加熱式タバコ「においが少ない」のはなぜ? 紙巻きとの差、臭気判定士と「実験」してみた
マナーを守って嗜みたいタバコ。やっぱり気になるのは、ニオイの問題である。
芳香剤や香水で、ニオイを消してエチケットを守ろうとしている愛煙家の皆さんも多い。なかなか切っても切れないタバコとニオイの関係だが、ここ最近急速に普及している加熱式タバコはちょっと様子が違うらしい。
紙巻きから加熱式に切り替えた人に話を聞くと、理由として「ニオイが少ない」という点を挙げる人も少なくない。実際のところ、どれくらい違うのだろうか。今回Jタウンネットでは、ニオイのプロに「実験」を依頼した。
加熱式と紙巻き、ニオイの強さはいかほど?
そもそも、ニオイの「質」が違う
今回の実験に協力していただいたのは、消臭・脱臭を専門とする企業「共生エアテクノ」代表で、臭気判定士の資格も持つ松林宏治さん。同社では、生活の中にあふれる様々なニオイを測定し、ニオイのオペレーターとして、企業や個人店舗などの快適な空間づくりへのアドバイスや、脱臭装置の開発を行っている。
ニオイの専門家としてマルチに活躍中の松林さん
タバコ関係では喫煙室のリノベーションや改築などで、臭気を測定しては脱臭作業に携わるなどしてきた松林さん。ずばり、タバコのニオイというのは、紙巻きと加熱式で結構違うものなのだろうかと聞いてみると、
「明らかに違います。紙巻きタバコの煙のニオイを3〜4くらいとすると、加熱式タバコは1.5くらいでしょう」
との答えが。倍以上強さが違うようだが、なぜだろうか。
松林さんによれば、タバコの葉を燃やして出る紙巻きの煙には、アセトアルデヒド系の臭気成分がかなり含まれている。臭気を発する成分は大気中にさまざまなものがあるが、アセトアルデヒド系のものは人間の嗅覚でも感じやすい上に、分解されにくいという特徴がある。
そのため建物や衣服につきやすく、なかなかニオイが取れにくいというしつこさも持っている。こうした目に見えない臭気の源が、いわゆるタバコ臭としてつきまとうというわけだ。
かなりの違いがあるらしい
これに対し、種類によって違いはあるが加熱式では基本的に火を使わず、ニコチンを含んだ蒸気を吸入する。アセトアルデヒド系の臭気もほとんど含まず、有害成分や焼け焦げ臭も低減されているという。
では、実際のところ紙巻きと加熱式のニオイはどれほど違うのか、松林さんの協力のもと「数値」での算出を試みた。
データで測定
実際に煙の臭気を測定してみる。「検体」は普段から喫煙しているJタウンネット記者2人だ。1人は生粋の紙巻き派。もう1人は 高温加熱式で吸いごたえがあると言われる「glo(グロー)」と、加熱式タバコのなかでも低温加熱方式で、 「ニオイが少ない」ことを謳い文句にしている「Ploom TECH(プルーム・テック)」を気分によって吸い分けているという加熱式派だ。
まずは、紙巻きの臭気を測定。松林さん持参の測定器「ニオイセンサーPOLFA」を用い、「PF値」という指標で、単純にニオイとしての強さを測っていく(臭気の性質や成分は関係なく、強さのみを数値化できるという)。
ニオイを測定。200台は人の嗅覚ではほとんどニオイを感じないレベル
まずは、紙巻き派の記者から。吸う前の衣服のPF値は320前後で、日常生活では「何かのニオイがある」と感じる程度の臭気。しかし、タバコを一服するその煙を測ってみると......
煙の臭気、実際どれくらいの強さか?
なんと、煙の測定値は最大で664を記録。松林さん曰く、これは相当な強さで、例えるならば「夏場の腐った生ゴミと同じくらいの強さ」。1メートルほど離れたところで計測しても380を記録。これもまた、強めのニオイだ。
「衣服にも強めのニオイが」と松林さん
では、加熱式タバコの場合はどうか。今回は、プルーム・テックを使って計測してみる。「ニオイ が少ない」というその実力はいかに。
プルーム・テックで測定。紙巻きと違ってまず副流煙が出ない
プルーム・テックを吸った呼気を測ってみると、こちらは吸っている最中の状態で、口元に機械を近づけて測ってみても最大で460 。最大値だけみても紙巻きタバコの664とはかなり強さが違う。これはあくまで最大値で、ちょっと時間が経つとすぐ拡散してニオイは弱まる。
この時はカフェモカのフレーバーを使っていたので、記者(非喫煙者)も嗅いでみると、ヤニ臭さは全くなく、代わりに紅茶のようなニオイを感じた。フレーバーがなかったらほとんどニオイがしなさそうな印象すら受けた。衣服を測定してみても300〜320前後で、ほとんど非喫煙時と変わらない。
プルーム・テック吸引直後でも、吸引前とほとんど変わらない
松林さんも「紙巻きタバコと違って燃やす煙ではないので、屋内にまとわりつくヤニや、アセトアルデヒド系の強い臭気を放つ物質は出ないようです」と解説。一方、紙巻きタバコを吸った記者の方は吸い終えて10分ほど経った呼気を測ってみても340〜360という数値 を記録。同じタバコでもずいぶん違うことが数値でも理解できた。
吸い終えてしばらく経っても、ニオイは強い
今回は屋外で測定したが、屋内で試せばより強烈に紙巻きタバコの煙が残り、紙巻きと加熱式で対照的な結果になるだろうとのことである。とはいえ、屋外であってもこれだけ数字に差が出るとは、驚きだ。
非喫煙者から見るとあまり変わらないように思っていたタバコのニオイだが、かなり違うことがわかった。
タバコが環境に与える影響はニオイだけではないが、エチケットや臭気の点では同居する人や家屋への影響も、紙巻タバコより格段に小さい。多少なりとも不快なヤニ臭から解放される効果があるのは、確かと言えそうだ。