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病気の妻に代わって夫が「退職届」を提出できるのか、という相談が弁護士ドットコムに寄せられています。相談者の男性によれば、妻は「職場関係で悩んでいるようで若干ノイローゼ」になったため、退職することを決めました。しかし問題はどう申し出るか、です。

妻の体調が優れないため、「夫の私が、妻の代わりに退職届を職場へ届けに行き、社長とお話をして退職の話」をしたいと考えているそうです。

そもそも、退職の申し出に配偶者などが「代理人」となることは可能なのでしょうか。今回のようなケースでは、どのように退職することができるのでしょうか。瀧井喜博弁護士に聞きました。

●「妻の代理人として提出しても無効にならない」

ーー配偶者などが代理人となることができるのでしょうか

「退職の申し出は、労働者本人によるものでなければ、法律上の効力を生じません。しかし、妻の意思に基づくのであれば、退職の申し出を委任された代理人が行うことも可能です。夫が代理人として妻の代わりに退職届を作成し、これを提出しても、退職としての効力を生じさせることができます」

ーー夫である相談者が申し出た場合には、妻は必ず退職できるということでしょうか

「労働者本人からであれば、電話、メールなど、どのような方法でも退職の意思を会社に伝えることができます。しかし、本当に労働者本人の意思に基づくのかがわからない方法で退職を申し出られた場合、会社にとっては、後日『夫が勝手に退職の申し出をしただけで、本当は退職の意思がない』として覆されるリスクがあります。

そのため、夫が退職届を職場に届けに行く方法、あるいは、電話やメールにより退職の意思を伝える方法では、事実上、会社が退職と扱わない可能性があります」

ーーでは、どうすればよいのでしょうか

「妻本人が退職を申し出るのが難しい場合には、退職が妻の意思であることを確認できる方法をとることをおすすめします。

具体的には、妻の署名ないし押印があることです。退職届などの書面、あるいは夫への委任状を添付するとよいでしょう。このような妻の署名ないし押印がある書面は、法律上、妻の意思に基づいて作成された書面であると推定されるからです」

●労働者の意思なら、退職は必ず認められる

ーー妻の申し出を会社側が拒むことはできるのでしょうか

「労働者は、期間の定めのない雇用契約について、2週間の予告期間をおけば、会社側の意向にかかわらずいつでも解約することができます。

仮に、就業規則などでこれと異なる定めがあったとしても、使用者は、退職時期を遅らせたり、退職を認めないとすることはできません。また、雇用契約の締結時に明示された労働条件が、事実と相違した場合には、即時に解除することができますので、このような事情があれば、2週間を待たずに退職することもできます。

期間の定めのある雇用契約においても、『やむを得ない事由』がある場合には、即時に解約することができます。たとえば、病院で、病名、これによって働くことができない旨の診断をされた場合には、『やむを得ない事由』があるとして、即時に退職することができるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
瀧井 喜博(たきい・よしひろ)弁護士
「あなたの『困った』を『よかった』へ」がモットー。あらゆる「困った」の相談窓口を目指す、主に大阪で活動する人情派弁護士。平成30年11月末現在、事務所設立丸3年目で、弁護士5名、事務局7名の合計12名の法律事務所を経営している。ずば抜けて楽しい職場環境の構築、拡大を目指して、日夜奮闘中。
事務所名:瀧井総合法律事務所
事務所URL:http://takiilaw.com/