28歳杉田祐一がたどりついた2回戦、マナリノの驚異の粘りに阻まれる [ウィンブルドン]

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 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(本戦7月3〜16日/グラスコート)は本戦4日目を終え、男女シングルスの2回戦が終了した。先週トルコ・アンタルヤでのツアー初優勝からグランドスラム本戦初勝利と勢いに乗る杉田祐一(三菱電機)は、トルコの決勝で破ったばかりのアドリアン・マナリノ(フランス)と対戦。フルセットの末、1-6 7-5 6-4 6-7(2) 2-6で敗れた。

 ダブルスでは土居美咲(ミキハウス)がシュアン・シージュン(台湾)とのペアでオクサーナ・カラシニコワ(グルジア)/フランチェスカ・スキアボーネ(イタリア)に6-4 6-1で快勝。全仏オープンでは土居のケガのため1回戦を途中棄権しており、このペアではグランドスラム初勝利となった。

 また、日比野菜緒(LuLuLun)/アリシア・ロソルスカ(ポーランド)はミリヤナ・ルチッチ バローニ(クロアチア)/アンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)に2-6 6-3 3-6で敗退。ラッキールーザーで本戦入りした大前綾希子(島津製作所)とジェシカ・ムーア(オーストラリア)のペアは、キャサリン・ベリス(アメリカ)/マルケタ・ボンドルソバ(チェコ)に2-6 0-6で完敗した。

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 3時間33分の激闘の、どこかをやり直せるなら第4セットを選ぶだろう。チャンスを逃してピンチをしのげなかった試合序盤の影響か、杉田はアンフォーストエラーの山を築いて第1セットを落とし、第2セットも1-4。そこから逆転してセットを奪い、第3セットも6-4でものにして迎えた第4セットだった。

 対するマナリノは、度重なる主審の不利なオーバールールで苛立ちが募って暴言を吐き、ポイントペナルティを取られる最悪の状態である。もらった1ポイント目を生かして15-40とブレークポイントを握った杉田だが、ダメ押しができなかった。ダブルのブレークチャンスを逸して、3度目のデュースのあとにふたたびつかんだブレークポイントも、先の2回と同じくマナリノの好サービスに阻まれた。

「相手も疲れているところだったので、あそこで引き離したかったけど、うまくやられてしまいました」

 これを最後に、杉田にブレークチャンスは訪れず、逆に自身のサービスで第8ゲーム、第10ゲームと再三ピンチをしのがなくてはならなかった。自分のサービスキープに苦労すれば、それだけリターンゲームにかけるエネルギーが削がれてしまう。

 マナリノはとにかくしぶとかった。第4セットは24本ものアンフォーストエラーをおかした杉田に対し、マナリノはわずか6本。そのしぶとさが効いた大きな原因の一つには、「トルコのコートよりも遅かった」というウィンブルドンの芝の状態が挙げられる。

「かなり後ろに下がって粘られた。それを自分から打破することができなかった」と杉田。そういう中でも自分からリスクを負って攻めることが、杉田の言葉を借りれば「僕の生命線」なのだが、強い陽射しが照りつけるコートでの長丁場で、疲れの影響もあったのだろう。狙いすましたショットもなかなか決まらず、マナリノは何度も何度も壁のように返してくる。杉田の消耗ははかり知れなかった。第4セットを結局タイブレークで落とすと、最終セットはもはや力尽きていた。

 マナリノのランキングは51位で、44位の杉田とはほぼ同格。これが、杉田が今後主戦場にしていくATPツアーの平均レベルだ。敗れた直後では少々怖じ気づきそうな現実だが、彼が28歳にしてここまでたどり着いた道、これから歩む道は、多くの日本人、アジア人、あるいは遠い国のプレーヤーにさえ〈何か〉を示すに違いない。

 1回戦のあとに杉田が言った「まだここでは終わらない」という言葉が、また耳の奧で静かに聞こえていた。

テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

※写真は「ウィンブルドン」2回戦で、アドリアン・マナリノ(フランス)にフルセットで敗れた杉田祐一(三菱電機)。初出場のグランドスラム大会本戦は2回戦どまりとなった。(写真◎小山真司/テニスマガジン)