【前園真聖コラム】第115回「名古屋のJ2降格後が象徴してる日本サッカー」

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僕は名古屋が今の日本サッカー界を象徴している気がしてなりません。

僕は今年のシーズン前に名古屋について1回書きましたが、その心配は残念ながら当たってしまいました。ただ、同期のオグ、小倉隆史前監督が解任されたのは仕方がないと思います。プロの世界では成績が出ないときに、監督が責任を取るのは当たり前ですから。オグを切ったからと言って名古屋を非難しようとは思いません。

僕が問題だと思うのは、降格が決まった後のクラブです。ベテランや生え抜きの小川佳純との契約を継続しませんでした。チームが一番苦しいときに戻ってきて、しかも雰囲気を変えた田中マルクス闘莉王選手も切りました。永井謙佑や川又堅碁もクラブを離れると言われています。これまでのチームのベースはなくなっていくことでしょう。

その一方で佐藤寿人の加入が発表されました。今後、次々に新加入選手が明らかになっていくことだと思います。

J2に落ちた。それは今までの選手の責任だから、別の選手に入れ替えて、心機一転。新しい名古屋として生まれ変わる。その象徴として有名選手がチームに加わった。

そう表現すると、とても希望に満ちた未来が待っている気がします。ですが本当にそうでしょうか。

積み上げのないチームは、戻るべき場所を持ちません。新しく集まったチームは、勢いがあるうちは快進撃をみせます。ですが、一度崩れたときになかなか立て直せないのです。

1年でJ1に復帰したチームは主力を残留させ、それでも苦しみながら切符を手にしました。大幅に選手が入れ代わったチームは熟成させる時間がなく、苦しんでシーズンを終える例がたくさんあります。

そんなサンプルがたくさんあるのに、なぜ? 僕はそこに日本サッカー界の問題があると感じます。サッカーをよく知る人から見ると矛盾するような行動は、名古屋に限った話ではないのです。

Jリーグが出来て、選手はプロになり、次第に意識が変わっていきました。審判もプロが生まれ、より厳しい目が注がれるようになりました。

ですが、クラブの経営陣はどうなのでしょう。出向でクラブに来ている人たちは、その後どうなるのでしょう。降格の責任を取って路頭に迷いながら就職活動をするのでしょうか。

経営陣がクラブ経営のプロにならないと、日本サッカー界の問題は解決できません。いや、問題は経営陣がプロに徹していないから起きるとも言えるはずです。

今季、ずっと名古屋を心配してきました。そして今、日本サッカー界への心配はますます強くなっています。