麗澤瑞浪vs美濃加茂
麗澤瑞浪・伊藤智輝君
今年の秋季岐阜県大会ベスト4の中で、唯一甲子園出場実績があるのは美濃加茂だ。美濃加茂は、昨秋は21世紀枠の県推薦校にも選ばれている。そして今春は県大会準優勝で、東海地区大会に進出しており、安定した実績を示している。そのチームからは、投手の池戸君を除いてほとんどメンバーは入れ替わっている。それでもこの秋も、中濃飛騨地区を制して1位校としてのシードで出場してきたのは評価されていいだろう。実績もあるので、大会前から有力校の一つとして挙げられていた。そういう意味では、県大会でも安定した戦いぶりでの4強進出で下馬評通りと言ってもいいであろう。
美濃加茂は本格派左腕の池戸君、麗澤瑞浪はしっかりと腰を沈める下手投の伊藤 智紀君が先発。池戸君は力のあるストレートと大きなカーブを武器に投げ込んでくる。伊藤 智輝君は時に、クイック気味の下手で投げてきたりして、打者を幻惑しながら打たせていく。こうした、タイプの異なる二人の投げ合いとなった。
先制したのは美濃加茂で3回、二死三塁から3番片島君の左前打で三塁走者を帰す。しかし麗澤瑞浪も4回、すぐに反撃して失策で二塁まで進んだ走者が梶田君の一二塁間を破る安打で進み一三塁。5番平沢君はきっちりとスクイズを投手前に転がして同点となった。最初のチャンスらしいチャンスを生かした麗澤瑞浪の手堅い攻めだった。
次に試合が大きく動いたのは7回だった。この回、麗澤瑞浪は先頭の6番村田君が右線にポトリと落とす二塁打で出る。竹内君が手堅く送ると、宮内君の中前打で帰して今度は麗澤瑞浪が1点リードする。しかし、すぐに美濃加茂も反撃してその裏に、蒲君の内野安打と悪送球で無死二塁。ここで、美濃加茂の高橋 陽一監督は勝負をかけて二塁に代走野上田君を送る。その野上田君をバントで進めと、さらに8番市原君がスクイズを決めて帰した。取ったら取られたが、取られたら取り返すという展開で、美濃加茂としても悪い流れではなかった。
8回、9回はどちらも攻めきれず、試合は延長に突入した。
ベンチの指示を確認して、この後に同点スクイズを決める美濃加茂・市岡君
延長に入って美濃加茂は10回、二死から1番小出君と石原君の連打に四球でサヨナラ機を作るが、ここは伊藤 智輝君が踏ん張った。
そして12回。麗澤瑞浪は一死から失策で出た走者を9番伊藤 智輝君がバントで送ると、1番水谷君。梅田 恭明監督の最も信頼の高い選手だが、前の打席で上手く踏み込んで左前打を放っていた。この打席でも、「しっかりと踏み込んで打て」という指示通りの打撃で、二塁手の頭上を破って、二塁走者の宮内君はクロスプレーとなったが、巧みに捕手のタッチをかいくぐってホームイン。その裏を伊藤 智輝君は、先頭打者に安打を許しながらもしっかりと押さえて、初の東海大会進出を決めた。
麗澤瑞浪の梅田監督は、「伊藤 智輝がよく投げてくれました。低めにコントロールしていけということを指示したのですが、それをしっかり守ってくれました」と、一にも二にも、伊藤君の好投を称えた。そして、その要因としては、「気持ちで負けないということですね。今までは、気持ちが引いていってしまったところがあったんですけれども、今日は強い気持ちを出してくれて、延長12回は最後カウント3ボールになりながらも、攻めていく気持ちでしたね」と、その頑張りを評価していた。
1年生が17人、2年生が20人。監督も含めて寮生活ということで、日々の生活の中で表情を見ながらも選手たちの様子が確認できるので、気持ちもよくわかるという。就任7年目の梅田監督にとっても、初めての東海大会という次の大きなステージが待っている。
同じく東海大会初出場を決めた多治見とともに、東濃地区勢同士の岐阜県大会決勝となった。「何年か前を思えば、夢のようです」と言う梅田監督。この秋、岐阜県ではフレッシュな風が吹いている。
（文＝手束 仁）
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