【質疑応答】ハリルホジッチ監督「アタッカーと中盤では違ったデュエルになる」「ジェズスは世界一のアタッカー」《国際親善試合》

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▽日本サッカー(JFA)は31日、11月に行われる国際親善試合の2試合に向けた日本代表メンバー25名を発表した。

▽ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はメンバー発表後、記者からの質問に答えた。

――長年、代表に選ばれてきた本田(圭佑)選手や香川(真司)選手、岡崎 (慎司)選手が招集外となりましたが、その理由は?

「テストするために他の選手を選んだ。今、名前が挙がった選手たちは、前回の合宿では私はあまり評価していない。彼らは自分の本来のパフォーマンスを見つけるべきだ。それぞれの選手とは色んなことを話したが、これが競争だ。こういった変更を疑問に思う人もいるだろう。

「例えばナガサワを(新たに)呼んだが、A代表でどうなるか興味が湧いた。他の選手も非常に高いパフォーマンスがあったからここにいる。私の就任1日目の会見でも言ったが、各自が戦ってA代表の席を勝ち取らなければならない。調子が良ければ名前は関係ない。ただ、皆のことはリスペクトしている。ピッチの上で判断している。チームオーガナイズ、システム、ゲームのプランなどで変わる。それから誰が戦術に合う選手かで決めることもある」

――強豪国との2試合となりますが、一番のテーマは?

「この2試合はかなり厳しい試合になるだろう。例えばブラジルの3人のアタッカーを抑えなければならない。それからドリブラー。ネイマールにジェズスにウィリアン、コウチーニョ…。小柄だが速い選手だ。リズム、方向転換、突破、全てにおいて巧い。どのように彼らを抑えるかが課題だ。中盤の選手も忘れてはいけない。フィジカル的にかなり強い選手が控えている。そこまで足は速くないが、かなりストロングだ。しっかり試合を支配してくる。組み立てもボールを奪うのも上手い。デュエルでどのように立ち向かうか、おそらく違ったタイプのデュエルになるだろう。もちろんできるだけ高い位置で奪うことが理想だが、3人のアタッカーを抑えながらとなると話が変わってくる。たとえばサンドイッチの守備、カバー、ゲームの予測、密度といってもなかなか分からないかもしれないが、そういったテーマが重要になってくる。

「それからオフェンス面。ブラジル人はゲームを読む力に長けている。例えば、背後でフリーになる動き出しもそうだ。我々は守備もしっかりするが、前回の試合のような守備はしない。もっと高い位置を取って守備をする、だが間延びしてはいけない。よりコンパクトにしていかなければ。それぞれが自分のゾーンで1人ずつ受け持たなければならない。特にブラジル戦はデュエルに激しく望んでいかなければならない」

「オフェンス面に話を戻すと、相手の背中でフリーになることが大事になるだろう。我々の中盤の3人のアタッカーの関係だ。ボールが有るか無いかでスプリントをしっかりすることもテーマの1つ。特に、いかにフリーなスペースを作り、使うかというところ。もしかしたら1人でそれを作り、使わなければいけないこともあるかもしれない。もしくは組織的にその場面を作ることも必要だ。それは考え方の話だ。阿吽の呼吸にするためにしっかりとトレーニングを積まなければならない」

「それから今までの習慣を変えなければいけない。なぜなら、我々のアタッカーのほとんどは背負ってプレーをしてしまうからだ。ジェズスやカバーニを見ると、長い時間できるだけゴールを向いている。相手のリストはここにあるが、彼らを個人的に組織的にどう対処するか。そのためのビデオも用意してある。これから選手たちに説明していく。頭で理解し、そして心で理解しなければいけない」

「ベルギーはまた違うチーム。どちらかといえばパワー系。(ロメル・)ルカク、それから(マルアン・)フェライニ、(クリスティアン・)ベンテケといった選手がいるが、ブラジル人のような爆発的なスピードはない。(エデン・)アザールや(ドリエス・)メルテンスもいる。オフサイドギリギリで仕掛けてくるし、ベルギーはサイドをよく使う。右サイドバックの(トーマス・)ムニエや(ヤニク・フェレイラ=)カラスコらをどうやってブロックしていくか」

「全く違う2つのタイプのチームとの対戦。ただ、しっかり守備してボールを奪ったら得点を取りに行く。コンプレックスなしにね。いろいろ見て映像も準備している。頭の中でも準備できている。本当にこのような厳しい試合、多くを要求してくる相手に対して何ができるか非常に楽しみだ。それから我々がお互いに話す能力、コミュニケーション能力に満足していない。そこは怒りたくなるぐらいやっていかないといけないところ。コミュニケーションする力を伸ばしていかないといけない選手もいる。少しでも弱点を見せれば、ブラジルもベルギーもそこを突いてくる」

「ジェズスは20歳だが世界一のアタッカーだと思っている。20歳でもだ。身長は174cmぐらいだが、背後で垂直でもボールを受けられるし、驚くのはクロスにも合わせられること。大きくない選手なのに必ず合わせにくる。止まったプレーをしない。常に動きながらプレーする。ハイレベルの選手だ。だから彼を話し合いながらしっかり押さえないといけない。彼はチャンスをたくさん作るだろうからそれをやらせてはいけない。しかも守備でもアグレッシブにプレッシャーをかけてくる。20歳でももうこんなに良いプレーができるんだという選手だ」

「マンチェスター・シティでは(セルヒオ・)アグエロが何年もレギュラーで活躍していたが、彼がベンチに追いやれられるぐらいだ。しかもそれが20歳の選手ということを日本はもっと理解しなければならない。アグエロのおかげでシティは昨シーズン戦えたが、でも彼が競争を生み出し、ベンチに追いやったということだ。(ジョゼップ・)グアルディオラは本当にジェズスを信頼している」

――ハイチ戦は監督も不満があったと思いますが、選手との間でケアできているのでしょうか。また、戦い方の違う2試合というのは、選手も変えて違う戦いをすることになるのでしょうか?

「ハイチ戦は最初の20分は良い試合をしたが、その後はフットボールを台無しにしてしまった。だが、A代表をもっとリスペクトして欲しいと思う。全く違う2チームにしたのでブロックのトレーニングをした。それがリスペクトされなかったということだが、我慢を覚えなければならない。1回のトレーニングでいきなり大きく変わることはない。しかも、ほとんどメンバーを変えたんだ。その試合で誰かを批判することはない。私の責任だ。私がチームを選んだわけだからね。確かにうまく行かなかった」

「試合後は少し厳しく言った。『君たちはW杯に行きたくないのか?こんなことは繰り返してはいけない』と、厳しく正確な言葉を使って彼らに伝えた。ただそれはやらなければいけないことだった。誰しもがジョーカーになれるし、私もジョーカーを作りたい。だが、この前のような試合を繰り返せば、誰もメンバーには入れない。私は何を期待されているかわかっている。W杯がどういう意味か分かっている。私も陽気に和気あいあいとした会見も開けるが、特に最終予選のオーストラリア戦では最もいい試合をしたが、その時でさえ私は「このままだとうまくいかない」と言った。なぜならブラジルやベルギーに対しても同じことをしなければいけないからだ」

「もちろん、2つの簡単な敗北をしてしまうかもしれない。現段階では、2位と5位かもしれないが、私にとっては世界の2強だと認識している。ここ最近の彼らの戦いを見ると本当に彼らの2強だと思う。しっかり準備しなければ簡単に数失点してしまう。前回の試合では私の人生の中でも稀な3失点だった。このままではさらに悪くなる。選手は気持ちを入れ替えて臨んでくれると思うが、恐怖は絶対に抱いてはいけない。試合の中で厳しい時間帯があって心理面がおかしくなったという時期もある」

「例えば私の2試合目のウズベキスタン戦を思い出す。30分良い試合をして、15分どこにも存在しなくなった。だからハーフタイムで低いブロックをやらざるをえなかった。こういうゲームコントロールのことでは、メンタルやコミュニケーションといった能力をこういった試合で伸ばしてほしい。このチームはまだそういうところが伸びると思う。ハイレベルな試合も我々はしてきたがまだまだ改善の余地はある。W杯というのは全く別物。だからこの合宿で伸ばしていきたい。そして学んでいこう。私が言いたいことを理解して欲しい。背中を向けるのではなく、ゴールに身体を向けろ。世界のアタッカーがそうやっているんだ。彼らはレッスンを受けるだろう」

「日本代表は恐怖を抱かないこと。よく私はサムライの歴史を紹介するが、挑発する気持ちで伝えることもある。わざと選手をイライラさせる。つまり勇敢さや勇気を持ってやってくれということだ。あるスタッフは『ハリルちょっとあんまり厳しく選手に言っちゃいけない』と言われるが、私は嫌いだから言っているのではない。選手のことが大好きだ。本当に愛着もある、グループも選手のことも好きだ。伸ばすには厳しく言わなければならないこともある。確かに私の言葉が厳しいこともある。さっき何人かの選手と厳しいディスカッションをしたと言ったが、例えばショウジとね。色んなフィジカルのテストがあって『こうじゃないぞ』と言うが排除したいわけじゃない。証明としてここに呼んでいるだろう。信頼している。詳細を話せないが、ある選手と私1人で話をした。伸ばすという目的で。全ての面で伸ばすという目的で。メンタルも、フィジカルも、テクニックも。選手は伸びたければ伸びる」

「このチームにはロシアに向けていい道を歩んで欲しい。我々の前には8カ月ある。A代表の候補がいる。Jのクラブにも挨拶に行った。選手やクラブとのコミュニケーションを伸ばしていかなければという思いからだ。我々はフィジカルテストをやったが満足の行く結果ではなかった。かっこつけてミスをしたというが、それで排除するわけではない。私なやるべきことなんだ。時にはスタッフやみんなで厳しいディスカッションをしなければいけないと思っている。要求することは簡単ではないが、我々A代表の仕事としてはクラブと選手と協力してやっていくことしかできない」

――浦和の選手が5人選ばれていますが、ACL決勝を控えるクラブとどのように話をしたのか

「浦和レッズとはいろいろ話をさせてもらっている。もちろん彼らはそのことが気になっているだろう。私もその試合を見に行く。だが、詳細なコメントはここでは控えさせて頂く。なぜかというと、私の家はA代表だからだ。JFAにサラリーをいただいている。A代表が何をすべきか、という判断に基づいて私は行動している。まず私は自分の家のことを考えるべきだと思っている。私はクラブの監督も経験している。私がクラブの監督をしている時に『A代表に行くなよ』ということも考えていた。でも今はA代表の監督だ。全く逆の考え方になったよ。ディスカッションの仕方も変わった」

「だが、日本のことを考えると浦和のこのファイナルは絶対に大事だ。浦和のことはみんな誇りに思っている。ここ9年ACLのファイナルに行っていない理由は浦和の背後に日本という国が隠れているからだと思っている。もちろん浦和の選手を我々は招集する。ただ移動距離はそこまで長くない。そこは理解して欲しい。しかし、我々が(クラブと)どういうディスカッションをしているかについては、詳細は話せない。ただ、頭ではしっかり浦和レッズさんのことは配慮している。色々な、本当に色々なことを考えている。これだけしか申し訳ないが話せない。浦和のことは考えているが、私の家はA代表だ。皆のことをリスペクトしている。最大のリスペクトはA代表だ。それは私の仕事、権利でもあるからだ」