「べっぴんさん」「あさが来た」「とと姉ちゃん」2016年朝ドラと事件を振り返ってみた

写真拡大 (全3枚)

月から土まで毎朝やっている朝ドラ「べっぴんさん」も年末年始はお休み。28日で年内は本編終了。29日は総集編で、31日は前作「とと姉ちゃん」総集編、スピンオフ「もうひとつの物語“福助人形の秘密”」再放送がある。総集編の前の8時からは特集番組「とと姉ちゃんとあの雑誌」の再放送もあって万全だ。


今年の朝ドラは、1月〜3月までは、大阪の実業家をモデルにした「あさが来た」、4月〜9月までが、カリスマ雑誌「暮らしの手帖」の創始者をモチーフにした「とと姉ちゃん」、10月〜が神戸の子供服メーカーの創業者をモデルにした「べっぴんさん」と3つの物語が放送されて、どの作品も視聴率20%をほぼほぼ超え続け、大変愛されている。話題にも事欠かなかった。そこで、毎日朝ドラレビューの今年の締めは3作の朝ドラの事件ポイントをまとめます。

事件1.「あさが来た」 ディーン・フジオカに視線集中


朝ドラ初、江戸時代からはじまった「あさが来た」は、女だてらに炭鉱、銀行、女学校と事業をおこしていく進歩的な主人公あさ(波瑠)が主人公。彼女を親身になって手助けする五代友厚を演じたディーン・フジオカの甘い雰囲気に注目が集まり、2016年Yahoo!検索賞俳優賞を受賞するほどに。「あさが来た」終了後もドラマや写真集など大活躍した。


事件2.「あさが来た」 視聴率が今世紀の朝ドラで一番


2回目の朝ドラに挑んだ大森美香の脚本は、明るくテンポよくメリハリもあって評判がすこぶる良く、最終回の視聴率は27.1%。全話平均視聴率23.5%は今世紀の朝ドラで一番となった。

事件3.「あさが来た」 玉木宏が演じる旦那様も人気爆発


五代も人気だったが、それは、あさと夫の新次郎(玉木宏)の夫婦愛がしっかり描かれていたからこそ。飄々として妻を自由に掌で転がすような優男は、理想の旦那様。最終回に合わせたまとめ関連本がNHK出版以外から3冊も出版されたのも異例だったが、その1冊は新次郎に特化した本でびっくりぽん。


事件4.「とと姉ちゃん」もの申される


大好評だった「あさが来た」のあとを受けてはじまった「とと姉ちゃん」。戦後から長く愛される雑誌「暮らしの手帖」の創始者をモチーフにしているということで、「暮らしの手帖」ファンにも注目され、脚本家もヒット作を多く手がける西田征史ということで期待されたが、モチーフの史実とドラマの内容がかなり違っていて、
モチーフファンの苛立ちが募った。監修をしていた元編集者が降りたり、週刊誌で違いに関する記事が掲載されたり、途中から「このドラマはフィクションです」という断りが入ったりと、ドラマの内容よりも騒ぎが注目されながらも高視聴率をキープし続けた。

事件5.「とと姉ちゃん」最終回に合わせて一冊も関連本出ず


「あまちゃん」以降、NHK出版以外の出版社からも全話まとめ関連本が出るようになっていたが、モチーフに関する書籍がたくさん出ていたからか、一冊も出ず。ノベライズも出なかった(「あまちゃん」も出てないが脚本集は出ている)。ただ、暮らしの手帖社のSNSなどによると「暮らしの手帖」の売上げは上がったようだ

事件6.「とと姉ちゃん」朝ドラ史上初の生涯未婚女性ヒロイン


モチーフになった人物が生涯独身だったための設定だったが、恋愛エピソードはオリジナルエピソードとして入り、主人公・常子(高畑充希)が恋する相手を演じた坂口健太郎が人気に。だが、一度悲しい別れをした後、また出てきてまた別れるという悲劇過ぎる展開に不満を感じる視聴者も。

事件7.「べっぴんさん」おとなし過ぎて拍子抜け? 


「あさが来た」「とと姉ちゃん」と朝ドラ無双状態だったが、「べっぴんさん」で状況にやや変化が。視聴率20%を切ることもあって、そのわけは主人公が「なんか、なんかなあ・・・」とおとなし過ぎることや話が深刻過ぎるなどがあげられる。だが、濃淡のある画面の叙情性や、説明セリフがほとんどなく、登場人物の動作で感情表現をするなど攻めているところは評価したい。愛情あふれた赤ちゃん用品の数々も癒やされる。2017年の後半戦に期待。

事件8.3作すべて実在の人物がモデルなりモチーフになっている


原作やモデルのある朝ドラもこれまで何作も存在しているとはいえ、3作続いて非オリジナル作品は珍しい。原作付きドラマが増えている昨今、朝ドラまでオリジナルで勝負できなくなっているとしたら残念。17年4月からはじまる岡田惠和の「ひよっこ」はオリジナルなので楽しみだ。

というわけで、2016年朝ドラ事件でした。

「べっぴんさん」75話はこんな話


連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第13週「いつものように」第75回 12月28日(水)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:新田真三

ふつうの会社という形の枠に当てはめないで私達ならではのやり方をみつけられないかなあ

陶器の食器を5000セットは売れに売れて、追加生産することに。東京の松島屋デパートから夏の特選セールに出品の声がかかる。
紀夫(永山絢斗)は元のキアリスのやり方に戻すことにする。
数ヶ月後、新居が完成、ゆりが男児(正太)を出産した。

かなり駆け足展開だが


陶器の食器セットは可愛らしいし、「石橋を叩きすぎて壊れるいうこともあるんや」と潔(高良健吾)に忠告
された紀夫は、結果的にすみれ(芳根京子)たちを見守ればいいとナットクし、すべて丸く収まる。
はじまったすぐに、「商売に絶対なんてないんや」と紀夫に怒られて「ごめんなさい」「すいませんでした」とキリアスの面々が萎縮しまくりだったときにはどうしようかと思ったが、よかった、よかった。

75話のツボ


その1.「坂東さん」と紀夫のことを丁寧に呼ぶすみれ。
その2.オリジナル食器を使うようになってからさくらがおかわりするようになったと聞いて「そうよかったねえ大きくなるよー」とさくらに話しかけるすみれ。句読点のない言い方がナチュラル。
その3.赤ちゃんが生まれたときの高良健吾(潔)の表情。この俳優は祝賀会のビールかけ放題みたいに勢いよく感情を溢れ出させてきて痛快だ。

2017年1月3日は「お正月だよ! べっぴんさん」(急に元気なタイトル。お正月挨拶番組らしい)が放送され、本編は1月4日から再開。2017年も朝ドラを楽しみましょう!
(木俣冬)