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これだけ社会問題化しても、パワハラ被害が後を絶ちません。弁護士ドットコムには多くの相談が寄せられていますが、ある人が「治療費、薬代などはパワハラした上司に支払ってもらえるのでしょうか」と質問をしていました。

この相談者によれば、パワハラにより精神的なダメージを負ったため、通院しているそうです。上司はパワハラの事実を認め、謝罪したとのこと。

このような場合、治療費を上司個人に請求できるのでしょうか。労働問題に詳しい竹之内洋人弁護士に聞きました。

●「支払義務があると断言できない」

「パワハラは、その上司の行為である以上、それによって相談者が損害を受けた場合は、上司に損害賠償を請求することができます。パワハラによりメンタルの治療が必要になったのであれば、当然損害賠償の範囲に含まれるので、治療費を請求できます。

このように理屈上は簡単に答えが出ます。ただし、このケースで仮に上司が謝罪はしても治療費の支払を拒んだ場合には、当然に支払義務があると断言はできないです」

ーーなぜでしょうか

「まずはその行為に違法性がなければ損害賠償義務は発生しません。相談者がパワハラだと思うだけでなく、第三者的にみても適正な業務の範囲を超えた叱責であることが前提となります。

つぎに、外的な力が加わりケガをした場合と対比して考えてみてほしいのですが、精神疾患の場合は、そもそも疾患が発症しているのかどうか、また、その原因がパワハラによるものなのかどうかが、外から見ても必ずしも明確には分からないという問題があります。

上司が支払義務を争った場合は、被害者側で裁判官を納得させることのできる医師の診断を提示する必要があります」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
竹之内 洋人(たけのうち・ひろと)弁護士
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員
事務所名:公園通り法律事務所
事務所URL:http://www.pslaw.jp/