目標達成できない人が使う5つの「残念ワード」
目標達成には「行動」が大切です。具体的で続けられる「行動計画」を立てていますか?(写真:Fast&Slow/PIXTA)
皆さんの中には、年の初めに「今年の目標」を立てた人も多いのではないでしょうか。自分の思いどおりの人生を送りたい、その中で一歩ずつ目標達成していきたいというのは、誰でも共通の願いだと思います。
そして、目標達成には「行動」が大切で、それもたった1回の行動ではなく、「行動を続けること」が重要だというのも、ほとんどの人が知っているはずです。当たり前ですが、何も行動しなければ、目標に到達できませんし、その行動が定着・継続しなければ、やはり達成はおぼつきません。つまり、目標を立てたら、その次にやるべきなのは、続けられる「行動計画」を立てることなのです。
行動計画を立てた時点で勝負はついている
例えば「半年後のTOEICの試験で800点を取る」といった目標のための行動計画として、次のような計画を立てたとします。
・毎朝、単語ドリルをこなす
・寝る前に10分、スマホで英会話を聞く
これらを本当に実践できるのか、継続できるのか? 実は「行動計画を立てた時点で9割、勝負がついている」と言ってもいいでしょう。
私は企業の人材育成にITシステムを活用する仕事を長年行ってきました。大量の行動変容のデータを分析する中で、「行動計画の立て方」によって、実践度や継続度、そして目標達成度が違うことがわかってきました。
実は、目標達成を阻んでいるのは、そもそもの行動計画に「NGワード」を使ってしまっていることだったりするのです。では、具体的にどんな言葉がダメなのでしょうか? 拙著『科学的にラクして達成する技術』にも詳しく書いていますが、この記事では、「行動計画で使ってはいけない5つのNGワード」をお教えしたいと思います。もちろん、このノウハウはプライベートな「今年の目標」だけではなく、会社での目標設定などにもそのまま使えます。
まずは、比較的わかりやすい例として、3種類のNGワードを紹介しましょう。
NGワード1:頭で考えることで、行動ではないもの
例……「心がける」「意識する」「考える」「検討する」など
NGワード2:何をするのか、あいまいでわからないもの
例……「徹底する」「管理する」「向上する」「育てる」「発展させる」など
NGワード3:人や状況によって、解釈がブレるもの
例……「努力する」「励む」「踏ん張る」「理解する」など
これらの言葉が使われている行動計画は、定着しません。確実に実践されてかつ継続される行動計画とは、「誰がやっても、同じ行動を行うことになる」くらい明確な言葉で表現されている必要があります。まずは「NGワード1」の例を挙げたうえで、改善例を見てみましょう。
どのように改善すればいいのか
改善前:「明るい職場づくりを意識する」
↓
改善後:「毎週、部内のメンバーに困っていることを聞いてアドバイスをする」
「意識する」は実際の行動ではないので、実践に結び付きません。そのため、「具体的で目に見える行動」にすることが必要です。続いて、「NGワード2」の例です。
改善前:「プログラミングスキルを向上させる」
↓
改善後:「毎日100行のプログラムを書き、不具合がないかテストを行う」
「向上する」と言っても、何をするのかが客観的にわかりません。それどころか、そもそも自分自身でも何をすればいいかがわかっていないことがほとんどなのです。「NGワード3」の例も見てみましょう。
改善前:「スタッフ全員が問題意識を持つように努力する」
↓
改善後:「朝礼でスタッフ全員にお客さまの声を確認させ、問題点を伝える」
同じ言葉でも、人によって思い浮かべる基準はバラバラですし、どのレベルで、どれだけすればいいのかわかりません。そのため、ここでも具体的な基準を決めておくことが必要なのです。
このように、継続は「明確な行動」を示すことによって初めて可能となります。繰り返すように、目標を達成するためには、最初の「行動計画」が肝心です。「NGな行動計画」になるのを避けるには、行動計画の文章を見て、
・周りの人から見て、行動を実践したかどうかがわかるか
・誰がやっても、同じ行動を行うことになるか
の2点でチェックするとよいでしょう。
もう2種類、先ほどとは少し違った角度から「使ってはいけないNGワード」を解説しましょう。まずは4つ目のNGワードからです。
NGワード4:立派な言葉
例……「信頼獲得」「顧客満足」「品質向上」など
とくに企業で目標達成のための行動計画を立てると、次のような「立派な言葉」が必ず出てきます。
・「部内の信頼を獲得する」「営業での信頼獲得」
・「お客さまの満足を得る」「顧客満足を高める」
・「商品の品質を向上する」「サービス面での品質向上に努める」
すべてもっともそうな「立派な言葉」でありすばらしいですが、残念ながら目標達成のために有効な行動が実践されることはありません。
「部内の信頼を獲得する」とは、いったい部内で何をやろうというのでしょうか?
「お客さまの満足を得る」とは、いったいどんなサービスを行うのでしょうか?
「商品の品質を向上する」とは、いったいどんな改良を商品に施すのでしょうか?
発案した本人ですらわかっていないことも
企業内では、こうした「立派な言葉」が数多く飛び交っています。いかにも道理のように聞こえるので、誰もが納得してしまいやすいのですが、実は「立派な言葉」は行動計画としては「あいまいな言葉」なので、具体的に何をするのかが見えてこないのです。
ここでも、発案した本人ですら何をするかわかっていないことがあるので、目標達成に向けて行動が続かないのは当然です。もっと具体的にする必要があります。
私はよく「小学生でもわかる簡単な言葉を使いましょう」と言います。もっともそうな立派な言葉より、誰でもわかる簡単な言葉のほうが、確実に行動に結び付きます。簡単な言葉に変えると、次のようになります。
改善前:「部内の信頼を獲得する」
↓
改善後:「毎日5分早く出勤し、部内書類の整理を行う」
改善前:「お客さまの満足を得る」
↓
改善後:「お問い合わせへのメール返信を1時間以内に行う」
改善前:「商品の品質を向上する」
↓
改善後:「出荷するときに、再度、不具合がないか確認する」
これで行動が明確でわかりやすくなりました。具体的でわかりやすいということは、継続しやすいだけでなく改善もしやすいということ。自分で「効果があったのか、そうでないのか」を判定できるので、行動改善のアイデアも浮かびやすくなります。
最後に、注意すべき5番目のNGワードとして、「カタカナ言葉」があります。具体例も一緒に挙げておきましょう。
NGワード5:定義が不明確なカタカナ言葉
例……「コミュニケーション」「ソリューション」「チームワーク」など
・コミュニケーションを活性化する
・課題をソリューションする
・チームワークを発揮する
コミュニケーションはいったい何を行うの?
このようなカタカナを使った行動計画も、実際に何を行うのかは不明瞭です。
「コミュニケーション」とはいったい何を行うことなのでしょう?
「ソリューション」って何をすることでしょうか?
「チームワーク」とは何を表しているのでしょう?
やはりすべて不明確です。実は、難しい熟語やカタカナ言葉を使っているときは、本当は意味がわかっていなかったり、あまり深く考えられていなかったりすることがほとんどです。
そのため、具体的な行動をしっかり頭で考えながら行動を計画する必要があるのです。試しに2つほど具体的な行動に変えてみると、次のようになります。
改善前:「コミュニケーションを活性化する」
↓
改善後:「お気に入りの音楽をかけて元気な声かけをする」
改善前:「チームワークを発揮する」
↓
改善後:「部会で一人ひとりの考えを発表して共感し合う時間をつくる」
以上、「5つのNGワード」を説明してきました。繰り返しですが、行動を実践できるかどうかは、行動計画を立てた時点で9割決まります。そして目標達成は「行動計画の質」によって左右されると言っても過言ではありません。ぜひこうした「残念ワード」を使うことなく、確実な行動実践につなげてください。