ラグビーの国内リーグ『トップリーグ』は、企業の色がはっきりと見える。ほとんどすべてのチームは親会社に支えられており、バックスタンドを中心に社員(とおぼしき人たち)の観戦率が高い。福利厚生の枠組みで行なわれている側面があり、「大人が観るスポーツ」の装いが強い。

 プロ化も検討されているが、来年1月開幕のリーグ戦はこれまでと同じように行なわれる。そして、ラグビーW杯直後の開催となる今回のリーグ戦は、ラグビー界の将来を左右するものとなる。W杯でラグビーに興味を持った人たちを、ここで固定層へ変えていきたいところだ。

 スポーツ観戦は「参加型」になっている。自分や自分の家族が試合の一部分に関わることで、そのスポーツやチームへの帰属意識が生まれていく。

 ラグビーW杯では、試合前の選手入場で子どもたちが活躍した。対戦する両国の旗を持って入場する、キャプテンと手をつないで入場する、ボールを主審に手渡す、といった役割を子どもたちが演じていた。ボールパーソンは地元の高校生が務めていた。

 ラグビーW杯は「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」のキャッチコピーのもとで開催された。数十年後に再び日本にラグビーW杯がやってきて、「一生に一度」でなくなったとしても、大会に関わったことどもたちとその家族にとって、2019年の初秋は忘れ得ぬ思い出の季節になったことだろう。

 同じことを、トップリーグでもできないものだろうか。

 ラグビー選手の凄さを感じてもらうには、彼らの身体の厚みを目の当たりにしてもらうのが一番シンプルで分かりやすい。フォワードの選手はもちろん、バックスの選手にも驚かされる。

 大人でも目を見張るのだ。子どもたちはビックリするだろう。「すごい!」という思いが沸き上がり、それがラグビーというスポーツへの興味を深めていくことにつながっていく期待が持てる。

 エスコートキッズやフラッグペアラーは、Jリーグやサッカー日本代表で定番の「参加型」イベントだ。時間にすればほんの数分でも、選手と同じピッチに立ち、観衆で埋まったスタンドを見上げるのはかけがえのない体験になる。「いつか自分も、選手としてこのピッチに立ちたい」との思いを胸に刻む子どもたちが、きっと出てくるはずだ。

 新シーズンのトップリーグには、今回のラグビーW杯で知名度をあげた日本代表選手だけでなく、各国の代表選手も参戦する。ニュージーランド代表からはキャプテンのキーラン・リード、ブロディー・レタリック、サミュエル・ホワイトロックらが参戦する。リードは13年の年間最優秀選手で、レタリックは14年の年間最優秀選手だ。ちなみに、05年、12年、15年の年間最優秀選手に輝いた元ニュージーランド代表のダン・カーターは、昨シーズンから神戸製鋼でプレーしている。

 W杯プレーヤーのトップリーグ参戦は、ニュージーランド代表だけではない。オーストラリア代表やサモア代表からも、ビッグネームがやってくる。

 世界的スター選手がプレーするリーグとしては、Jリーグをはっきりと上回る豪華さがある。今回のラグビーW杯には出場しなかったものの、国際舞台で活躍してきた選手も数多い。リーグ全体のレベルも担保されていくだろう。

 ラグビーが盛り上がれば、サッカー界の刺激にもなる。Bリーグの成功も、サッカーやラグビー関係者に新たなモデルを提供している。「どちらか一方」とか「どれかひとつ」ではなくスポーツ界全体が活況を呈していくことで、それぞれの競技のレベルが上がっていき、競技の枠をこえて選手がお互いを高めていく。そうした循環をさらに加速させていくためにも、トップリーグの新シーズンはスポーツ界全体にとって重要になると思うのだ。