業他社も受けています」と正直に言ったほうがいいですね。

ほかを受けていると聞くと、企業側は「急がないと他企業に取られてしまうかも」と焦り、内定を出す確率が高まります。

それに「この業界に強い興味がある」という念押しにもなりますよ。

「何か質問はありますか?」に対する適切な受け答え

篠原:
3つの質問が来て、それにきちんと答えられたらもう安心ですね。

小林さん:
いや、実は最後にもう1つ難関があります。

篠原:
まだあるのか…!

小林さん:
ええ。みんなが困る質問、「何か質問はありますか?」です(笑)。

篠原:
出た! すごく困るやつ!

小林さん:
質問がない人は落とす方針の企業もあるので、なにかしら質問をするのは必須条件です。

篠原:
でも、いざ気の利いた質問をするとなると難しいんですよね…

小林さん:
困ったら、内定をもらったあとの様子を想像してみましょう。

いざ働くとなったら「同じ部署に同世代がいるのか」や「繁忙期や閑散期はあるのか」など、聞きたいことはいくらでも出てきそうじゃないですか

篠原:
たしかに! ただの志望者ではなく、実際に働くイメージをするのがポイントなんですね。

小林さん:
また、面接官自身の考えに言及するのもいいですよね。「●●さんが考える御社の課題・応募職種の難しさはなんでしょう?」みたいな。

具体的な質問をすれば、面接官から入社に前向きだと捉えてもらえますし、自分も入社後の生活が明確になって一石二鳥です。

篠原:
なるほど…!

志望動機の伝え方から面接のテクニックまで伺えたので、いざ転職するときも困らずに済みそうです!

小林さん:
よかったです。転職の対策はラクではないかもしれませんが、「これを頑張ればより理想の環境が手に入る!」と信じて頑張ってください。

転職活動に追われていると「なんとなくそれっぽければいいや」とおざなりにしがちな、志望動機。

しかし本来は、その後の面接の流れを決める大事な“つかみ”。希望の企業から内定をもらうためには、手を抜くわけにいきません。

小林さん流の“キラーフレーズ”を取り入れて、理想の転職への第一歩を踏み出してみては?

〈取材・文=篠原舞(@maichi6s)/編集=石川みく(@newfang298)〉

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