ヒロミさん。『ウチのガヤがすみません!』『火曜サプライズ』(日本テレビ)、『東大王』(TBS)などの番組でMCを務めるなど、現在バラエティ番組で見ない日はないほどの大活躍です。そんなヒロミさんがかつて芸能界から離れ、表舞台から姿を消していたのは有名な話。しかもその期間約10年…!なぜ第一線から離れ、そして復帰することができたのか?これまでヒロミさんが大切にしてきたもの、そしてR25世代へのアドバイスをお届けします!〈聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉


ヒロミ】1965年東京都八王子生まれ。1986年、コントグループ「B-21 SPECIAL」を結成。1993年に歌手・タレントの松本伊代と結婚。2005年に加圧トレーニングジムをオープン

「内臓が一個ない。すぐ死ぬんじゃないか」生き急いでいた 20代

天野:
まずは80〜90年代、芸能界で活躍されてたころのことを教えてください!

ヒロミさん:
要はオレ、生き急いでたんだよね。18歳のころに車で交通事故おこして死にかけて、脾臓が破裂して摘出されちゃったの。

「内臓が一個ない」って思ったら、すぐ死ぬんじゃないかと思って焦っちゃったのかな。20代後半で独立して事務所つくったり、レギュラー番組を何本もやったり、とにかくめちゃくちゃ働いた。

まわりの共演者にも“本気”を求めちゃうし。

天野:
「100%やれ」と。

ヒロミさん:
いやいや、100%なんかじゃイラついてたよ。200%やれよ!ってみんなに思ってた。

ただ、最初はみんな面白がってくれるけど、何年かすると「もうちょっと丸くなったほうがいいんじゃないか」「もうちょっと大人になってもいいんじゃないか」って言われるようになったんだよね。

天野:
それができなかったのはなぜなんでしょうか?

ヒロミさん:
そうやって強がるのが“自分の味”だと思ってたからさ。「それがなくなっちゃったらオレじゃなくなっちゃうんじゃないか」って。

強めのツッコミとか言い方とか、20代から同じスタイルでやってきてると、急に「時代と合ってない」なんて言われても受け入れられないんだよね。


テレビ局の楽屋で、ちょっと聞きづらいことをツッコませていただきました…

天野:
一時期、堺正章さんに失礼な態度を取って“干された”みたいなウワサを聞くこともありましたが…

ヒロミさん:
それ、ホント面白いよね(笑)。面白がって否定しなかったらけっこう広まっちゃったんだけど。

失礼も何も、おれは堺センセイにもずっとタメ口だったし、先輩にも「おじさん(ビートたけし)」「おい、森田(タモリ)」なんて呼んでたからね。それでいい関係ができてるから大丈夫なんだよ。

天野:
そんな大御所に…かわいがられるコツとかがあるんでしょうか?

ヒロミさん:
エライ人をイジるにしても、側近の顔を見たら限界点がわかるんだよね。

本人をイジって笑いを取りながら、視界のはじっこで付き人の顔を見て、笑顔がなかったらやめとかなきゃいけない

天野:
なるほど…まわりにウケてるからいいわけじゃないと。

ヒロミさん:
あと、普段から本気でタメ口きいてるから面白いんだよ。

一時期タメ口キャラの女の子がいっぱい出たけど、もうあんまり残ってないでしょ(笑)。カメラの前でだけ無理してやってる子は、タメ口きかれてるほうも面白くないし、続かないんだよね。



40歳になるまでに、本当に楽しい遊びを覚えろ

天野:
そこから、徐々に仕事のオファーが減っていったと…。それで芸能活動をゆるやかに休止する期間に入ったんですね。

ヒロミさん:
そう。芸能界からちょっと離れて、若手の経営者のコたちと遊び始めたんだよね。

野尻くん(テイクアンドギヴ・ニーズ・野尻佳孝)、NIGOくん(A BATHING APE)、藤田くん(サイバーエージェント・藤田晋)とか…

釣りしたり、キャンプしたり、ゴルフ、サーフィンとか。ちょっとアニキ分な感じで、みんなが釣りとかにハマってくれるのがうれしくてさ。


「彼らも激務からアタマを離して休む時間を求めてたんだよね。あいつらはオレから釣りとかを習ったし、オレはあいつらから経営を学んだ」

天野:
そんな交友関係があったんですね…

ヒロミさん:
オレは、日本の男のコの成人は40歳だと思ってるんだよね。30代じゃまだ、仕事も恋愛もチャカついてるのよ(笑)

でも40歳になったら、ちゃんと自分を楽しませる“遊び”ができるようになってなきゃいけないの。40から遊びはじめたんじゃダメだから、若い起業家たちにいろんな遊びを教えてやろうと思ってさ。

自分自身、そうやって遊べたことでだいぶ助けられたとも思うしね。

「コイツのためならなんでもできる」と思える友だちとだけ付き合えばいい

天野:
交友関係が支えになったと。

ちなみにR25世代だと、「学生時代から続いてた交友関係が変化してしまう」ということも多いと思うんですが、友だちと関係を続けるコツなどありますでしょうか?

ヒロミさん:
ナニ? 関係が変わっちゃってるの?

それもなんとなくわかるんだけど、友だちなんて別に、そんないっぱいいるもんじゃないよ。2、3人もいりゃ充分。

それ以上いたって意味ないよ。付き合いきれないもん。

天野:
えっ、そう言われればそうか…

ちなみに今、ヒロミさんが深い付き合いをしてる友人はいるんでしょうか?

ヒロミさん:
ノリちゃん(木梨憲武)藤井さん(藤井フミヤ)かなあ。

ノリちゃんなんて本当に、週に何回もメシ食ったり飲みに行ったり。でも「芸能界で出なくなった」とかなんだとか、そんな話ほとんどしないもんね。そうだっけ?みたいな(笑)


いい意味でめっちゃイメージ通りです

ヒロミさん:
藤井さんはツアーがあるからずっと会わないこともあるんだけど、それでも大丈夫なのね。

3年間会わなくても10年会わなくても、まったく関係が変わらないと思う

天野:
友だちとそんなに会わなかったら、何話していいかわからなくなっちゃう気がするんですが…

ヒロミさん:
それで疎遠になるならそこまでの関係だと思わない?(笑)

家族もそうだけど、「コイツのためなら何でもできる」とか「この人がどうかなってしまっても、助けようと思える」とか、お互いにそういうふうに思ってないと続かないよ。



“義理人情”は大事にしろ

天野:
その“小休止”から復活し、再び芸能界で活躍されるようになった理由は何なのでしょうか?

ヒロミさん:
うーん、それを自分で言うのは難しいんだけど(笑)。

義理人情」みたいなところはあるんじゃないの。

天野:
義理人情…

ヒロミさん:
たとえば、ちょうどSMAPが出てくるとき、中居(正広)香取(慎吾)が“バラエティ班”ってことで、『笑っていいとも!』とかに出るようになってたの。

最初は「アイドルだろ」なんてバカにしてたんだけど、収録が終わったあと「うまくいかなかった」とかいって本気で反省会してるのを見て、ほっとけなくなっちゃってさ。

天野:
あの2人にもそんな過去が。

ヒロミさん:
メシに連れていったり、「司会に必要なこと」「ゲストをどうイジればいいか」とか、いろいろアドバイスしたりしたんだよね。

それで、オレが最近またテレビに出だしたときに、中居が番組に呼んでくれたんだよ。

天野:
中居さんは今やMCとしてたくさん番組を持たれてますもんね。

ヒロミさん:
収録の合間にタバコ吸ってたら、中居が「あのころはありがとうございました。オレ、司会うまくなりましたかね?」なんて聞いてくるの。

オレも照れくさいから、「うまいどころじゃねえだろ! 紅白の司会なんかやっちゃってよお」とか茶化してたんだけど、本当は結構ジンときちゃってた(笑)

そういうヤツらが今芸能界で活躍してて、オレをあたたかく迎え入れてくれてるってのは大きいなと思うよね。


「10分ぐらい話しただけだったけど、あのときのタバコはよかったね」

明日どうなるかわからない。常に危機感を持って、想像力を働かせろ

天野:
駆け足でしたが、デビュー以降のさまざまなエピソードをありがとうございます。

そんな経験を経て、一番感じた教訓とかってありますか?

ヒロミさん:
「いつどうなるかわからない」っていう危機感を常に、自然に持つようになった。

時代に合ってない、キャラが使いづらい、なんて明日からまた言われるようになるかもしれないわけよ。

そうしたら、「ハイわかりました」って言っていつでも身を引こうと思ってる。

天野:
今の“再ブレイク状態”への未練がないんでしょうか…!?

ヒロミさん:
別にまた芸能界からいなくなって休んでいいってわけじゃないよ。でも、「いざとなったら…」っていう覚悟は持ってないといけない

さっき話に出した起業家の人たちも、「いざとなったとき」のことをいつも思ってるはずなんだよね。



ヒロミさん:
たとえばさあ、女と付き合っててさ、「別れましょ」って言われたら「ちょっと待ってよ〜」って言っちゃうじゃん

天野:
はい…

ヒロミさん:
それは付き合ってるときに、「フラれるかもしれない」っていう想像ができてないからでしょ。

「待ってよ〜」ってオレは言わないの。ジムの従業員が「辞めたい」って言ってきても、ハイそうですかってだけ。

常に先を想像して、危機感を感じていれば、何があっても「じゃあ次これやるか」って行動すればいいだけでしょ。

若いときは経験がないから難しいかもしれないけど、経験がなくても、想像力は働かせてたほうがいいね、ウン。



テレビの収録後でクタクタのはずなのに、「ナニ、友だちとどんな感じなのよ」なんて、終始アニキ口調で話を聞いてくれたヒロミさん。最後に、「若いヤツに言うならさあ…」と話してくれた内容を記して、終わりとします。「結局、今だから言えるけど、人生は長距離走だってことなんだよね。若いころは『今やらないでどうするんだ!』って気持ちばっかり。たしかに頑張る期間は必要なんだけど、『短距離走で勝負するのも、将来の自分のためなんだ』ってわかった。だから、ただ焦るだけじゃなくてちゃんと休んで遊んだり、いろいろやっちゃってくださいね」



〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美(@hiromi_ike)〉

ヒロミさんからのお知らせ

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