-近年、オープンイノベーションに注目が集まっています。その取り組みの重要性についてはいかがでしょうか。
 「イノベーションは使ってもらわないと意味がありません。実用化に結びつけるにはスピードが命です。青色LEDの開発には30年もかかってしまいました。もし米国のシリコンバレーで実用化までに30年もかかっていたら使ってもらえないでしょう。投資のサイクルはせいぜい10年で、ここに開発サイクルを合わせられなければ投資してもらえません。国のプロジェクトに参加するのは仲間ばかりではなく、いろいろな段階にある研究開発に競合となる民間が参加しています。国の支援があるため研究成果をオープンにしやすく、国全体で研究開発が進むと思います」

一体となってスピード感を
 -名古屋大学での具体的な取り組みを教えてください。
 「私の分野で言えば、半導体からトランジスタやレーザーなどのデバイス、それを回路に組み込んだモジュール、さらにその上のシステムと上位の階層に組み込んでいく必要があります。それぞれの階層に研究開発のプレーヤーがおり、こうしたプレーヤーが同じ建物の中で一緒に研究開発を行うことがオープンイノベーションにつながると考えています。こうした取り組みを続けることで研究から事業化までの期間を青色LEDの実用化までにかかった期間の3分の1にあたる10年に縮め、オープンイノベーションを加速させたいと思っています」

 -そのための具体的な取り組みとして新たな拠点を設立されました。
 「青色LEDの材料である窒化ガリウムの結晶成長から評価、デバイス試作、システム応用までを一気通貫で行う実験拠点『エネルギー変換エレクトロニクス実験施設(C―TEFs)』と、研究拠点『エネルギー変換エレクトロニクス研究館(C―TECs)』が18年から始動しています」

 「これら施設では、窒化ガリウムの共通技術の開発に取り組み、出口戦略として参画企業に事業化を目指してもらいます。さらに名大を中心に企業や大学、国立研究開発法人など72機関が参加してGaN研究コンソーシアムという組織が立ち上がっています。また海外機関から『顧客として技術の種(シーズ)があれば買いたい』という申し出があります。今後は海外との機関との連携もあるかも知れません」

「工学」の考え、広めたい
 -日本の大学では、新しいモノを作り製品化するという『工学』の考えが根付いていないと指摘していますね。
 「日本の大学の教員の考えとして、日本の工学は米国ではいわゆる理学に相当する場合が多いです。学問に引きこもり、本来の工学のセンスが欠けているのではないかと思います。こうした問題を解決する上でもオープンイノベーションの効用は大きいですね。産学連携の良いところは企業の人が大学に来て一緒に研究開発を進める点です。大学は企業の人の動きを、一方で企業の人は大学の若い学生を身近で見られるため、互いの存在が刺激になります。名大を中心とする産学連携拠点で研究と教育との両輪の取り組みをきっかけに、『工学』の考え方を日本全体に広げたいと思っています」