【イタリア都市巡り】ヴェネツィア、水の都に香る中世と民衆の生活
「水の都」、「アドリア海の女王」、「アドリア海の真珠」……
数多くの愛称を持って親しまれるイタリア北部の大観光都市「ヴェネツィア(ベニス)」。
互いに結ばれた小さな島々の合間を、運河が縦横に走る。
どこか懐かしく、洗練された美的な街の風景は、見る者の言葉を奪う。
トーマス・マン、ウィリアム・ターナーなど多くの芸術家に愛され、インスピレーションを与え続けてきた都市だ。
ヴェネツィア共和国として栄えた中世の名残りは、現代ヴェネツィアの多くのシンボルに宿る。
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂は、17世紀初頭の黒死病大流行に苦しんだ民衆の祈りを反映している。
サン・マルコ寺院、サン・マルコ広場は揃ってヴェネツィアの観光名所だ。
寺院はビザンティン建築を代表する形式で、内部には黄金や宝石が多数埋め込まれている。広場は世界で最も美しいとも言われ、実際に自分の足でこの地に立ってみると、それが事実かもしれないと思えてくる。
ヴェネツィアの魅力は本島だけでは終わらない。
世界中で愛されるヴェネツィアン・グラスの生産は、本島から船で数分、ムラーノ島にて行われている。
ガラス芸術の伝統を伝える美術館や工房が軒を連ね、職人から直接ガラスを購入できる体験はここでしか味わえない。
そして、もしもブラーノ島を訪れないなら、ヴェネツィア観光は非常にもったいないものになるだろう。
島に降り、目に焼き付くのは色とりどりに壁を塗られた民家の群。隣り合う家と同じ色になることはない。
霧深い当地で働く漁師が、いつでも自分の家の見分けがつくようにと目立つ色を塗ったのが事の起こりとされている。
中世と民衆の生活の香りがそのまま残るヴェネツィアの街。
訪れるなら、観光客の出来るだけ少ない時期を選んで、ゆったりと過ごしたいものだ。
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