あの村上春樹さんがデビュー前後の数年間(1977〜81年)、千駄ヶ谷に暮らしていたことをご存じだろうか。

その千駄ヶ谷には現在、村上さんが当時住んでいた部屋にあった「カーテン」を飾っている本屋があるという。


写真はいずれも筆者撮影

筆者はさっそく実物を見るために千駄ヶ谷駅に向かった。

春樹グッズと共にお目当てのカーテンが

駅から南へと向かい神社前の交差点を西に曲がると「ブックハウスゆう」はあった。比較的コンパクトな住民から親しまれていそうな書店だ。


中に入ると驚くことに、店の奥に村上さんの著作などを置く専用のスペースが作られていた。「村上春樹の世界を想像する勉強会」と書かれた貼り紙と「ピーターキャット」という文字が入った提灯の両隣にお目当てのカーテンを発見した。


白の裏地に赤の花が咲き誇る見事なカーテンだ。その下に説明が書いてある。なるほど、本当にこのカーテンと共に生活をしていたらしい。

どうして店内の一角に村上さんのスペースが設けられているのか、カーテンはどうしてここにあるのか、詳しい経緯を知るために店主に事情を聞いた。


店主は熱心な村上春樹ファン

ハルキストであれば周知の事実だが、村上さんは千駄ヶ谷にピーターキャットというジャズバーを数年間営んでおり、デビュー作「風の歌を聴け」から何作かはここ千駄ヶ谷で執筆していたそうだ。店主は作品が好きなだけでなく、同じ千駄ヶ谷に縁がある人として村上さんを応援しており、ノーベル賞授賞式の際にカウントダウンイベントに協力したり、村上春樹勉強会を開催したりするなど非常に熱心なファンだという。千駄ヶ谷を村上さんに縁のある地として盛り上げるためにコーナーを作ったそうだ。


奇跡的に残ったカーテン

店主によると、引っ越したあとにその部屋は倉庫として使われていたため、カーテンは撤去されずに奇跡的に残っていたそうで、マンションのオーナーの厚意で譲ってもらったということらしい。


彼ほどの作家になるとカーテンまで大切にされるようだ。先日、村上さんが高校生のときの図書館の貸し出しカードが本人の同意なしに公表されたことがニュースになっていたが、生きているうちから偉人になるというのは世の中から尊敬を集めると同時に大変なものかもしれない。(ライター:ベンガルトラ)