中京大中京vs豊川
逆転満塁本塁打を放った中京大中京・谷村君
秋季大会は台風や秋雨前線の影響で毎年、日程調整が難しいと言われるが、今年の秋季愛知県大会も終盤になってスケジュールが大きく狂った。秋分の日に予定していた試合も雨で流れたことで、準々決勝が1週間遅れてこの日までずれ込んできた。
2013年の秋季県大会では準優勝を果たし、その後の東海大会も準優勝して悲願の甲子園初出場を果たした豊川。この秋は、その甲子園を見て入ってきた生徒たちが中心になっているチームだ。一方、中京大中京は全国一の優勝回数を誇る全国区の名門校だが、今夏は愛知大会で3回戦で愛工大名電の苦杯を舐めさせられた。昨夏の代表校でもあり、やはり甲子園には常に近い位置にいなくてはならない宿命を背負う。この秋も、その戦力は充実していると言われている。そんな力のある同士の注目の好カードだ。
初回、豊川は二死走者なしから鮮やかな攻撃でビッグイニングを作る。3番山下君が一二塁間を破って出ると、すかさず二塁盗塁。そして、竹内君が中前打してソツなく先制。さらに、野々山君が左翼線に落とす二塁打で二三塁とすると、四球暴投で三塁走者が帰ってなおも一三塁。7番空地君の打球は思いのほか伸びて、センター頭上を破る二塁打となり2者が帰って、豊川はたちまち4点を先取した。
中京大中京の先発香村君も決して悪い立ち上がりではなかったはずだ。低めに鋭くスライダーも決まっていた。ただ、簡単に二塁盗塁を許してしまったことと、スライダーを止め切れなかったのも痛かった。こうした、小さなところから、この回リズムが崩れて単調になってしまった。そこを積極的に攻めた豊川打線が功を奏したということであろう。
先制打を放った豊川・竹内君
何とか早い回で反撃したい中京大中京だったが、3回までは豊川の大畑君に封じられた。それでも4回に二死走者なしから鵜飼君が死球で出ると、続く諸橋君がライトポール際に一直線のライナーの2ランで追い上げた。そして6回、やはり二死走者なしから鵜飼君、諸橋君の連打と代打小河原君の四球で満塁とする。そして7番谷村君が初球を叩いて、打った瞬間にわかる逆転の満塁本塁打。中京大中京は、一発攻勢で4点のビハインドをひっくり返した。
7回にも中京大中京は二死二塁に伊藤康祐君を置いて、3番澤井君が巧みに左へ流し打ってタイムリー安打でさらに1点を追加した。澤井君はパワーヒッターではあるが、こうした上手さも兼ね備えている。1年生ながら名門の3番を任されているだけのことはある素材と言っていいだろう。
中京大中京の高橋 源一郎監督は、「今年は、そんなに打てるというチームじゃないんですから、初回のような点の失い方は一番よくないですね。本当は、ウチがやらないといかんような形で点を取られて行ってしまいました。1点は仕方ないにしても、そこで止めておかないといけません」と、初回の失点は反省していた。
結果として、中盤に本塁打が出て、流れを変えていくことができた。諸橋君の本塁打については、「やはりあれは大きかったです。5回まで0のままだったら、また焦りも出てきますからね。そうすると、球の見極めもできなくなってしまいますから、一番悪い形になってしまうところでした」と、ふり返った。
そして2回以降は香村君も完全に本来の投球リズムを取り戻していったのはさすがだった。
豊川としては、結果的には初回の4点のみになってしまった。2回以降、どこで点が入っていれば、また違った展開になっていったのではないだろうか。
（文＝手束 仁）
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