ウィンイングボールをギャラリースタンドに投げ込む西塚

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◇ダイキンオーキッドレディス◇最終日◇出場108名(アマ3名含む)◇ギャラリー11,007名◇晴れ,20.3℃,南東5.0m◇琉球GC/沖縄県南城市(6,376ヤード/パー72)

 20度を超す汗ばむ陽気の中で行われた国内女子ゴルフツアー開幕戦”ダイキンオーキッドレディス”最終日。勝利の女神は、プロ入り12年目の苦労人・西塚美希世(34=名神栗東CC)に微笑んだ。2位には1打差で横峯さくら(20=サニーヘルス)、大山志保(28=オンワード)、呂雅惠(30=ゴルフ5)の3人が続く。地元期待の諸見里しのぶ(19=キャノン)は首位と7打差の15位タイと沈んだ。

「本当に私でいいの?」

 2位に2打差をつけて迎えた18番ロング。西塚は無理に2オンは狙わず、7Iでピン手前50yにレイアップする。そこからサンドウェッジできっちりと2mに寄せると、勝負の行方はほぼ決定した。バーディパットこそカップに蹴られたが、残りは10cm。「本当に私でいいの?」プロ入り12年目にして初めて迎える瞬間に、西塚は信じられない思いだった。

 3位スタートの最終日、16番までに4つスコアを伸ばして9アンダーとすると、2位に3打差をつけ単独首位に立っていた。「ちょっと喜んじゃいましたね。」リーダーズボードで自分の順位を確認した直後の17番では、3パットでボギーを叩いた。「でも、それでまた気を引き締めました。」

 この大会に入る前、西塚は一冊の本を買っていた。その本に書かれていた「いつも笑顔で、いつもありがとうの気持ちを持っていれば、必ず幸せになれる」という言葉を胸にしまっていた西塚は、ピンチの時も”ありがとう”、ボギーを打っても”ありがとう”という心境で、終始リラックスしてプレーが出来たと告白した。

 「ショットはそんなに良くなかったです。優勝は『本当にごめんなさい』って感じでしたが、でも最高に嬉しいです。」

 若手が台頭する女子ゴルフ界で、34歳のベテランは危機感の中にいた。2002年に結婚した旦那からも「早く優勝して子供が欲しい」と言われていた。「でも、悔いが残らないようにしたいじゃないですか。」長い長い苦労の時期に、瞳の奥に閉じ込めてきた涙が、優勝を決めた18番グリーンで、ほんの少しだけ、恥ずかしそうに輝いた。