下着コンシェルジュが警告「ランニングブームで“垂れ胸”が大量生産される」
目に見えないものにどれだけこだわれるかが、女性としての魅力を決める
大学生の頃に下着に魅了され、大学卒業後、大手下着メーカーに就職した私が最初に高級下着ブランドチームに配属されて気づいたこと。それは、日本女性はあまりに下着に気を使わなさすぎる、ということ。メーカー開発者としてどんなに素敵な下着を開発しても、女性が下着の大切さや魅力に気づいていなければ、全く無駄であることに気づいた私は、まずは女性の下着に対する意識を何とか変えていきたい! と思ったのです。
当時は女性誌でコスメ特集は当たり前でしたが、下着特集はほぼなかった状態。15年前から下着の啓蒙(けいもう)活動をしてきましたが、今、ようやくテレビや雑誌でも下着についての特集が出てきています。ただ、それでもまだまだ下着の地位は低いと感じるのです。下着はひと様の目に触れるものではないから何でもいい、といういい加減な気持ちになっている人があまりに多すぎます。
大事なのは、自分にとって「とっておき」と思えるくらいの一着を選び、着けられているか、ということ。これを着けたら、今日一日が最高に楽しくなるかも! という気持ちで選べているか、ということ。私は『星の王子さま』の本の中に出てくる「大切なものは目に見えない」という言葉がとても好きなのですが、目に見えないものにどれだけこだわれるか、がその人の女性としての魅力を決めると思っています。
下着は自分の肌に一番近いところに身につけるものですから、「とっておき」を着けられているだけで、ちょっと気持ちが凛として、いつも何気なく行き来している通勤の途中でも面白い情報が目に入ってきたり、新しいお店に行ってみたくなったり、急にワクワクしてきて前向きな気持ちになったり、行動的になったり、自然と笑顔が出てきたり、人に優しくなれたりするのです。朝起きてから夜寝るまで、常に自分と生活を共にするパートナー的な存在の下着だからこそ、その選び方次第で、その人の生き様に大きく差が出てくるのです。
休日こそ、身体まるごと癒やしてくれる下着を選んで
ウィークデー、とっておきの一着で全力で走った後、オフは心と身体を十分にリフレッシュさせてエネルギーチャージし、週の始まりに備えることがとても大事です。
皮膚に触れる下着の心地よさで脳や身体はリラックスできるので、休日こそ、身体まるごと癒やしてくれる下着を選んでほしいのです。私が一番重視してほしいのは、素材のいい下着を選ぶということ。皮膚から入る刺激は無意識レベルで脳に作用するので、休日は肌にやさしいシルクやオーガニックコットンなど上質な天然素材を選んでほしいです。上質な素材を肌にまとっていると、気分が落ち着いて自律神経のバランスも整い、副交感神経が優位になるので、呼吸も深くなり身体中に新鮮な酸素が行き渡ってリフレッシュできるのです。
とっておきの上質なシルクの下着を身にまとい、心も身体もゆったりと過ごす。これこそが洗練された大人の週末スタイルです。
スポーツ時の下着を後回しにしていると…
また、2020年のオリンピックに向けて、スポーツを日常的にする人が増えてきています。日々のワークアウトは心身共にとてもいいことですが、ワークアウトの時のブラジャー選びを重要視していない人があまりに多すぎます。普通のブラジャーを着けながら走ったり、中には、ブラトップやノーブラで走るという人も。
走ったり動いたりしている時に、身体は上下に揺れますので、その時、バストも当然揺れます。その揺れがバストを下垂させる原因になってしまうのです。バストを支えているクーパー靭帯(じんたい)は揺れによって伸びて切れてしまい、一度切れて垂れてしまったバストは元に戻ることはないのです。なんて恐ろしいことだと思いませんか? スポーツをする時はバストの揺れを全方位からしっかりサポートしてくれるスポーツブラをしないと、バストが垂れる一方なのです。
そんな事実がある中、実は、女性ランナーの7割が一度もスポーツブラを着けたことがないと回答しているデータもあるのです。ランナーたちのウエアはどんどんおしゃれになっていますが、下着を後回しにしていると、ランニングブームが続く限り、垂れ胸ランナーが大量生産されてとっても危険。運動でボディメイクを心がけることは本来とても素晴らしいことですが、どんなスポーツでも胸の下垂を防ぐ対策はマストです。ここでもしっかり下着と向き合い、とっておきの一着を選んで欲しいのです。
男性は本能的に顔よりも身体に惚れる生き物
最後に恋愛について。男女の関係において、下着がどれだけ大事か、ということは感覚的には理解しているかと思いますが、自分の好きな下着を身に着けるだけで、恋愛環境は好転する、と言い切っても過言でないほど、恋愛において下着はとても大事です。
では、どんな下着を着ればいいの? とお悩みの方も多いはず。今までは何となく、彼の好みに合わせて下着を選んでいた人が多かったと思うのですが、それで本人がハッピーであれば問題はありません。しかし、少しでも違和感があったり、疲れてしまっていたら、相手に合わせることよりも、自分の気持ちをもっと大切にすることを意識してみてください。思い切って、自分好みにシフトして欲しいのです。
自分好みの洋服や下着を身につけることによって、より自分らしくいられ、雰囲気も表情も明るくなり、仕事もプライベートもどんどんうまくいきます。自分の新しい可能性に向かって進んでいる女性は、誰から見ても魅力的であることは間違いないのです。当然、自分の彼からも魅力を感じてもらえる女性に変身するので、恋愛も好転するのは言うまでもありません。
自分らしく生きることは女性の魅力を一番引き出すことにつながりますし、下着こそ、最高のエイジング兵器なのです。男性を惹きつけられるのは、年齢に関係なく色気のある胸と下着なのです。男性は本能的に顔よりも身体に惚れる生き物です。美人は3日で飽きてしまうのです。
私が尊敬するランジェリーブティックのオーナーは、女性であれば誰もがファンになってしまう、魅力溢れる素敵な女性です。彼女の年齢を聞いたところ、もうすぐ70歳だと言われ、とても驚きました。その美しさと若さの秘訣を聞いたら「素敵な下着だけに囲まれていること」という答えが。
文/山田奈央子(下着コンシェルジュ)
<著者プロフィール>
山田奈央子◎盛岡生まれ、サウジアラビア育ち。上智大学卒業後、大手下着メーカー「ワコール」に入社。下着の企画・開発・MDを行った後、国内メーカー・インポートランジェリーの販売も経験。世界初の下着コンシェルジュとして、世の中の女性にもっと下着を楽しんでほしい思いで下着セミナーを開催し、雑誌、テレビ、インターネットなどでも下着のアドバイスを行う。下着コンシェルジュとして内面美の追求を行いながら、美容の会社である株式会社「シルキースタイル」を2005年に設立。代表取締役就任。下着を着たときに素肌がキレイに見えるためのボディケア商品やコスメ商品を扱い、ビューティーコンシェルジュとして、女性の内面美と外見美のトータルビューティーコーディネートも行っている。2017年6月に、女性のための下着の選び方などをまとめた著書『とっておきの「一着」さえあればい』(宝島社)を上梓。