関連画像

写真拡大

性暴力の加害者は、見ず知らずの他人とはかぎりません。男友達や元カレに望まない性行為を強要され、悔しさや怒りを感じた方から、弁護士ドットコムの法律相談にも多くの相談が寄せられています。

たとえば【A子さん】の場合、相手は高校の同級生だった男友達でした。「ビックリして、戸惑って、身動きとれず、声もでませんでした。必死に抵抗し続けて、どうにか最後までは防げました。『ごめん』と言ったきり連絡もありません。悔しくて、許せない気持ちでいっぱいです」

信頼していた友人の男性から被害にあったのは【B子さん】。「家で飲み会を開いていました。その1人が『相談があるから2人になりたい。絶対に手を出さないから、相談にのってほしい』としつこく言ってきました。そんなに悩んでいることがあるんだと考え、2階にあがり2人きりになりました。いろんな話をしましたが、突然、上に乗ってきて抵抗しましたがダメでした」

いっぽうで「強要してしまった」側の男性【C男さん】からは、「強姦罪で元彼女に告訴されるかも知れません」と、相談が寄せられました。しかし、その相談内容からは、行為に及んだ際には、まったく事の深刻さを理解していなかったことがわかります。

「行為があったのは元彼女の家です。状況は付き合ったり別れたりを繰り返している最中で、過去にしようとした時は気分じゃなかったらしく蹴り飛ばされました。が、その時は蹴り飛ばす事もされなかったので大丈夫なんだと思いました」

こうした男友達など知り合いからの性行為の強要は「デートレイプ」とも呼ばれ、強姦罪などが適用されることもあります。岩崎 哲也弁護士に聞きました。

A.  相手が「親しい人」だからというだけで、強姦などの罪に当たらないとは言えない

「強姦の加害者は見ず知らずの人である」との見解、あるいは裏を返して「知人、あるいは親しい間柄では強姦とはならない」との見解があるとすれば、いずれも大間違いであり、単なる偏見です。

そのような考えが「デートレイプ」を生み出す元凶です。相手が「親しい人」だからというだけで、強姦などの罪に当たらないとは言えません。

性被害が被害申告されるケースでは、加害者が「見ず知らずの人」のことが多いのかもしれません。しかし、その背景には「加害者が知人であると申告しにくい」という事情があります。

日本では、「強制わいせつ罪(刑法176条)」「強姦罪(刑法177条)」の成立には、(13歳以上の被害者に対しては)「暴行又は脅迫を用いる」ことが要件となっています。どんなに親しい間柄であっても、「暴行又は脅迫」を手段としてなされる性的行為には上記の罪が適用されます。

また、暴行・脅迫がなくても、飲酒させるなどして抵抗できなくさせ、あるいはそのような状態を利用してなされる性的行為には「準強制わいせつ罪・準強姦罪(刑法178条)」が適用されます。

こうした場合、相手が知人であるからといって、泣き寝入りをする必要はありません。

では、暴行や脅迫などがなく、嫌だということを口や態度に出さずに我慢し、嫌々ながら応じたが実は本心ではなかったという場合はどうでしょうか。

このようなケースでは、合意のない性的行為であることの立証が困難だとして、あるいは、加害者の「合意があると思っていた」との弁解が崩し難いとして、刑事事件として立件されにくくなってしまいます。

合意がない不本意な性的行為は、たとえ刑事事件として立件されなくても、慰謝料など民事的な損害賠償請求の対象となり得ます。しかし、民事事件でも性的行為に合意がないことを立証する必要があり、刑事事件と同様の問題が残るといえるでしょう。

【取材協力弁護士
岩崎 哲也(いわさき・てつや)弁護士
東京弁護士会所属。北海道大学法学部卒。元検事。弁護士法人中村国際刑事法律事務所の犯罪被害者支援部門長。弁護士登録後は、犯罪被害者支援だけでなく、一般民事、交通事故、家族関係、相続等の事案の経験を積んだほか、刑事弁護、殊に重大刑事事件の弁護を担当し、また、企業不祥事調査等も手掛けている。
事務所名:中村国際刑事法律事務所
事務所URL:http://www.t-nakamura-law.com/