大型模型船を用いた水槽試験場も18年に完成した。自前の試験場のため、注文を受けてからの船型設計を“順番待ち”することなく直ちに取りかかれる強みがある。生産能力と自前施設の試験場、分業化・同型船連続建造ノウハウを生かし、国際競争下で勝ち残りを図る考えだ。

 同型船建造では瀬戸内エリアに10工場・建造ドック12本を持つ強みを活用、複数の工場で同型の船舶を並行して建造する。工場間でコストが比較できるため、自ずと合理化努力が進む。ノウハウも各工場で蓄積され、将来もう一段のコスト削減ができるとの読みもある。

 溶接ロボットや3Dモデルの活用にも意欲的だ。ロボットでは小型部材を一面に並べて溶接する「平板部材用溶接ロボット」、小型部材を立体的に組み上げて溶接する「立体部材用溶接ロボット」を欧州メーカーと共同で開発中。3Dモデルとの連動で、部材をセットしなくても図面だけで読み込めるロボットも現場に導入し、競争力を高める考えだ。

 「海外に出てドックを建造しても供給過剰になるだけ。日本のドックを活用するため、外国人に来てもらうことも必要。今後は外国人を使うノウハウが求められるだろう」と檜垣社長は指摘する。

 安い人件費や調達コストを求めて中国企業と手を組む造船大手もいる中、国内建造派の今治造船にかかる期待は大きい。

(取材・嶋田歩)