最後のW杯となったMF本田圭佑

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[7.2 ロシアW杯決勝トーナメント1回戦 日本2-3ベルギー ロストフ・ナ・ドヌ]

 今大会が最後のW杯と明言した日本代表MF本田圭佑(パチューカ)が、取材エリアで目を潤ませた場面があった。ロシアW杯開幕前日の6月13日に迎えた32歳の誕生日。奇しくもベースキャンプ地のカザンに入った日の夜に行われた誕生会のエピソードを自ら明かしたときだった。

「チームメイトから祝ってもらったときに、ちょっとだけしゃべらせてもらった」

 その内容は「このW杯が終わったあとに自分の人生が終わるとしたらどういう決断をしていくか。もちろん、人生は終わらないんだけど、終わるとしたら、どれくらいの覚悟でどういう意思決定で、どういうふうに取り組んで、どういう会話をみんなでしていくか。そういう思いでこのW杯を過ごしたい」というものだった。

 その言葉どおり、カザンでのトレーニングでは次世代の選手たちと積極的にコミュニケーションを取る光景が見られた。練習前にはMF山口蛍とDF酒井高徳のボール回しに加わり、報道陣に公開された短い練習時間の中ではMF柴崎岳と話しながらアップを行う姿がしばしば見られた。MF原口元気にはシュートを狙い続けないと得点できないぞと熱心にアドバイスを送った。原口はベルギー戦で千載一遇のチャンスをものにしてゴールを決めた。

「やれるだけやって、今言えるのは、本当に選手をみんな好きになったこと。こんなに好きになれると思わなかったくらい好きになった」

 ほんのわずかだが、本田の声は震えていた。「そういう感じで今後も人生を歩むと、いろんな人を好きになれるかなと思えるくらい」。そう落ちをつけて笑った。

「設定としてはもう人生が終わっちゃうんで、後悔したくないという気持ちだった。西野さんにもみんなにもそうやって接した。かといって、若手に過剰な情報を与えてもいけない。そんなふうにやっているうちに、(好きという)そんな感情が芽生えてきたのは新しい発見」

 かつて孤高と呼ばれ、若手には近寄りがたい存在と思われていた男が見せた人間味だった。

(取材・文 矢内由美子)


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